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曇天に哭く修羅

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第四部
  知らぬが華 2

 
前書き
_〆(。。) 

 
禍孔雀(かくじゃく)】ではレイアの結界が破れないことを(さと)った紫闇は左手の人差し指を自分の口へと持っていった。


「何する気ですかね」

「恐らくあの能力かと」

「そりゃそうなるよナ」

「今の紫闇が持つ能力の中で私の結界を突破できるものは一つしかない」


セリーヌ、斗浪/となみ、水明、レイアは四者四様に成り行きを見守る。

紫闇が指先を噛み肉を裂く。

当然ながら血が(にじ)み出す。

その血が糸のように伸びた。

紫闇の血が彼を囲うレイアの結界に触れると音も立てずに溶かしていく。

概念を溶かす【融解】だ。

薄く、脆くなり、ところどころに小さな穴が空いた結界に禍孔雀が炸裂。

爆発を起こし黄金の粒子が散る。


「あ~出てきたネ」

「私と水明は()らなくて良い」


(いや)らしい笑みを浮かべる紫闇を放置するレイアは水明を連れて下がっていく。


「じゃあ任せたよ」


斗浪とセリーヌが前に出る。


(なら)え。【白瀘の魔剣(レイ=グラムス)】」

()せ。【青鳴の魔剣(ウォーレ=ザイン)】」


セリーヌは白、斗浪は青の(つるぎ)


「ウゥゥゥゥゥ……!」


紫闇の外装が黒から紫に変化。

セリーヌ達と同じく解放して能力を上げた。

更に金属のような黒い二枚の翼。

両手には鉤爪が付いた手甲。

右手の手甲は魔晄外装に混ざる。


「いきなりブッ放す気まんまんネ」

「遊びは無しか。力の差が解るんだな」


喰らったことのある水明は顔をしかめたが、レイアの方は紫闇を評価した。

紫闇が【雷鳴光翼(ケリードーン)】を使う。

手と翼から大量の光が噴出。

数的に躱し切れるものではない。

しかし斗浪とセリーヌは無数に飛んでくる攻撃以上のスピードで動きながら光を弾き、斬り、回避し、当たり前のように対処。

むしろ紫闇を追い詰める。

迫る二人に対し防壁を展開。

それは間違いではないのだが───


「例え正しい行動でも」

「結果が出るとは限らなイ」


離れて見物していたレイアと水明はなるべくしてなる末路に苦笑う。

二振りの剣は紫闇の魔晄防壁をX字に斬り裂き、続けて両腕を切断した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


《セリーヌ・エマ・ブレンダ》の持つ魔晄外装【白瀘の魔剣】の刃は任意で対象にしたもの以外の全てを『透過/とうか』、つまり()り抜けさせることが出来る。

龍宮斗浪(たつみやとなみ)》の【青鳴の魔剣】は指定した座標軸の『空間ごと』対象を斬れる。


「よほど格上であるか、相性の良い能力を使わないと防げないネ」


普通ならここで終わりなのだが。


「おっ、まだ戦るみたいだ」


セリーヌの視線が地面を濡らす紫闇の血が浮き上がった場面を捉える。

赤い筋は紫闇の肩口に有る切断面と切り落とされた腕の切断面を繋ぎ、そのまま釣り竿のように引き上げて切断面同士をくっ付けた。

更に傷口まで消え、指が動き出す。


「失った血は戻らないし、ダメージが回復するわけでもないですが、傷自体は『結果』を消滅させられる、ということですか」


斗浪の分析通り。

【融解】は攻防の能力で回復できない。

しかし概念を溶かして傷口を塞ぐくらいの芸当は可能な能力だった。


「セリーヌさん。退がって下さい。あとは私だけでやりますから」

「では御言葉に甘えて」


セリーヌはレイア達の元へ跳んだ。
 
 

 
後書き
斗浪とセリーヌの外装は御存知【学戦都市アスタリスク】から四色の魔剣。
(´Д` ) 
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