戦国異伝供書
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第九十五話 負け戦その十三
しつこくもなくなった、それで元就は義隆も大内家の軍勢も安全な場所にまで逃れたと聞いてからだった。
石見の山道から安芸に入った、その直線に尼子家の軍勢に最後の総攻撃を浴びせてそうして言った。
「ではな」
「これよりですな」
「下がりますな」
「そうしますな」
「うむ」
まさにというのだ。
「そうするぞ」
「それでは」
「そしてですな」
「吉田郡山城まで戻る」
「そうしますな」
「そうじゃ」
そうするというのだ。
「そこで戦は終わりじゃ」
「ですな」
「それではですな」
「今からですな」
「吉田郡山城まで戻りますな」
「その様にする、後は道を通っていくぞ」
自分達が知っている安芸の道をというのだ。
「よいな」
「はい、もう尼子家の軍勢も追ってきませぬ」
「それではですな」
「傷を負った者達は見捨てるでない」
このことは忘れていなかった、今も。
「よいな」
「はい、手当も忘れずにしていました」
「それならですな」
「このまま連れて行く」
「そうしますな」
「見捨てた者は切る」
こうも言うのだった。
「そして見捨てなかった者には褒美をやる」
「ですな、では」
「このままですな」
「傷付いた者達を運びつつ」
「先に進みますな」
「城までな」
吉田郡山城にというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
「それではです」
「何とか吉田郡山城まで戻りましょう」
「安芸に入り」
「そうする、死ぬでないぞ」
元就はこう言って最後まで後詰にいて采配を執り続けそうして安芸に入り吉田郡山城まで退いた。これで戦は終わったがそれは新たなはじまりでもあった。
第九十五話 完
2020・4・23
ページ上へ戻る