戦国異伝供書
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第九十九話 厳島の合戦その十一
「考えたが石見じゃ」
「先に攻めるのは」
「あの国ですか」
「そうされますか」
「うむ、あの国を攻め取ってな」
完全に毛利家の領地にしてというのだ。
「そして銀山を手に入れるぞ」
「あの石見の銀山を」
「そうされますか」
「最初は」
「伯耆よりもですか」
「あの銀山じゃ」
そこだというのだ。
「あの銀山は大きいな」
「銀が恐ろしいまでに採れます」
「尼子家の財源の一つです」
「その財源を奪いますか」
「そして我等のものにする」
毛利家のというのだ。
「その為にな」
「だからこそですか」
「ここは、ですか」
「あの銀山を奪う」
「尼子家の財源の一つを奪い」
「そしてですか」
「我等のものとするのじゃ」
そうするというのだ。
「よいな」
「はい、それでは」
「まずはですな」
「石見の銀山ですな」
「そこを狙うのじゃ」
こう言って動きはじめる、だがここでだった。
元就は警戒する顔になって家臣達に問うた。
「それで尼子家の者で山中という者がおるそうだな」
「確か山中鹿之助といいましたな」
熊谷が言ってきた。
「そうでありましたな」
「知っておるか」
「はい、まだ若いですがその武芸と采配はかなりのもので」
そしてとだ、熊谷は主にさらに話した。
「勇気それに何よりも忠義の心がです」
「強いか」
「三日月を見てです」
そのうえでというのだ。
「我に七難八苦を与えて欲しいと願った様な者です」
「その七難八苦で己を鍛えてか」
「尼子家に全てを捧げたいとのことです」
「そこまでの者か」
「そして同じ思いを抱き生死を誓い合った者達もいます」
山中だけでなくというのだ。
「名付けて尼子十人衆です」
「その者達もおってか」
「はい、ですから」
その為にというのだ。
「この者とです」
「その十人衆はじゃな」
「非常にです」
「厄介か」
「どうも知略や謀略はない様ですが」
それでもというのだ。
「その強さは厄介かと」
「そうか、猪武者揃いか」
「ですが」
「強いことは強いか」
「そして忠義の心は何よりも強いので」
「こちらに引き込むことはじゃな」
「出来ぬかと」
こう元就に話した。
「この者達は、そして強いので」
「刺客を送ってもじゃな」
「命は奪えぬかと、そして毒も」
これもというのだ。
「用心深い者達揃いとのことで」
「通じぬか」
「その様です」
「では尼子殿に消させようか、いや」
元就はすぐに言った。
「それもな」
「通じませぬか」
「どの者も絶対の忠義を持っておるな」
「はい、しかも慎み深いとか」
「では疑わぬ」
尼子家の方もというのだ。
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