戦国異伝供書
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第九十四話 負け戦を見据えその九
「そして大内家が大いに弱まるのを防ぎ」
「戦の後でもですか」
「大内家と尼子家はこのままいがみ合ってもらってな」
「その間にですか」
「我等は安芸をより治めそして厳島等にも手を及ばせ」
そしてというのだ。
「備後にもな」
「手を及ぼす」
「だからな」
「その時は」
「後詰を申し出る」
そのつもりだというのだ。
「よいな」
「はい、それでは」
「お主は当家で随一の武勇の持ち主」
九郎判官の再来とも言われた元網に話した。
「ならばな」
「大軍が勢いに乗って攻めて来る戦でも」
「お主ならば戦えてな」
そしてというのだ。
「我等を無事安芸まで退かせることが出来お主自身もじゃ」
「生きると」
「そうなる、無論わしも戦うが」
それでもというのだ。
「その時の戦ではな」
「それがしが、ですか」
「柱となる」
「難しい戦だからですか」
「お主に頼みたい、よいな」
「さすれば、尼子家にはそれがし乗せられかけました」
元網はかつて自分が尼子家に兄への謀反を唆されかけたそのことを話した、彼にとっては忘れられないことだ。
「ならば」
「その怨みもあってじゃな」
「相手が尼子家ならば」
尚更というのだ。
「やらせて頂きます、奴等を寄せ付けず」
「そうしてじゃな」
「奴等を歯噛みさせながらです」
そのうえでというのだ。
「帰ってみせます」
「そうせよ、では行くぞ」
「さすれば」
「あうむ、あとな」
元就は話題を変えた、今度の話題はというと。
「陶殿のこのご気質は前の大内家との戦の時も思ったが」
「どうもです」
「かなり直情な方ですな」
「大軍を率いると驕る」
「そうした一面もありますな」
「そのことはよく覚えておこう」
こう言うのだった。
「若しもな」
「若しも?」
「若しといいますと」
「そのことは」
「うむ、また大内家と何かあった時はな」
つまり戦になった時はというのだ。
「そこに付け込もう」
「そしてですな」
「勝つ」
「そうされますな」
「是非な」
こう言うのだった。
「その時はな」
「陶殿が大内家の武の柱なら」
「それならですな」
「余計にですな」
「そこを攻めるのですな」
「そしてな」
そのうえでというのだ。
「大内家を倒せるのならな」
「それならですな」
「その時はですな」
「倒して」
「そしてですか」
「大内家にとって代わる」
こうも言うのだった。
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