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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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黒魔導士と妖精軍師

 
前書き
皆さんはオススメのFAIRYTALEの二次創作とかありますか?
他の方たちはどんな感じに書いてるのか気になってちょっと漁ろうかと思うんですがどれが良さげかわからないんですよね・・・
もしあれば何かオススメを教えてください(*・ω・)ノ 

 
「ティオス・・・お前にしてはずいぶん手間取っているみたいだな」

そう言ってレオンの真後ろにやってくる天海。その隙にカミューニさんとジェラールさんは少しずつ2人から距離を取るように・・・俺たちの方へと戻ってきている。

「そう言わないでくれよ、天海。君だってシリルの攻撃に反応できなかったじゃないか」
「あれは完全に警戒を怠っていた。だが、次からは反応してみせる」

レオンと天海・・・2人が並んだ時、思わず体中から冷や汗が流れていくのを感じた。そしてそれは俺だけじゃない。周りにいる皆さんも、同様のリアクションをしているのを肌で感じる。

「バカな・・・ティオスだけでも厄介なのに・・・」
「天海まで生きているなんて・・・」

エルザさんとカグラさん、2人の女剣士がそう言う。フィオーレでも有数の実力者である2人さえ恐怖を感じているのに、他のものたちがそれを感じずにいられるはずがない。

「何を怯えてるんだ?お前ら」
「ティオスはともかく、こいつからは魔力を感じない。何も警戒する必要はないだろ?」

ギルダーツさんとグラシアンさんは体が縮こまり、動けなくなっている俺たちの前に立つと、目の前の敵に視線を合わせる。しかしそれは、彼らが天海の強さを知らないから言えることなんだ。

「ダメです!!2人とも!!」
「「!!」」

今にも飛び出しそうな2人を今出せる目一杯の声で引き留める。彼らはその声で戦意を削がれたらしく、殺気が収まっていた。

「あの人を甘く見ちゃダメです」
「あの人はハルジオンで私たちの誰も歯が立ちませんでした」
「天海はレオンが命を賭けるまでしないと止めることができなかったの」
「何!?」
「そんなバカな・・・」

俺とウェンディ、シェリアが彼の実力を告げると、ギルダーツさんたちは驚愕していた。それは彼のことを知らない全員が、同様の反応をするに決まっている。

「1人増えようが関係ねぇ。俺たち全員の力があれば、必ず勝てる!!」

そんな中でも、ナツさんだけは決して臆するようなことはなかった。彼は自らの炎で全身を覆い始める。

「奴は殺して大丈夫なのか?ティオス」
「あぁ、せっかくだし任せようかな?天海」

そう言ってレオンの前に天海が出た途端、ナツさんの表情が・・・いや、他にも先程まで天海を警戒していなかった皆さんまでもが表情を強張らせた。理由は、臨戦態勢に入った天海だ。彼の放つプレッシャーがあまりにも大きく、それまで戦う気力に溢れていたナツさんでさえ、体がすくんでいるように見える。

「どうした?戦う気力も消え失せたのか?」
「くっ・・・」

目の前の敵が戦意喪失したことに失望したのか、天海も戦う構えを解いている。おかげでプレッシャーは多少下がったが、さっきのそれを思い出すだけでもう挑む気力も出てこない。

「これほどまでとは・・・」
「俺たちでは・・・太刀打ちできるはずがねぇ・・・」

ミネルバさんとスティングさん・・・剣咬の虎(セイバートゥース)の実力者である2人でさえも、戦意が完全に失せていた。このままでは、ただ一方的に虐殺されるだけになってしまう・・・

「ナツ、下がっていてくれ」

まるで金縛りにでもあったかのような感覚に陥っている俺たちの前に立つ1人の青年。彼は最愛の家族を守るように天海とレオンを見据える。

「兄ちゃん・・・」

彼の前に立ったのはゼレフだった。ゼレフは脅威の力を持つ2人の前に立ち、何を語ろうとしているのだろう。



















第三者side

「そんな・・・天海が生きてたなんて・・・」

地上を見下ろしていたうちの1人、お団子ヘアの少女はありえない人物の戦闘への参戦にフラフラすると、そのまま地面へと倒れてしまう。

「ヨザイネ!!大丈夫!?」
「もうダメかも・・・」

ヴァッサボーネが心配し、爪の先で彼女をツンツンとすると、彼女は真っ青な顔でそう答えるのがやっとだった。

「これがカミューニとゼレフが危惧してたことよ。まぁ、死んでないとは思ってたけど」

まるで自分には関係ないことのように言葉を発するアンクセラム。そんな彼女に対し、ヨザイネは起き上がると泣きながらしがみついた。

「アンクセラム様!!お願いだからオーガストだけでも・・・できればヴァッサボーネとかも蘇らせてもらえないですか!?」
「なんでさっきより要求が大きくなってるんだ?」

あまりにも絶望的な状態にこの戦争よりも前に死んでしまっているドラゴンたちの力も借りようと懇願し出すヨザイネ。しかし、最初の願いも通らなかったのに、もっと大きい願いなど通るはずもなく・・・

「だから私にはそんなことできないわ。諦めなさい」
「そこをなんとか~!!」

まるでおもちゃを買ってもらえなかった子供のようなリアクションを取る天使に苦笑いするしかないドラゴンたち。だが、この老人だけは決して慌てていなかった。

「案ずるな、ヨザイネ」
「オーガスト・・・」

泉から地上を見つめるオーガスト。彼の目に映るのは、最大の脅威にもっとも近い位置にいる黒髪の青年。

「お父さんなら・・・何か流れを変えてくれるはずだ」
















フィオーレとアルバレス・・・両国の魔導士たちの前に立ち2人の狂戦士の前に立ち塞がるのは、アルバレス帝国の皇帝であり、フィオーレで語り継がれる伝説の黒魔導士・ゼレフ。

「スプリガン・・・」
「俺たちに何か用?黒魔導士」

自分たちの前に現れたその人物を見ても、天海とティオスに焦りは見られない。それどころか、警戒心の欠片も感じられないのである。

「2人とも・・・もうやめにしないか?」
「この戦いをかい?」
「そうだ」

ゼレフの言葉に対し天海は眉間にシワを寄せる。確実に不服な態度を隠すこともしない彼を見たゼレフは、小さくうなずき言葉を紡ぐ。

「僕たちがもっとも脅威としていたアクノロギアは死んだ。これ以上、戦う意味がないんだよ」

ティオスと天海・・・最強のコンビによってその最強の伝説が終わりを告げたアクノロギア。ゼレフが妖精の心臓(フェアリーハート)を手にいれようとしたのは、過去に戻り力を付ける前のアクノロギアを倒すため。だが、この時代においてそれが成し遂げられたことにより、これ以上何かを成す必要がなくなったのだ。

「君たちのおかげで僕の目的は果たせた。だからもういいんだよ、2人とも」

諭すような声で2人を宥めるゼレフ。その言葉を聞いた彼らは目を合わせると、失笑を浮かべていた。

「スプリガン、あいにくそれは俺たちには関係ない」
「そう、俺たちは始めから君たち全員を殺すことを目的にしてるんだから」

彼らは元々ゼレフの命によって動いていたわけではない。ティオスは神になるために、天海はただ強いものと戦うために生きている。そのための足掛かりにアルバレスに攻め入り、ゼレフに取り入りイシュガルに攻めてきた。
それゆえに、ゼレフの目的が果たされ、戦う意味がなくなろうとも関係ない。自分たちの目的のために動くだけなのだから。

「そうか・・・なら仕方ない」

2人の回答がこうなることはおおよそわかっていた。ゼレフは最後の意思の確認として声をかけた。案の定断られてしまった彼は、魔力を解放し、2人を見据える。

「僕が相手をしよう」

鋭い目付きで2人を睨み付けるゼレフ。それを受けティオスも臨戦モードに入ろうとしたが、隣にいる男に制止されてしまう。

「ティオス、下がっていろ」

そう言ってティオスをその場に留めさせ前に出てきた天海。彼が1人で戦うことを察したティオスは、小さく笑みを浮かべた。

「あぁ。任せるよ、天海」

先ほどまでの戦いで魔力も肉体も疲労しつつあったティオス。それに気を使った形になった天海。彼はゼレフを見据えると、先ほどと同様に殺気を高めていく。

「僕が魔法を教えたんだから、ティオスと戦っておきたかったなぁ」
「悪いな、俺も寝てたせいで体が冷めてる。奴との戦いの前に温めておかなくてはな」

かつてレオンの才能を見抜き、氷の滅神魔法を教えたゼレフ。彼はその時のことを覚えていた。そのため、ティオスがアルバレスに攻めてきた時に真っ先に彼に気づき、仲間に引き入れた。だからなのだろう・・・ティオスを止められるのは自分しかいないと考えたのだ。
だがそれは天海も同じ。自分の求める最高の好敵手(ライバル)。それはティオス以外にこの世界をどれだけ探そうとも巡り会えることはない。それがわかっているから、この場は自分が出てきた。

「お前に俺を倒す術はあるのか?」
「難しいね。でも・・・」

黒い球体を作り出しそれを投じるゼレフ。天海はそれを何事もなかったかのように弾き飛ばしていた。

「僕がこの戦争を始めたきっかけだ・・・僕がケジメをつけなければならないよね」

そう言った彼の目に、迷いはなかった。天海は彼の意思を見定めていたのか、それを聞くと集中力をさらに高めていく。

ダッ

両者ともに全く同じタイミングで飛び出す。しかし、それはあまりにも実力に差がありすぎた。

ガンッ

「ぐっ!!」

敵の懐に理想的な形で入ったのは天海。彼はゼレフにアッパーパンチを食らわせ、その体を宙に浮かせる。

「この大陸最恐の黒魔導士ゼレフ・・・か」

体が浮いているため身動きが取れない青年の頬目掛けて回し蹴りを打ち込む。上から斜め下へと打ち落とされた敵に、全く反撃の余地を与えることはしない。

「お前程度の実力の人間なら、俺たちはいくらでも葬り去ってきた」

地面に叩きつけられたタイミングでさらに上からの踵落とし。わずかな反発によりそのダメージは増してゼレフに襲い掛かる。

「魔法があろうかなかろうが、武器を持っていようが罠を多く仕掛けた城を持っていようが関係ない。そいつが持っている実力・・・それこそが勝負を決するんだ」

一瞬の隙も与えることもなく次々にゼレフに攻撃を加えていく天海。あまりの猛攻にゼレフは反撃することも、回避することすら許されない。

「お前にはその実力も、王としての器もなかったようだな」

敵を再び宙に打ち上げ、今度は脇腹に蹴りを放つ。

「がはっ!!」

その威力は絶大で、ゼレフの肋から聞こえてはいけない音が響き渡った。

地面を削りようやく止まるゼレフ。彼のその呼吸は、あまりにも弱く・・・今にも事切れそうになっている。

「終わりだな、スプリガン」

彼の前に立ち見下ろす天海。ナツとの戦いで魔力も使いきり、怪我も負っているゼレフ。しかし、それを差し引いても、天海の力は圧倒的だった。伝説の黒魔導士を、反撃の余地も与えず叩き潰したのだから。

「天海・・・もう一度だけ言わせてほしい」
「何度言おうが結果は同じだ」

起き上がる力もないゼレフに拳を構える天海。彼が何をしようとしているのか見ていた全員が気付いた。それを阻止しようと走り出すものもいたが、それが間に合うことなど絶対にありえない。

右腕を引き、全身のバネを使い放たれた拳。それはゼレフの肉体目掛けて真っ直ぐに動く中・・・

ザシュッ

1人の少女が、間に割って入っていた。

「かはっ・・・」

口から吐血する少女。その少女をよく知るゼレフと妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士たちは、目を見開いていた。

「ほう・・・いつの間にここまで来てたんだ?」

実力者である自身でさえも気付けないほど気配を消していた少女を見て、天海は感心していた。だが、それも今となっては意味もないものだと知っている彼からすれば、すぐに興味が失せてしまうものでもある。

「・・・ごめんなさい・・・ゼレフ・・・」
「なんで・・・君が謝るんだい?メイビス」

自分を守ろうとして行動に出た少女の言葉に彼はそう答える。口から血液が流れ出る彼女は、目から涙を溢していた。

「私はあなたに死んでほしくなくて・・・ずっとあなたを愛していたのに・・・」

彼女の涙が彼の体に降り注ぐ。その彼女の体を貫いている男の腕は、地に伏せる青年の腹部も完全に貫いていた。

「私はあなたを守れなかった・・・」

ゆっくりと2人から腕を引き抜く天海。支えを失ったメイビスは、ゼレフに力なく覆い被さる。

「謝るのは僕の方だ・・・僕が原因を作り・・・誰も守ることすらできなかった・・・」

涙と血で汚れた彼女の顔に手を当てる。2人は先ほどの妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドでの出来事と今の状況を照らし合わせていた。

「いいのかな・・・僕みたいな人間が・・・こんな終わり方ができて・・・」
「いいんです・・・オーガストもきっとそれを願っています」

彼らにかけられたとされる矛盾の呪い・・・それは人の命を愛おしく思えば思うほどにそれを奪っていく。だがそれは、不死なる2人を解放する唯一の方法とも言える。

「あぁ・・・そういえば、君たちには大事なことを言わなきゃいけなかったね」

2人の愛が頂点に達し、その肉体ごと消滅しようとしていた時、突然ティオスが口を開いた。

「君たちがかけられたって言う"矛盾の呪い"。残念だけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()
「よせ!!レオン!!」

ことの真相をシリルから聞かされていたナツが彼の言葉を遮ろうとする。しかし、天海に一睨みされた瞬間、あまりの恐怖に声すら出せなくなっていた。

「どういうことだ?ティオス」
「矛盾の呪い・・・それは生と死を司るアンクセラムの怒りに触れた時にかけられると言われている。だが、ここで大きな問題が起きる」
「大きな問題?」
「そう!!それは魔力がない人間がその怒りに触れた場合だ!!」
「「「「「!!」」」」」

ティオスの言葉でこの場にいる多くの人間が気付いた。この呪いが本来ならありえないものだと言うことに。

「え?どういうこと?」
「全然話が見えてこないんだけど・・・」

ソフィアとウェンディは意味がわかっておらず、首を傾げている。それに彼女たちの隣にいたリュシーとシリルが答えた。

「アンクセラムの魔法は命を尊く思えば思うほど"魔法の歯止めが効かなくなり生あるものを死に至らしめる魔法"」
「でも、魔力は俺たちは魔導士しか持っていない。でも、生と死はすべての人間・・・いや、すべての生物にあるもの・・・その禁忌を破るのは俺たち魔導士以外にもありえることなんだ」

2人がまさしく自分のやろうとしていた解説をしてくれたことに笑みを浮かべるティオス。彼はゼレフとメイビスの元に近づいてくる。

「そう!!俺たち魔導士だけに"アンクセラムの呪い"が適応されるわけはないんだ!!じゃあなんでお前らがここまで生き、多くの命を奪ってきたか」
「やめろ・・・」

震えながらナツはそう呟くので精一杯だった。全く歯止めがなくなっているティオスがそんな声で止まるわけもない。

「お前たちの"呪いにかかった"という強い思い込みが、多くの命を奪ったんだよ」

とても信じられるようなことではないティオスの言葉に全員が声を発することができない。ティオスは2人を見下ろす位置まで行くと、さらに2人を絶望へと突き落とす。

「命を奪う呪いにかかったと思ったお前たちは心が乱れると魔力の歯止めが効かず、生あるものを死へと至らしめた。そしてお前たち自身は自殺細胞(アポトーシス)がうまく機能できずに死ぬこともできない。
だが、安心してくれ!!この自殺細胞(アポトーシス)は一度自覚してしまえば自然に活動し始める。お前たちの"偽りの呪い"など、あっさりと終わらせてくれるんだ」

死を待ち続けていたゼレフとメイビス。もし彼らが自分たちの愛で矛盾の呪いを打ち破り、この世から旅立てたと思えていたらどれだけ幸せだっただろう。
だが、ティオスはそれを許さない。体が消えるまでもうまもなくというところで自分がたどり着いた呪いの真理を告げることにより、彼らは絶望の淵に立たされ・・・そして・・・

「ごめんメイビス・・・僕が余計なことを言ったから・・・」
「あなたのせいじゃありません・・・私があの時・・・あなたの命を奪えていたら・・・」

後悔の念を抱えたまま、呪いの呪縛に蝕まれた2人の物語は終わりを告げた。
















「そんな・・・バカな・・・」

ガクッと膝をついたのは、たった今地上を後にした2人の魔導士の息子。彼の希望の星であった父も母も、天海とティオス、2人の前にあっさりと・・・それも、誰も幸せになれない形で葬り去られてしまったことに絶望していた。

「あらあら、これはちょっと可哀想ね」

そんな彼の横で他人事のように声を出したアンクセラム。そのあまりの無神経さにオーガストが彼女を睨み付けると・・・

ガシッ

その目には彼女の胸ぐらを掴んでいる少女の姿が目に入った。

「なぜそんなことが言えるんですか!?()()()()はあなたが作ったんでしょう!?その世界が終わろうとしているのに、なんでそんな飄々としていられるんですか!?」

目にいっぱいに涙を溜めて感情的になっているヨザイネ。ドラゴンたちもオーガストも、彼女の気持ちがよくわかる。しかし、生と死を司る神である彼女を怒らせてしまうと、このあとどうなってしまうかわからない。

「ヨザイネ、落ち着いて」
「まだ大丈夫だ。叔父さんもお前の息子もいるのだから」

ヴァッサボーネとオーガストがそう声をかけるが、彼女はその手を一向に離そうとしない。掴まれている神は、それすらも他人事のように無表情を貫いていた。

「ヨザイネ、あなたは何か勘違いをしているのよね」
「かん・・・違い?」

突然、彼女の手を払い泉に目をやるアンクセラム。彼女はティオスとシリル、2人を大きく映し出す。

「私は確かにこの世界を生み出した。でも、この世界でやることはこの世界に住むものたちに委ねている。もし意見が違うもの同士が対立していても、どちらかに肩入れすることはできないのよ」
「それは・・・わかっていますけど・・・」

オーガストを再び地上に送るため、生と死を司る彼女に助けを求めようとしたヨザイネに対して、非情とも取れる言葉。これにはオーガストもドラゴンたちも押し黙ることしかできない。

「私は何が起きてもどちらかは助けないし、咎めることもない」

あくまで中立であり、運命に従うスタイルを貫く神。今にも泣き出しそうなヨザイネはそれを黙って聞いていると、次に発せられる言葉に耳を疑った。

「例えば、お団子ヘアの"天使の力を持つ人間"が相手を道連れにするために強大な魔法を使った"死者"を連れて地上の誰かを助けに行っても何も言わないし裁きも加えない。それくらい私は傍観者でいることにしてるの」
「え・・・それって・・・」

その言葉を聞いたヨザイネの顔は満面の笑みになっていた。それを横目で見たアンクセラムはあくまで傍観を装うためか、無表情を貫いていた。

「ありがとうございます!!行ってきます!!」
「だから私は関係ないわ。何をするかはあなたが決めるしかないのよ」
「はい!!」

この上ない笑顔と返事で答えるヨザイネ。彼女はオーガストの手を握り立ち上がると、七頭のドラゴンたちを向く。

「ヴァッサボーネ、みんな、ごめん。私の魔力じゃあなたたちも連れていくとほとんど地上に滞在できないの。だから・・・」
「大丈夫だよ、ヨザイネ」

ヨザイネはナツたちを蘇らせる時に自らの生を差し出した。通常の彼女には死者を蘇らせる力などない。だから、彼女は自身の魔力の限り地上に滞在し、ティオスと天海を倒すための最善を尽くさねばならない。

本当はドラゴンたちも連れていければいいのだが、人数が多くなればなるほど1人辺りの滞在時間が限定されてしまう・・・彼女の苦渋の決断を、ドラゴンたちはよくわかっていた。

「我々はこの戦いよりも遥か昔に力を失っている」
「もう、私たちが出ていくべきではないわ」
「それに、アクノロギアですら歯が立たないものたちの相手など、できるはずもない」
「我々はこの戦いをこの場から見守ろう」
「あとは、君たちに任せる」

イグニールたちがそう言うと、言葉を発しなかったメタリカーナもヴァッサボーネも小さく頷いてみせた。

「オーガスト」

そのドラゴンたちの後ろから聞こえてきた青年の声に、オーガストは一瞬固まった。彼はゆっくりと振り返ると、そこにはたった今地上から姿を消した2人の姿があった。

「ごめんね、君のことに気付いてあげられなくて」
「お父さん・・・」

ゼレフから絶対に聞くことができないと思っていた言葉を聞き、涙腺が緩む。その彼の隣から駆けてきた少女は、オーガストの胴体にしがみついた。

「私たちのせいでこうなってしまったのに・・・何もしてあげられなくてごめんなさい」
「僕は父としても皇帝としても失格だね」

2人はすでに精神的に参っているのが手に取るようにわかった。オーガストはその言葉に首を振ると、抱きついているメイビスを引き離す。

「2人は自分たちの信じる道を進んできました。そしてここからは、私たちがその道を切り開いてみせます」

彼らに背を向けそう宣言するオーガスト。親としての役目を果たせなかったのに、グレることもなく立派に育っている彼の姿を見た2人は思わず笑顔になってしまった。

「ヨザイネ」

そして、今にも飛び出そうとしている少女に、最愛のドラゴンが声をかける。

「シリルたちをよろしくね」
「えぇ、もちろん」

水の竜のその言葉に背を向けたまま返事をしたヨザイネは、隣に立つオーガストと目線を合わせ、共に頷く。そして、彼らは地面に吸い込まれるようにその場から姿を消した。


 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
本当はゼレフとメイビスが殺されたところで次の話しに行く予定でしたが、あまりにも救いようがなかったのでここまで一気に書きました。
うまくいくと次で最終局面まで持っていけるかも?と期待をしながら書いてみようと思います。 
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