ドラえもん のび太の転生ロックマンX(若干修正版)
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目覚める力
造船所
「・・・・・・」
エックスは、黙ったままバスターでメカニロイドを破壊していた。
「・・・・・くっ!」
何度消そうとも現れる夢の光景。その拭いきれない不安がエックスを追い込んでいた。
『そこの甘ちゃんハンターに言っておいてやれ!俺と戦うのなら“鬼”となれとな!』
僅かながら残っているVAVAの言葉が胸に突き刺さる。
(“鬼”とは・・・・・・イレギュラーに堕ちろという事なのか?だが、イレギュラー化したら今までの俺を否定することになる。でも、あの時のVAVAの強さは異常だった。バスターは愚か、波動拳すら通じない・・・・・・・そんな奴とどう戦って行けと言うんだ!?くそ!)
エックスは、悩みながらも造船所の港近くにまでたどり着く。そして、イレギュラーの占拠している船へと乗り込もうとしたとき、何かが降りてくる気配を感じ足を止める。
「そこか!」
エックスがバスターを天井に向かって撃つと天井が壊れ、そこから仁王像の如くマンダレーラが降りて来た。
「よくぞ我の気配を読んだ!流石は偉大なるドップラー博士が見込んだレプリロイド!」
「お前もヴァジュリーラの仲間か!?」
「如何にも!我が名はマンダレーラ!ヴァジュリーラと共にドップラー博士に生み出されたナイトメアポリスなり!」
マンダレーラは、エックスと対峙しながら言う。
「我が宿命ゆえに戦ってもらう!いざ!」
(こんなことしている場合じゃないのに・・・・・)
エックスが焦っている中、マンダレーラは磁石のようなものを投げる。エックスはこれを回避するが磁石は壁に付着し、磁力でエックスを引き寄せる。
「なっ!?」
「隙あり!」
動揺しているエックスに対してマンダレーラはタックルをし、エックスを掴み上げると片手で振り回し、壁や天井に投げ飛ばす。
「グッ!?」
何とか着陸し直すもののエックスの体は既に疲弊しきっている状態だった。元々病み上がりだったこともあったがマンダレーラの見た目に劣らぬ怪力がかなりダメージを与えていた。
(まずい・・・・・・体がまだ思うように動けない・・・・・)
「どうした?ヴァジュリーラを引かせたお前の力はその程度か?」
マンダレーラは、エックスを見下ろすかのように見る。
「くっ!」
エックスは体に鞭を打ってマンダレーラに向かってバスターを放つ。しかし、スピードがヴァジュリーラほどない分マンダレーラの装甲は厚く、チャージされていないバスターは通じなかった。
「この程度の攻撃で我を倒せると思っているのか!」
マンダレーラはすかさずタックルを仕掛けてくる。エックスは、ヴァリアブルエアダッシュで真上に逃げると壁蹴りをしてマンダレーラの背後へと回りこむ。
「トルネードファング!!」
「ヌッ!?」
背後から飛んできたドリル型ロケット弾をマンダレーラは素手で受け止める。ドリルの回転を押さえている間にエックスは、マンダレーラの真下に接近する。
「何っ!?」
「昇龍拳!!」
手が塞がれたマンダレーラに向かってエックスは昇龍拳を喰らわせる。昇龍拳の威力にマンダレーラは天井に叩きつけられて落下して来るが致命傷にまでは至らず起き上がってきた。
「ヌウ・・・・・・・・・流石だな。」
「昇龍拳が効いていない・・・・・・」
エックスは、愕然としていた。
精神的に不安定になっていたこともあったが万全の状態での昇龍拳ならば致命的なダメージを与えられたのは確かだった。
VAVAの時の事もあってエックスは、手の震えが止まらなくなってしまった。
(俺は・・・・・・俺は・・・・・・・!!)
夢で見た光景が鮮明に甦る。
斬られた妹。
蜂の巣にされた恋人。
自分で殺した仲間たち。
「ハア・・・ハア・・・・ハア!!」
その光景は、エックスの恐怖心をさらに増大させた。
「だが、これ以上戦っては我に不利。ここで一気に蹴りを付けさせてもらう!参る!!」
マンダレーラは構えを取って先ほどより高速でタックルを仕掛けようとする。エックスは、恐怖心に取り付かれ我を忘れた。
「うわああぁぁあああぁぁぁぁああ!!!」
そこでエックスの意識は一旦途切れる。
一時間後
「反応が正しければ、エックスはここにいるはずだ!」
少し遅れてゼロたちは、ようやく造船所へ到着した。近くに散らばるメカニロイドの残骸を確認しながら一同は奥へと進んで行く。
「お~い~!のび太~!」
「迷子の迷子ののび太や~い。」
「のび太さ~ん!」
「お兄ちゃ~ん!」
「エックス~!」
お互い呼びかけながらエックスの行方を捜す。すると港の一歩手前の所で人影が見えた。
「お兄ちゃんだ!」
玉美は急いで向かって行く。
「お兄ちゃ・・・・・・あっ!?」
「どうしたの玉美ちゃん・・・・・あっ!?」
驚いた玉美を見て何事かと行ってみたら全員が唖然としていた。
「・・・・・・また、貴様らか。」
そこには、先のダムでの戦いでエックスと交戦したヴァジュリーラが立っていた。
「お前たち、下がっていろ!」
ゼロはサーベルを展開してヴァジュリーラの目の前に立つ。しかし、ヴァジュリーラの方はかなり苛立っていた。
「貴様らか・・・・・・・・よくもマンダレーラを破壊してくれたな!!」
「何?」
ヴァジュリーラの言葉にゼロは、思わずキョトンとした。よく見るとヴァジュリーラのすぐ後ろに無残にも破壊されたマンダレーラの姿があった。
「こ、これは!?」
「マンダレーラの連絡がなかったと思って来てみれば・・・・・・・貴様らが倒したとはな。」
「待て、俺たちはついさっきここに来たばかりだ。お前の相方のことなど知らん。」
「しらばっくれたことを・・・・・・マンダレーラの仇、ここで取ってくれるわ!!」
ヴァジュリーラは、ビームソードを展開して斬りかかろうとする。しかし、その直後、通信が入る。
「ぬっ!?」
ヴァジュリーラは、通信機に出る。
「はい・・・・・なっ!?あれがもうすぐ完成するというのですか!?それで引き上げを・・・・しかし、マンダレーラが・・・・・・・・・・わかりました。すぐに戻ります。」
ヴァジュリーラは、通信を切るとゼロたちを睨みつける。
「運が良かったな、貴様ら。残念だが我らの主であるドップラー博士の呼び出しで戻らなければならない。・・・・・・・だが、これだけは覚えておけ。貴様ら全員、必ずこの私自らの手で殺してくれる・・・・・・・」
ヴァジュリーラは、マンダレーラの亡骸を抱えるとジャンプをしてその場を去って行った。
「・・・・・一体何だったのかしら?」
「さあな、だが少なくともエックスが破壊したのは間違いないらしい・・・・・・・」
先ほどのマンダレーラの残骸を見てゼロは冷や汗をかきながら言う。
これまでエックスは多くのイレギュラーを倒してきた。
そのほとんどは、無暗に破壊せず急所を狙っているため、原型をほぼ留めているのがほとんどだった。
しかし、先ほどのマンダレーラを見る限り、明らかにこれまでのエックスのやり方とは思えないほどのひどさだった。
まるでVAVA・・・・・否、それ以上のイレギュラーと思えるほど。
「のび太の奴・・・・大丈夫なのか?」
「・・・・・信じたくはないがエックスがイレギュラー化したという可能性も否定できない・・・・・・もしそうだったら・・・・・」
「やめて!」
ゼロが言いかけたところをマーティが叫ぶ。
「ま、マーティさん・・・・・」
「お姉ちゃん・・・・」
「ハア・・・・・・ハア・・・・・エックスに限って、そんなことあるわけないじゃない。きっと何かの間違いよ・・・・・・」
マーティは、手を振るえさせながらも言う。その姿を見てゼロは、これ以上は言わない方がいいと判断して歩き出す。
「急ぐぞ。エックスを連れ戻さなくちゃな。」
潜水艦
「ハア・・・・・ハア!ハア!」
造船所に止められていた潜水艦の中でザリガニ型イレギュラー シザーズ・シュリンプァーは、恐怖に怯えた顔で何かと対峙をしていた。
「何なんだよ・・・・・・なんなんだよ、お前は!?」
「・・・・・・・・」
目の前に立っているのはエックスだった。
だが、その全身から赤黒い湯気のようなオーラが立ち上っていた。エックスは黙ってバスターをシュリンプァーに向ける。
「くそ!!」
シュリンプァーは、自慢の鋏でエックスを捕らえようとする。
「・・・・・・・」
しかし、エックスはまるでスローモーション映像でも見ているかのように残像を残しながら攻撃を回避してしまう。
「こいつ!これでもか!」
シュリンプァーは、エックスを捕らえようと必死に攻撃を続ける。戦闘用故に元より非常に好戦的かつ凶暴な性格である彼が恐怖を感じるなど通常あり得ない。そのシュリンプァーをエックスは、無慈悲にバスターで攻撃していく。
見た目からして明らかにチャージショットだが何かがおかしかった。
通常のチャージならば次の光弾が出るまでにわずかながらのタイムロスが発生するのだが今のエックスにその様子は見られない。っというよりはチャージをしているしぐさもない。
そして、このチャージショット・・・・・・・エックス同様に赤黒い湯気のようなオーラを放っていた。
チャージショットは、シュリンプァーの体を次々と撃ち抜いていき、動けなくした。
「・・・・・・・」
「た、助けてくれ!!」
今まで命乞いをしたことがないシュリンプァーは、迫り来るエックスに対してもう耐えられんとばかりに命乞いを始めた。
エックスは、まるで見下すかのような目をしてシュリンプァーを見る。
「・・・・・・・それで?」
「えっ?」
「お前は同じように命乞いをしたレプリロイドを助けたことはあるのか?」
「?!?」
「お前だってそうなんだろ?命乞いをしていたのに楽しみながら破壊したんだろ?それで自分がいざ同じ立場になった時助けてもらおうだなんて都合がよすぎるんじゃないのか?」
「あ、あぁ・・・・・・・・・」
シュリンプァーは、エックスの顔を見て絶望した。
その顔には慈悲もなければ、情けもない。
まるで地獄で罪人を裁く鬼のように見えた。
「あ・・・・・悪魔・・・・・・・」
「お前のような奴に生きる資格はない。」
エックスは、腰を落として大股で構えた後、片足を上げて拳を前に構えたまま、滑走するように残像を描きながらシュリンプァーの目の前にまで急接近する。
「うわああああぁあああああああ!!!」
「死ね。」
次の瞬間、シュリンプァーの視界は暗転して途絶えた。
そして、数分後
ゼロたちは、ようやく潜水艦の最深部へと到達した。
「エックス!」
ゼロはサーベルで扉を破壊して、中へと入る。
「エッ・・・・・!?」
ゼロは、目の前の光景を見て絶句した。
そこにはイレギュラーの残骸の目の前で赤黒い湯気のようなオーラを全身から発しているエックスの姿があった。
「・・・・・・エックス?」
「・・・・・・」
「!?」
一瞬、エックスから放たれた殺気にゼロは思わず後ずさる。
「お兄ちゃん?」
ゼロを通り越して玉美がエックスに近づいて行く。
「い、行くな!?」
ゼロは慌てて止めるが玉美はエックスに抱き着いた。
「お兄ちゃん!」
「・・・・・・・玉美?」
その瞬間、エックスからオーラが消え、普段と変わらない様子で玉美と接した。
「何処行ってたの?みんな心配していたんだよ?」
「えっ?・・・・・・」
エックスは目の前で破壊されているシュリンプァーの残骸を見る。
(このイレギュラーは一体・・・・・・でも、俺はマンダレーラを相手にして負けそうになっていたはず・・・・一体どうして・・・・・)
そんなエックスを見てゼロは、不穏な表情をする。
(さっきのエックスは一体何だったんだ?あのまるでシグマ以上のイレギュラーに感じたあの状態は・・・・・・)
「ねえ、早く帰ろう!」
「あ、あぁ・・・そうだな。ごめんな、心配かけて。」
エックスは玉美に引っ張られながらっ潜水艦を後にしていく。
「エックス、帰ったら爺にしっかり診てもらえよ。万全でない状態で出たからな。」
「あぁ、分かっているよ。」
「もう、あんな無茶しないでよね。」
「悪かったって。」
このとき、エックスは僅かながら感じていた。
自分の中に眠っていた「鬼」が目覚めたことを。
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