| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二百七十七話 期末テストを前にしてその五

「裏社会は小さくなっています」
「いいことですね」
「はい、そのこと自体は」
「そうですよね」
「お母様の件でもです」
「あそこでもヤクザ屋さん関わってましたね」
 お袋の実家自体が秋田のそうした人達の大元締めになっていた、このことが本当に厄介だったことは忘れられない。
「そうでしたね」
「はい、とかくです」
「ヤクザ屋さんはですね」
「いないに越したことはないです」
「左様ですね」
「そうです、ですが」
 それでもとだ、畑中さんは僕に話した。
「完全にいなくなることはです」
「ないですよね」
「むしろヤクザ屋さんが一人もいない」
「そうした社会はですね」
「怖いものがあるかと」
「完全に清潔な社会ですか」
「雑菌がありませんと」
 忌み嫌われているこの存在がだ。
「実は何かと不都合ですね」
「そうですよね」
「雑菌もそれはそれで役に立つこともありますし」
「雑菌がない様な場所は、ですね」
「他の菌、有益な菌もない」
「そういうことですね」
「はい、ですから」
 それでというのだ。
「ヤクザ屋さんが一人もいないのなら」
「そうした社会はですね」
「ナチスやソ連がそうですね」
「ああした国ですか」
「どういった社会か」
「もう言うまでもないですね」
「確かに裏社会は存在しませんが」 
 それでもだ。
「それ以上に恐ろしい存在が頂上にあります」
「国家の」
「絶対の独裁者が」
 ヒトラーやスターリンといった独裁者がだ、彼等がしたことを歴史から学ぶと二度と出て欲しくない。
「国家にあります」
「その方が怖いですね」
「ナチス登場までドイツは異常犯罪者も多く」
「人を食べる様な」
 フリッツ=ハールマンやペーター=キュルテンといった者達だ、人を好んで食べる様な連続犯罪者達が当時のドイツにはいたのだ。
「そうした犯罪者がいたんですよね」
「ヒトラー登場までのドイツは混乱していました」
「一次大戦で負けて」
「はい、そして世相が乱れに乱れ」
「その結果でしたね」
「異常犯罪者達も多く出てです」
「大変な状況でしたね」
「そこにナチスが登場し」
 アドルフ=ヒトラー、彼がだ。
「政権に就きますと」
「経済も雇用も安定して」
「治安も回復しました」
「犯罪者がいなくなったんですよね」
「そうした異常犯罪者達は一掃されました」
「ソ連も犯罪は少なかったみたいですね」
 スターリンの時代はだ。
「そうでしたね」
「はい、ですが」
「秘密警察がいて」
「少しでも異常とみなされますと」
 それも主観でだ。
「どうなるか」
「言うまでもない様な社会ですね」
「裏社会の存在も許されません」
「そうした独裁者は国家の全てを握ろうとするので」
「実際にムッソリーニはマフィアを一掃しました」
 ファシスト党の権力掌握に邪魔だったからだ、とはいってもイタリアの方はナチスやソ連より遥かに穏健な統治だった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧