戦国異伝供書
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第九十六話 尼子家の騒動その十一
「そしてやがてはな」
「その両家をですな」
「退け」
「山陽と山陰の覇者になりますな」
「うむ、しかしな」
それでもというのだ。
「それ以上は求めぬ」
「山陽と山陰だけですか」
「九州や四国には進まれませぬか」
「そして天下も」
「ははは、そうなっていけば果てがない」
領地をひたすら追い求めればとだ、元就は家臣達に笑って話した。
「幼い頃厳島のことじゃな」
「ああ、あの時ですな」
「我等が願いましたな」
その時の家臣達が元就に話した。
「当家が山陽と山陰を治める」
「そこまでの家になる様にと厳島大明神に願いましたな」
「あの時わしはそれで安芸一国が精々になると言ったが」
そこまで願ってというのだ。
「それでもな」
「はい、その時にですか」
「山陽と山陰の覇者になる」
「そう決められましたか」
「しかしそれからはじゃ」
そこから先はというのだ。
「実はわしはな」
「思っておられぬ」
「そうなのですな」
「九州や四国は」
「そして天下も」
「そもそも毛利家は幕府の臣下の家」
大江広元に発する家だというのだ。
「天下人の家ではないな」
「左様ですな」
「当家の格は幕府の臣下です」
「その家です」
「山陽と山陰を治め西国探題となれば」
それでというのだ。
「もう十二分であるな」
「ですな、言われてみますと」
「もうそれ以上になりますと」
「過ぎたものです」
「そうとしか言い様がありませぬ」
「だからそこまででよい」
山陽と山陰を勢力圏に収め領地をそこまでにして地位はその役職に就いてというのである。尚元就はあくまで幕府を念頭に言っている。
「あくまでな」
「左様ですか、ではです」
「勢力を拡大していきますな」
「備後に軸を置いて」
「そうしていく」
まさにというのだ。
「じっくりと時をかけてな」
「わかり申した」
「では石見の国人達を取り込みましょう」
「吉川家のつてから」
「そして備後は小早川家のつてを使い」
「あちらもまた」
「そうしていく、必要とあれば兵も動かすが」
それでもというのだ。
「第一とすることはだ」
「話をしていきですな」
「そのうえで取り込んでいく」
「そうしていきますな」
「兵を動かすよりも」
「兵を動かすと何かとある」
どうしてもというのだ。
「銭も兵糧を使いだ」
「兵も倒れる」
「まことに何かとありますな」
「戦になれば」
「だからそれは出来るだけ避けてな」
そうしてというのだ。
「そしてだ」
「そのうえで、ですな」
「石見や備後にしてもですな」
「そして厳島の方も」
「そちらもですな」
「話を第一とする、人をやり」
それぞれの国人達にというのだ。
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