おっちょこちょいのかよちゃん
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65 文化祭前夜の心配事
前書き
《前回》
かよ子達が文化祭の話をしていると、クラスメイトの笹山かず子が話に入り、彼女も文化祭に行く予定だと言う。それを端から聞いていた藤木は心の中で自分も好きな女子・笹山と文化祭に行きたいと思い、かよ子達に見ていた事を気付かれる。そして笹山に誘われて文化祭に行く事になり、藤木は喜ぶのだった!!
三河口はこの日も文化祭の準備に立ち会って影響で居候先の家に帰宅するのが遅くなってしまった。
「只今帰りました」
「やあ、お帰り」
「大変だったね」
三河口は帰るなり、手を洗うと誘く夕食が置いてある食卓についた。
「ところで、今日、さりから電話あったんだけどね、神戸のゆりちゃんに会ってきたんだって」
「ゆりちゃんに?」
「うん、ゆりちゃんもその旦那さんも異世界の人間に会ってたって言ってたんよ」
「はあ、かなり戦いも激しくなってるんですね」
「まあ、日本赤軍や戦争の世界の人に対抗する為に平和の異世界の人間も日本中のあちこちに共闘を呼び求めてるってことだね」
「はい、文化祭の最中にそいつらが襲ってくるかもしれませんね・・・」
「うん、ないといいんだけど、気を付けた方がいいね。健ちゃん、お代わりする?」
「はい、いただきます」
三河口はいろいろと行動していたためにお代わりを叔母に読まれていた。
翌日、かよ子は家を出ると共にある事を考えた。文化祭が楽しみな事と共に異世界の人間や日本赤軍との戦いが日に日に激化している事に不安を感じている事である。
(う~ん・・・。長山君に相談してみよう・・・!)
かよ子は博識の少年をあてにした。そして学校に着いた後、長山の元へよった。
「あ、あの、な、長山君・・・!!」
「ああ、山田、おはよう。どうかしたのかい?」
「実はね、お母さんから聞いたんだけど、私の隣の家に住んでるおばさんの子なんだけど・・・」
「ああ、あの異世界の『護符』を持ってる人かい?」
「うん、そのさりさんって人には神戸に住んでるゆりお姉さんがいるんだ。その神戸にいるゆりお姉さんに会いに行ったんだって。それでね・・・」
かよ子は思い切って続きを言ってみる。
「そのゆりお姉さんも平和の異世界の人間と関わっていて、そこで一緒に戦う事を頼まれたんだって」
「そうか、それだけ闘いが激しくなってるんだね。山田」
「え?」
「文化祭の事なんだけどもしかしたらその隙に彼らが攻めてくるかもしれない。念の為、杖を持っていた方がいいよ」
「う、うん、私も丁度そう思ったよ・・・」
「大丈夫だよ。その杖は異世界でも最強の方に部類される道具の一つなんだからきっと追い払えるよ」
「うん、そうだよね、ありがとう!」
「よう、山田あ!」
杉山も寄って来た。
「す、杉山君!」
「もう文化祭も近くなってきたよな、俺も大野も凄い楽しみにしてるぜ」
「わ、私も」
「ああ、そうだ、長山も行くんだよな?」
「ああ、そうだよ」
「長山も一緒に楽しもうぜ!」
「うん」
かよ子は文化祭がますます楽しみになった。だが、心の隅には異世界の人間か、日本赤軍が攻めてくる事を懸念しており、緊張感も備わっていた。
朝のホームルームとなった。戸川先生の話が始まる。
「おはようございます。暑さも少し和らいできましたね。今日は笹山さんが風邪を引き、熱を出して欠席されているとの事です」
(笹山さんがお休みか・・・)
かよ子は笹山も高校の文化祭に訪れる予定である事を知っていたので、もしかしたら笹山はその体調不良で来られないかもしれないと思った。
(あ、でも・・・、それ以上に心配してるのが・・・)
かよ子は藤木の方を見た。藤木の方がかよ子以上に不安になっていたのだ。
(さ、笹山さんが休みだって・・・!?)
藤木は絶望の大波に溺れる事になった。なにしろ、文化祭当日までその熱が長引けば折角そこで笹山との貴重かつ楽しい時間を過ごす事が幻に終わってしまうのだ。
(もし笹山さんが来れなくなったらどうしよう・・・!!)
藤木は泣きそうになった。
授業の合間の休み時間、かよ子は藤木を見つけると、彼の近くに向かった。
「藤木君」
「ああ、山田かよ子か。何だい?」
「あ、ちょっとこっちに来て」
かよ子は藤木を人気のない廊下へと連れて行った。
「藤木君、昨日、まるちゃんやたまちゃんから聞いたんだ。藤木君は、笹山さんが好き、なんだよね?」
「う・・・!!い、いや、そんな事ないさ・・・」
「嘘つかなくていいよ、藤木君、凄く嬉しがってたし」
藤木は誤魔化そうとしたが、かよ子には通用しなかった。
「う・・・」
「私だってね、杉山君が好きなんだ。でも私、おっちょこちょいだから、受け入れてくれるか分からないんだ」
「そういえばさくらがばらしちゃってたね」
「あの時はとても恥ずかしかったけど、気持ちだけは伝える事ができたよ。でも、それでも付き合えたとかそういうわけじゃないし・・・」
「でも、君はおっちょこちょいでいいよ。僕は卑怯って言われるんだよ。笹山さんに好きなんて言ってもこんな僕なんて相手にしてくれるわけないし。それに・・・」
「それに?」
「僕は運の悪い男だし、笹山さんに何かといいとこ見せようとしても、空回りするし、裏目に出て逆に不愉快にさせる男だし・・・。それに今日だって笹山さんは休んだじゃないか。もしかしたら文化祭に来られないかもしれない・・・」
藤木はますます暗い顔になった。
「藤木君。そんなマイナスな事考えちゃ駄目だよ!」
「え?」
「笹山さんの熱が文化祭の日までに下がる事をお願いしなくちゃ!お祈りしよう!」
「あ・・・、うん」
「そうすれば笹山さんの熱も下がるはずだよ。それから藤木君の気持ち、きっと笹山さんにも伝わるよ。私だって結果オーライなんだけど、杉山君に伝わったんだ。もっと自身持とうよ!」
「ああ、うん、そうだよね。ありがとう!」
かよ子は何とか藤木を元気づけさせた。そしてチャイムが鳴った。
「あ、もう授業が始まっちゃう!」
二人は急いで教室に戻った。
清水市内の高校。校内は本格的な文化祭の準備へと突入していた。三河口は唐揚げ・焼き鳥に使用する肉屋への予約は済ませていたので、看板作り及び屋台の立ち上げに回っていた。模擬店の区画を行い、そこに集会用テントを設ける作業である。労働が必要な為、皆体操着に着替えていた。濃藤はクラスメイトと共にその集会用テントを持って来た。
「テント持ってきたぞ」
「よし」
皆はテントの脚を組み立てた。十人ほどが取り掛かった。何しろ失敗したら怪我人が出る恐れがある為、人数は多め、かつ慎重にやらなければならないのだから。
「よし、立った立った!」
テントは無事に立ち上がった。そして借りる予定のガスコンロや家から持参する事になった鍋を持って来る。屋台の準備も順次進んでいた。
三河口はまたこの日も遅くなった。
「三河口君」
「ああ、奏子ちゃん」
「一緒に帰ってもいいかな?」
「いいよ」
三河口は奏子と共に夕方のバスに乗った。
「あの、三河口君って誰か誘ってるの?」
「ああ、今居候中の家の隣に住んでる子を誘ったよ」
「へえ、私も近所の子を誘ったんだ。小学三年生の女の子だよ」
「偶然だね。俺が誘ったのも小三の女子だよ」
「へえ、もしかしたらその子と同い年同士仲良くなれるといいね」
「そうだといいね」
二人は駅前でバスを降り、電車に乗った。二人は同じ駅で降りたが、方向が異なる為途中で別れた。
「じゃあね~」
「うん、またね」
(三河口君と一緒に帰れてよかった・・・)
奏子は三河口と距離を縮められた感がして嬉しくなった。
(文化祭、頑張ろうね、三河口君・・・)
三河口は文化祭の最中に異世界の敵だの、日本赤軍の人間だのが攻めてくるのではないかと心配になった。
(この文化祭こそが、学校の皆が一番楽しみに、そして盛り上がる時なんだよな・・・。そんな時に奴らが来てメチャクチャにするんじゃないかね・・・。いや、考えすぎか?)
例の地震のような現象が起きてからは清水も不安になったものである。どれだけの敵がこの清水市に来襲して来た事か。アレクサンドルとアンナの兄妹、オリガ、丸岡修、奥平純三、バーシム・・・。そして東京の地ではアドルフ、日高敏彦が来襲していた。だが、全国的に見れば自分達が関わっていない遠い地でも襲撃しているとか。現に札幌に住んでいるありもイマヌエルと共闘を頼まれており、神戸のゆりの家の隣人の女子高生が異世界の道具を持って戦っているとか・・・。それに奈美子から護符を受け継いださりのいる名古屋にも襲来する可能性もある。
(まあ、奴らがかよちゃんの杖を狙うというならば、寧ろ文化祭の地で招き入れ、俺も護衛も兼ねるって作戦でもいいか・・・)
三河口は居候の家へ帰宅していった。
一人の大学生が大学の講義を終えて家に帰りながら、別居中の弟の事を考えていた。
後書き
次回は・・・
「前夜祭で」
文化祭の前日となった。かよ子や杉山などが楽しみにする中、藤木は笹山と共に文化祭に行く希望が持てるのか。そして三河口は不安を抱えながらも前夜祭を満喫する・・・。
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