戦国異伝供書
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第九十六話 尼子家の騒動その六
「まさにな」
「左様でありますな」
「そしてな」
元就はさらに話した。
「当家としてはな」
「尼子家が弱るのを見て」
「手を打つ計らいを見る」
「そうしますな」
「尼子家の次の主殿が誰かを見てな」
「動きますな」
「そうする、それでな」
元就は話題を変えることにした、今度の話題はというとお。
「大内家のことであるが」
「もう一方の」
「動かれぬか」
「そうした動きは全くありませぬ」
一切とだ、桂は元就に答えた。
「尼子家はおろか九州でもです」
「兵を動かすことはじゃな」
「守りに徹されるだけで」
それに終始してというのだ。
「何もです」
「やはり先の負け戦のことがか」
「大きく」
それでというのだ。
「もうです」
「動かれぬな」
「暫くは」
「おそらくこのままな」
元就は桂の話をここまで聞いて述べた。
「大内殿は動かれぬ」
「そうなりますか」
「うむ」
まさにというのだ。
「これからはな」
「戦うことはなくなりますか」
「大内殿は戦がお好きでない」
義隆、彼はというのだ。
「元々な、それで先の負け戦でな」
「そのお気持ちがより大きくなられて」
「そしてじゃ」
そのうえでというのだ。
「もう少なくともご自身の出陣はな」
「ないですか」
「それは戦国の世では有り得ぬが」
それでもというのだ。
「後は戦のことはな」
「陶殿がされますか」
「うむ」
まさにというのだ。
「そうなる、それでな」
「それでとは」
「一つ思うことは」
これはというと。
「それが陶殿の専横になるかというとな」
「違いますか」
「うむ、大内殿は能や和歌を嗜んでおられるが」
それでもというのだ。
「そうしたものに溺れるまでにな」
「愚かな方ではないですか」
「左様、だからな」
それでというのだ。
「内の政もされる」
「だからですか」
「そちらを担う家臣の方が力をつけられてな」
それならというのだ。
「陶殿の専横とはならぬ」
「ですがそれでは」
「陶殿とじゃな」
「他の家臣の方とです」
「軋轢が生じてな」
「やはりお家騒動になるのでは」
「有り得る」
実際にとだ、元就は桂にあっさりと答えた。
「それはな」
「やはりそうですか」
「だからじゃ」
それでというのだ。
「あの家のこともな」
「見ていきますか」
「うむ」
こう桂に述べた。
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