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おっちょこちょいのかよちゃん

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67 文化祭の開幕

 
前書き
《前回》
 文化祭まであと一日となり、三河口が通う高校では前夜祭を行っていた。一方、かよ子が通う小学校では笹山が風邪から回復し、藤木が安堵していた。そして明日に備えてかよ子は早めに寝るのだった!! 

 
 かよ子は起床した。時計を見るとまだ6時前だった。
(早いな・・・。こういうなんか楽しい事があると、早起きするものなのかな?)
 この日は隣の家に居候している男子の学校の文化祭の日だった。そこでまる子やたまえ、そして大野や杉山と共に楽しむのだ。かよ子は母から貰った杖を見る。
(もし何かあったらどうしよう)
 かよ子は万が一の事を考えた。もし「敵」が祭中に襲撃してきたら・・・。かよ子は念の為に杖も持って行く事にした。ダイニングキッチンに降りると父も母もいた。
「ああ、おはよう」
「おはよう」
 今日は普通の朝を迎えたが、まだ元の日常は戻っていない。羽目を外しすぎないようにと気をつけた。そして自身の体質(?)であるおっちょこちょいにも気をつけようと思った。

 藤木は意気揚々として家を出た。今日は自分が恋する女子・笹山と文化祭を楽しむヒなのだから。待ち合わせ場所である駅へと向かい、笹山を待った。
(ちょっと早く来すぎたかな・・・)
 藤木はウキウキしていた。ニヤケながら待っている為、通行人から変に見られていた。そして何処からか声が聞こえた。
「あらあ?藤木君じゃなあい。何ニヤニヤしてるのお?」
(もしかして、笹山さん!?)
 藤木は期待しながら声の方向を向いた。しかし、相手は冬田だった。
「何か気持ち悪いわよお」
「う・・・。冬田さんこそ朝からなんでここにいるんだよ?」
「そりゃ大野君達と高校の文化祭に行くのよお」
(文化祭・・・。そうか、大野君や杉山君達も行くのか・・・)
「ああ、そうだったのか」
 藤木は冬田と共に駅で過ごす羽目となった。藤木は落ち込んだ。
(なんで冬田さんといなきゃいけないんだよ・・・。笹山さんだったらなあ・・・)
(なんで藤木君なんかと一緒に大野君を待ってなきゃいけないのよお・・・)
 冬田も大野から誤解されそうで気分をぶち壊されたような感じだった。
 そして二人を呼ぶ声がした。
「あれ、藤木君と冬田じゃないか」
 藤木にとってはこれが笹山だったら、冬田にとってはこれが大野だったら良かったのだが、来たのは長山だった。長山は家族で来ていた。
「長山君・・・」
「君達も文化祭に行くのかい?」
「ええ、そうよお。私、大野君達を待ってるのお」
「そうなんだ」
(早く笹山さん、来ないかな・・・)
(早く、大野君、来ないかしらあ・・・)
「じゃあ、僕達は先に行くよ。じゃ、また後でね」
 長山の家族は先に電車に乗った。藤木と冬田は引き続き待ち人を待つ事になった。そして、5分ほど経って大野と杉山が現れた。
「あ、大野くうん、おはよう〜」
 冬田は大野に抱きつきたい気持ちだった。そしてたまえととし子、そしてブー太郎も来た。そして、次に来たのは・・・。
「あ、皆、おはよう~。早いね」
 かよ子とその両親だった。
「ああ、後はさくらだけだな」
「つうか、あいついつも遅刻するからな。寝坊するんじゃねえのか?」
 大野が邪推した。
「まあ、そうかもな。ところで藤木は誰を待ってんだ?」
「え?あ、いや、僕は誰を待ってるんだっけ・・・?」
 藤木は笹山を待ってるとは恥ずかしくて言えず、とぼけた。
「藤木君は、笹山さんを待ってるんだよね?」
 かよ子は確認をとろうとした。
「え、あ、いや、そんな事・・・」
 藤木は赤面して慌てた。
「へえ、笹山も行くのか」
「うん、その高校に近所のお姉さんが通ってるって言ってたよ」
 たまえが説明した。そして・・・。
「藤木君、お待たせ」
 藤木にとって待ち人来る。笹山が母と来た。
「あら、笹山さん。おはようございます」
 かよ子の母は笹山の母に挨拶をする。
「おはようございます。皆さんも文化祭へお出かけですか?」
「ええ、ウチの隣に住んでる知り合いの甥子さんがその高校に通っていらっしゃるので」
「そうなんですね」
「藤木君、折角だから、皆で行こうよ」
「え?あ・・・」
 藤木は本心では笹山と二人で行きたかった。
「う、うん」
 かよ子には口では承諾したが、藤木の表情が少し暗く見えた。
(藤木君、笹山さんと二人きりでいたいのかな・・・?)
 笹山は冬田やたまえと話している。一方、大野と杉山は長山やブー太郎と談笑しているが、藤木は笹山と話せないどころか、男子勢との会話にも入れていなかった。
「それにしてもさくらは何やってんだ?もう集合から4分も遅れてるぞ」
「うん、次の電車に乗らないともう文化祭始まってるよね」
「仕方ないわね。申し訳ないけど次の電車が来るまでまるちゃんが来なかったらもう行ってしまいましょう」
 かよ子の母がそう言った途端、まる子が走って来た。
「ごめん、ごめ~ん、寝坊しちゃったよお~」
「お前、学校じゃなくても寝坊かよ」
 大野が呆れて突っ込んだ。
「でも、揃ったなら皆で行きましょう」
 こうして一同は駅の改札を通り、電車に乗った。笹山はまる子やたまえ、冬田と談笑を続ける。かよ子もその中に入っていたが、藤木は元気が全くないのを見て彼が気がかりになった。
「ところでさあ、笹山さんのその近所のお姉さんってどんな店やるのお?」
「焼き鳥と唐揚げよ」
「や、焼き鳥と唐揚げ!?あのお兄ちゃんと一緒だ!」
 かよ子は偶然に驚いた。
「『あのお兄ちゃん』って?」
「あ、私の隣の家に住んでるお兄ちゃんだよ。私もその人から誘われたんだ」
「へえ、もしかしたらお姉さんと同じクラスかもしれないわね」
「うん、もしそうなら驚きだよ」
「そういえば長山君の近所に住んでる高校生のお兄さんも隣のお兄ちゃんと友達で、文化祭に行くって言ってたな・・・」
「あ、長山君も行く予定なの?」
「あ、そういえば家族で先に行ってたわあ」
「へえ」
 笹山は世界はとても狭いと感じた。

 三河口達は食材の仕入れ、調理器具の準備等を行い、既に料理の支度は整った。
「よっしゃ、頑張って売りまくるぞ!!」
 北畠の掛け声で皆はやる気をみなぎらせた。なお、当の三河口は心のどこかで例の「アレ」に似たような感触を覚えていた。
(これは・・・。いや、単なる緊張感なのだろうか・・・)
 三河口は兎に角、今は料理する事に身を捧げる事にした。

 そして文化祭はオープンした。飾り付けられた校門、そして校庭には吹奏楽部や軽音楽部などがライブを行えるようにステージも設けられた。
 かよ子達は会場の丁度の時間に高校に到着した。
「おお、すげえぜ、これが文化祭か!!」
「皆、楽しんでね」
 一方、藤木は笹山と楽しめるかどうか不安に思っていた。かよ子は藤木の方ばかり気になっていた。
「かよちゃん、どうしたの?」
 とし子が聞いてきた。
「あ、いや、なんでもないよ」
 かよ子はただ運に任せるしかないと思い、校内に入っていった。

 一人の大学生が静岡駅で新幹線から降車し、在来線の東海道本線に乗り換えた。 
 

 
後書き
次回は・・・
「消えぬ憂鬱感」
 文化祭が始まり、三河口は唐揚げを揚げる作業に没頭する。一方、校舎内の展示を周っていたかよ子達は美術部の絵や漫画研究会のオリジナル漫画を楽しむのだが、藤木は笹山と関わる事ができず・・・。 
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