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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二百八十話 テストの中もその十二

「太宰は自殺癖があったんだよ」
「ややこしいわね」
「そうだね、それで」
 その為にだ。
「何度か自殺しようとしているんだ」
「心中も含めてね」
「結局最後もだし」
 自殺して人生を終えている、玉川上水でそうした。
「鬱の気配が強かったのかな、やっぱり」
「ううん、鬱になるのはね」
 どうかとだ、詩織さんは腕を組んで言った。
「私にとってはね」
「思わないことなんだ」
「ちょっとね、けれど人によるわね」
「あと状況もね」
「そうよね、太宰にしかわからない事情ね」
 詩織さんはこうも言った。
「結局は」
「そうよね、ただね」
「ただ?」
「思うことはね」
「っていうと」
「人間如何なる時も自殺することはね」
 このことはというのだ。
「駄目よ」
「それはだね」
「ええ、本当にね」 
 それはというのだ。
「それだけはね」
「自殺については」
「そう、そんなことをしたら」
 それこそというのだ。
「地獄に落ちるわよ」
「そうだよね、よく言われるね」
「キリスト教でもそうだし」
「仏教でも本当はね」
「よくないわね」
「うん、日本では自害も多かったけれど」
 武士の切腹にしてもそうだ。
「実はね」
「だからよね」
「してはね」
 そうしたことはだ。
「いけないよ」
「そうした教えよね」
「そう、だからね」
「自殺はよくないわね」
「誰でもね」
 それこそだ。
「したらいけないよ」
「そうよね」
「誰だって一人じゃないから」
 苦い顔でだ、僕はこのことを言った。これはこの世の誰でもだと思う。それこそ完全に孤独な人はこの世には存在しない。
 それでだ、こうも言った。
「自殺はね」
「それはしてはいけないわね」
「そう、そしてね」
 そのうえでだ。
「生きるべきだよ」
「そうよね」
「死ぬのは絶対でも」
「それでもよね」
「いい死に方をすべきだよ」
 それは難しいけれどだ、人間は死ぬ場所を選ぶことは本当に難しい。人間は何時何処でどうなるかわからないからだ。
「本当にね」
「だからよね」
「自殺はね」
「いい死に方ではないから」
「絶対にそうよね」
「そうしたものだから」
 それだけにだ。 
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