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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二百八十話 テストの中もその二

「阪神は」
「だからな、わしも嫌いじゃない」
「そうなんだね」
「選手を獲られても」
 主にフリーエージェントでだ。
「それでもじゃ」
「阪神はいいんだね」
「これが巨人なら」
 前までの巨人の十八番だった、というかシーズンオフになると他チームから選手を掠め取ることばかりやっていた。実に浅ましいと僕は思っていた。
「もうな」
「腹立つよね」
「広島はどれだけ獲られたか」
「凄かったからね」
「あのチームに獲られたのは腹が立つ」
「それはわかるよ」
「もうそれも出来んが」
 親会社にお金がなくなってだ、今は赤貧で万年最下位の超弱小球団になって人気も全くなくなっている。
「昔はのう」
「腹が立ってだね」
「仕方ががなかったな」
「そうだったんだね」
「けれど阪神に獲られても」
 このチームの場合はというと。
「同じ獲られるにしても」
「そんなになんだ」
「腹は立たん」
 そうだというのだ。
「わしとしては、そして多くのカープファンも多分な」
「阪神には腹立たないんだ」
「これといってな」
「そうした相手なんだね」
「毎年勝ち越させてもらっとる」
 田中君は笑ってこの話もした。
「そのこともあるからな」
「それね」
 僕は田中君の今の言葉に苦笑いで応えた。
「どうもね」
「阪神は広島に弱いのう」
「本当に毎年だからね」 
 毎年優勝する様になってもだ。
「阪神は広島に弱いね」
「これが大きいのう」
「それで半身は嫌いじゃないんだね」
「華があるチームでしかも憎めんでな」
 それでというのだ。
「尚且つ勝たせてもらっちょる」
「それじゃあね」
「嫌いになる理由がない、しかしな」
「しかしっていうと」
「何で阪神は広島に弱いか」
 田中君は今度は首を傾げさせて言った。
「わしもはあれがわからん」
「あれね、巨人には毎年二十勝以上してるのに」
 もう圧倒的だ、正直巨人が負ける姿を見ることはとても気持ちがいい。巨人には無様な負けがよく似合う。
「何でかね」
「カープにはのう」
「負け越してるよね」
「わしはあれがわからん」
「相性かな」
 僕は田中君に少し考えてから答えた。
「そのせいでね」
「ああしてか」
「負けてるのかな」
「相性か」
「それは伝統でね」
 阪神に数多いそれだ。
「もうそれでね」
「毎年負け越しか」
「そうじゃないかな」
「いや、それにしてはな」
 どうかとだ、田中君は僕に微妙な顔で答えてきた。 
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