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生まれ変わったのか

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第二章

「あれっ、宮崎さんって」
「ああ、確か市ででかい梨園持ってるな」
「あの人だよな」
「俺達も梨園行ったな」
「あの人なんだな」
「今は息子夫婦がやってるよ」
 老婆は子供達にこう言った。
「もう私は無理しないでね」
「婆ちゃん公園にいたけれど」
「休んでるんだ」
「そうしてるんだ」
「そうだよ、ちょっと腰が痛くてね」
 それでというのだ。
「無理はしない様にしてるんだよ」
「婆ちゃん無理するなよ」
「腰痛めたら大変だっていうしな」
「歩けなくなったら大変だし」
「注意しろよ」
「有り難うね」
 老婆は猫を交代で抱きつつ家まで来た子供達に笑って礼を述べた、そしてだった。
 彼等を家に入れるとだった、皆和風の奇麗な家の大広間に案内されたがそこに黒猫、灰色の毛の猫、茶色の毛の猫がいた。老婆はその三匹を見て話した。
「黒の子は雌で他の子は雄だよ」
「へえ、そうなんだ」
「黒猫が雌なんだ」
「そうなんだ」
「この子がメアリーで灰色の子がソックス、茶色の子がブラウンだよ」
 猫のその名前も話した。
「皆いい子だよ」
「皆くつろいでるな」
「もう自由な感じで」
「幸せそうだな」
「毛並みいいし太ってるし」
「この子もそうなるよ、これからね」  
 猫は今は老婆が抱いている、それでこう言った。
「婆ちゃんが責任持って飼うから安心するんだよ」
「ああ、それじゃあな」
「この子頼むな」
「大事にしてくれよな」
「わかってるよ、若しあんた達がこの子に会いたいなら何時でも来ていいからね」
 老婆は悟郎達にこうも言った。
「遊んでやってくれよ」
「ああ、じゃあな」
「これからそうさせてもらうな」
「こいつに会いに来させてもらうな」
 悟郎達は老婆に笑顔で応えた、そうして実際にだった。
 悟郎達は夏休みの間よく老婆の家に行き猫と会った、その猫は雄猫で老婆はトッポと名付けた。そのトッポはというと。
 一日ごとに毛並みがよくなってきていてしかも食欲旺盛だった、それで悟郎もある日老婆にこう言った。
「こいつ大丈夫だよな」
「ええ、ここまできたらね」
 老婆も笑顔で答えた。
「あとはすくすくとね」
「育ってくれるか」
「だから安心してね」
 こう言うのだった。
「もうね」
「それじゃあ」
「それとうちの子達は晴れの日は皆うちの二階の窓の方に出るから」
 それでというのだ。
「学校の行き帰りでも見たらね」
「トッポもいるんだ」
「そうだよ」
 老婆は悟郎にそのトッポを見つつ話した。
「うちは皆家猫だから外には出さないけれどね」
「二階の窓にか」
「出るからね」
 それでというのだ。
「うちに来てもいいし」
「窓の方を見てもか」
「いいからね」
「わかったよ、じゃあそこでもトッポ達見るから」
「ニャンニャン」
 ここでトッポも鳴いた、それはまるで何時でも会いに来ても見に来てもいいよと言っているかの様だった。 
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