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竜のもうひとつの瞳

作者:夜霧
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第十四章~東軍参戦、そして真相へ~
  第七十二話

 六爪も直ったということで、早速三河の徳川家康に会いに行くことになった。
政宗様は一戦交えてくる、なんて物騒なこと言ってるけど、とりあえず六爪を叩き折るような事態だけは避けて欲しい。
またおっちゃんに注意されますよ、と言えばかなり渋い顔をしていた。

 さて、三河に着いて家康さんに会うことになり、政宗様と家康さんが一戦交えている。
一切手出しをしないようにと指示を出しているせいか、二人に加勢する者は誰も無い。
結構互角に戦ってるけど、何というか優等生と不良が喧嘩してるっぽくて不思議な気分になってくるわ。

 「………………!!!」

 なんて考えていると、徳川側から妙な起動音が聞こえた。
何処から聞こえてきたのかと探していると、アニメに出てきそうなロボットがこちらを見ている。
こっちも何かガ○ダムっぽいのがいるなぁと思って見ていれば、それが私に気付いてゆっくりと近づいて来た。
一体何なのかと怯んでいると、今度は別の違った音が鳴って何かを私に伝えようとしているような気がした。
とはいえ、何を言ってるか全く分からないから、私は首を傾げるしかない。

 「えっと……燃料切れ?」

 そう聞くと、ロボが首を横に振る。

 「……何処か、故障したとか?」

 更に首を横に振る。

 はてさて、困ったぞ? 一体このロボは何を言おうとしているのか。
流石にロボとコミュニケーション取る術は知らないしなぁ……。

 「ねぇ、小十郎。何が言いたいか分かる?」

 「……さぁ、この小十郎にもはっきりとは……。ただ、何となく申し訳無さそうな感じがするのですが……」

 申し訳無さそう? あ、頷いてる。ってことは、何か私に謝りたいことがあるってこと?

 でも、初対面だしなぁ……謝りたいと言われても、思い当たる節が……あ。

 「……もしかして、尾張の森の中で私を吹っ飛ばして崖から叩き落したのって、貴方?」

 はっきりと限定して質問すると、ロボがしっかりと頷いた。

 コイツか!! 私を崖から突き落として、小十郎救出の邪魔をしたのは!!

 「ちょっと、どういうことなのよ!! アンタが私を崖から落としてくれたお陰で、可愛い弟が貞操奪われそうになったのよ!?」

 「!?!?!?!?」

 かなり動揺したような音がしたのは多分気のせいではないと思う。
ちなみに馬鹿でかい声で私がそんなことを言うもんだから、小十郎が真っ赤になって止めに入っている。
一体何があったんだってうちの兵も徳川の兵も揃ってこっち見てるしね。

 「あっ、姉上!! 何て事を言うのですか!!」

 「聞けばオーバーヒートして心臓発作起こしたって言うじゃないの!!
政宗様が運良く助けてくれたから良かったけどもさぁ、もう少し遅かったらあの変態に、
その無駄に張った胸やら尻やら揉まれて身体中嘗め回されて、とどめに」

 「姉上!! そのような卑猥なことを平気で口にしないでいただきたい!!」

 私に拳骨を一発食らわせて小十郎が怒鳴る。でも、しっかり鳥肌立っていたのは見逃しませんでした。

 「………………」

 何となく、かなり申し訳無さそうな音が鳴ったような気がするのは……
っていうか、小十郎をかなり哀れんで見ているような気がするのは、決して気のせいじゃないと思う。

 「俺をそんな目で見るんじゃねぇ!!」

 小十郎が怒鳴っているけれど、ロボはやっぱり哀れんだ目で見ていた。
そんなロボに小十郎が何だか泣きそうな顔をしているけど、哀れまれても仕方が無いようなことされたんだからしょうがない。

 「はっはっは! 忠勝、片倉殿をそういじめるな」

 勝敗がついたのか、家康さんがロボの腰の辺りを叩いている。政宗様も六爪を納めて呆れ顔でこの様子を見ているし。

 「………………」

 いじめているつもりはない、そう言っているような気がするけど……って、コミュニケーション能力が上がった?
何かロボの言いたいことが分かってきたぞ?
っていうか、今忠勝、って言ったよね? 忠勝ってもしかして……

 「え、もしかして、あの有名な本多忠勝? ロボじゃなくて?」

 「その、“ろぼ”というのが何だか分からんが、これが戦国最強本多忠勝だ」

 へ~! ガン○ムならぬホンダムか! いやいやちょっと待て、おかしいだろ、コレ。
……って、そういやゲームでちょこちょこ出てきたな、ホンダム。
必要の無さそうなイベントは全部ショートカットで飛ばしてたから、何者かとか全然……。
とりあえず、気になるのはこのホンダムは人間なんだろうか。うーん、軍神の性別に加えてまた謎が増えたぞ?

 「小夜殿、久しいな。無事に奥州に戻れたようで何よりだ……いや、小夜というのは偽名か?」

 相変わらずの好青年っぷりに、うちにはない清々しさを覚える。
この人なら鶴姫ちゃんと釣り合いがとれそうなんて、アニキには申し訳ないけどそんなことを考えてしまうよ。

 「片倉景継と申します。その節はお世話になりました。素性を隠していて申し訳ありません」

 「いや、素性を話せばややこしくなるからな。その判断は賢明だった」

 なんて二人で話をしていると、どういう知り合いなんだと政宗様が寄って来る。
小十郎もまさか家康さんと面識が会ったとは思わなかったみたいで、訝しげに見てるし。

 「いや、小田原城に向かう前に、アニキに……ええっと、長曾我部元親殿に九州から三河まで船に乗せて貰って、その時に」

 こんなことを言うと、二人が酷く驚いた顔を見せた。

 「お前九州にまで行ってたのか!?」

 え、ちょっと待ってよ、何なのその反応。おかしくない?
ちゃんと連絡取ったじゃないの、今安芸にいますって。

 「え、だって毛利のところにいた時に、小十郎宛に文を送ったんだけど」

 「……そのようなもの、届いておりませぬが」

 訝しがる小十郎に、私は一つの可能性が頭に浮かぶ。
……あの野郎、折角したためた文を握り潰しやがったな? サンデー毛利め……絶対に許すまじ!

 「……お前一体何処ほっつき歩いてたんだよ。甲斐に行って加賀に行って、その後は」

 「ええっと……明智に捕まって、その後ホンダム……じゃなかった、本多殿に崖から叩き落されて
動けなくなったところを竹中さんに助けてもらって、その後は毛利のところに行って、元親殿のところに行って、
ここに来て小田原城で行き倒れて合流しました」

 素直にそう白状したら、政宗様が呆れた顔をして溜息を吐いた。小十郎も頭が痛いという顔をして溜息を吐いている。

 「……石田の奴がお前を見て退いたと聞いたが」

 「竹中さんに恩を売ったからだと思いますけど」

 小十郎の眉間に皺が寄ったのを見て、私はいよいよヤバイかな、という気になり始めていた。
でもここまで話しちゃったらもう私に逃げ場は無い。

 「恩、というのは?」

 「……えーっと、城攻め手伝って、竹中さんが危うく切られそうになったところを助けた」

 ちょっとお前そこに座れと政宗様に言われて、素直に正座をする。
小十郎も眉間に深く皺を寄せており、二人からがっつりとその場で説教されました。

 いいじゃないのよ、恩を売ったお陰で今こうして生きてられるんだからさぁ……。
……まぁ、豊臣秀吉と引き合わせるきっかけを作ったのは私ですが。 
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