戦国異伝供書
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第九十九話 厳島の合戦その六
兵達も頷いた、そしてだった。
毛利家の軍勢は一斉に声をあげ法螺貝を鳴らして陶家の軍勢に彼等の後ろから攻めた、城を囲みそちらにばかり気を回していた陶家の軍勢は声と音だけで仰天した、そこにだった。
毛利家の軍勢は一斉に襲い掛かった、忽ちのうちに多くの兵達が倒れた。元就は自ら刀を手にさらに命じた。
「噂を流すのじゃ」
「陶家の軍勢にですな」
「そうするのですな」
「ここで」
「そうじゃ、陶殿は逃げただの腹を切られただのな」
その様な噂をというのだ。
「流せ、そうなればな」
「陶家の軍勢はさらに乱れますな」
「ここでそうなりますな」
「噂を流せば」
「そして惑わすのじゃ、そして宮尾城にも言うのじゃ」
元網が守るこの城にもというのだ。
「城からもうって出てな」
「そうしてですな」
「陶家の軍勢を攻める」
「そうせよとですな」
「伝えよ、さすれば勝敗は決する」
それでというのだ。
「だからよいな」
「わかり申した」
「それではです」
「ここでさらに」
「そうするのじゃ」
こう言ってだった。
元就は攻めさせた、するとだった。
毛利家の軍勢は陶家の軍勢を攻め続け噂を流し惑わせて宮尾城からも攻めさせた、すると陶家は最早戦うことすら満足に出来なくなり。
算を乱して逃げていった、元就はそれを見て言った。
「よし、後はな」
「敵を追い掛けますな」
「そうしてですな」
「そのうえで、ですな」
「さらに破る、そしてな」
そのうえでというのだ。
「二万の軍勢をさらに痛めつけてじゃ」
「そして陶殿もですな」
「あの御仁もですな」
「討つのですな」
「その首を取ったなら褒美は思いのままじゃ」
まさにというのだ。
「だからじゃ、よいな」
「はい、それではです」
「陶家の軍勢をさらに攻めて」
「そうしてです」
「陶殿も討ちます」
「その首手に入れまする」
「四郎が舟は全て沈めて焼いてくれておる」
陶家の軍勢のそれはというのだ。
「だからじゃ」
「もうこの島から逃げられぬ」
「それは適わぬ」
「だからですな」
「ここはですな」
「そうじゃ、例え何処に逃げようとも」
この厳島の中でというのだ。
「最後は見付かる、だからな」
「それでは」
「まずは陶家の軍勢を滅ぼし」
「陶殿を探しましょう」
「草の根を分けても」
「そうするのじゃ」
兵達に言ってだ、そうしてだった。
元就は潰走する陶家の軍勢を追い立てその兵達とを次から次に討ちそれと共に陶を探した、だがそれでもだった。
肝心の末は見付からない、それでも元就は落ち着いて言う。
「案ずるでない、この厳島から逃げられぬ」
「ならですな」
「それならですな」
「必ず見付かる」
「それ故に」
「落ち着いて探すのじゃ」
戦の中で言う。
「よいな」
「そしてですな」
「その首を手に入れればですな」
「陶殿を討てば」
「褒美は思いのまま、よく探すのじゃ」
元就は兵達にさらに言った、だが。
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