戦国異伝供書
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第百話 両翼を奪いその四
「戦は手間暇も銭もかかりな」
「命も失う」
「しかも敗れる場合もある」
「だからですな」
「滅多にするものではない」
それこそというのだ。
「だからな」
「それで、ですな」
「尼子家とのこともですな」
「戦よりもですな」
「謀でしてきたしな」
それにというのだ。
「それでじゃ」
「出雲についても」
「そうしていきますな」
「あの国だけになりましたが」
「そうしていく、ただな」
元就はこうも言った。
「月山富田城はこうはいかんぞ」
「左様ですな」
「流石に本城については」
「謀では落ちませぬな」
「あの城だけはな」
どうしてもというのだ。
「我等にしてもじゃ」
「戦ですな」
「それでどうするしかありませぬな」
「あの城だけは」
「うむ、しかしな」
それでもというのだ。
「如何に堅固な城でもじゃ」
「孤城になれば」
「そうなればですな」
「もう勝負は決まっていますな」
「そうしていく、そしてな」
そのうえでというのだ。
「攻め落とす、如何な堅城も孤城となれば」
「攻め落とせますな」
「周りの援軍もなく」
「完全に囲めるので」
「確実に出来る、だからな」
それでというのだ。
「そこまで進めていくぞ」
「そしてその際ですな」
「山中と十人衆とは戦わぬ」
「他の将が率いる軍と戦っていきますな」
「そうしていくことじゃ、お主達もじゃ」
三人の息子達にも告げた。
「くれぐれもな」
「その者達とはですな」
「戦わぬ様にする」
「攻めないことですな」
「それは守るのじゃ。あと戦が完全に終わるまで身の回りには気をつけ」
そしてというのだ。
「飲み水にもな」
「それにもですか」
「気をつける」
「そうしていくべきですな」
「そうせよ。尼子家も必死じゃ」
追い詰められているだけにというのだ。
「城の守りも固いが」
「策もですか」
「必死に繰り出してくる」
「だからですか」
「刺客も毒もな」
その両方をというのだ。
「仕掛けて来るぞ、実際にわしは山中に策は難しいと聞いたが仕掛けてみた」
「そうされましたか」
「あの者に」
「既に」
「毒で亡き者にしようとな」
そう考えてというのだ。
「一服盛ろうとしたが」
「あの鳥の毒ですか」
隆元が言ってきた。
「言い伝えにある」
「毒鳥の羽毛じゃな」
「はい、あれですな」
「いや、あれはどうも言い伝ええな」
「実はですか」
「ない様じゃ、それで附子のな」
それのというのだ。
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