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戦国異伝供書

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第百一話 出雲攻めその七

「誰が主かといいますと」
「ほぼ定まっておらぬな」
「そうした国ですな」
「左様、しかしな」
「それでもですな」
「あの国には進まぬ」
 伊予にはというのだ。
「どうでもよい」
「他の家が入って来ても」
「大友家なり長曾我部家が来てもな」 
 それでもというのだ。
「構わぬ」
「我等はあくまで今の十国ですか」
「左様、伊予は豊かな国であるが」 
「よいですか」
「あの国はな」
「博多と同じですか」
「人は欲を張るとな」
 そうすると、というのだ。
「そこからしくじる」
「欲で目が暗みまするか」
 志道が言ってきた。
「だからですか」
「よくある話であるな」
「はい、確かに」
「わしは人の欲を知っておるつもりじゃ」
 まさにそれをというのだ。
「それは時として止まらずな」
「目も暗み」
「そうしてしくじりの元ともなる」
「だからですか」
「わしとしてはな」
「伊予には進まれませぬぁ」
「そうしていく」
 これからもというのだ。
「瀬戸内の水軍はこれま通りでもな」
「はい、それでは」
 村上、武骨な外見の彼が応えた。
「これまで通り」
「海のことはこれからも頼む」
「わかり申した」
「おそらく瀬戸内の東は織田家のものになる」
 このこともだ、元就は話した。
「だからそちらにはな」
「進まぬことですか」
「そうじゃ、だからな」
 それでというのだ。
「そちらはな」
「構うことなくですな」
「備前から西の海をな」
「我等のものとしてですな」
「守るのじゃ」
「それでは」
「あと大友家の水軍もあるが」
 彼等のことも話した。
「これといってな」
「攻めることなくですな」
「そうじゃ、あちらが攻めたらやり返すが」 
 それでもというのだ。
「しかしな」
「そうでないならですか」
「これといって攻めず」
「守りに徹するのですな」
「そうせよ、まあ大友殿はこちらをよく思っておらずとも」
 元就もこのことは察していた、大友家から養子に入った大内家の者を追い出した。それに博多を狙っていると警戒しているのだ。
「周防や長門を攻めるつもりはない様じゃしな」
「それで、ですな」
「これといってじゃ」 
 まさにというのだ。
「あちらも攻めないであろうからな」
「こちらもですな」
「攻めることはない」
「それでは」
「そしてな」
 元就は村上にさらに話した。 
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