イマモ
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第四章
「そうですから」
「安心してええですか」
「出て来ても」
「めっちゃ驚きましたけど」
「急に出て来て」
「そう思います、ただ今も出て来るんですね」
中居の言葉は今度は感慨を込めたものになっていた。
「最近出なかったんですが」
「話をすればですか」
「出てきますか」
「そうみたいですね」
こう二人に言ってだった、初老の中居は二人にこれでと告げて仕事に戻った。二人は中居と別れるとだった。
また風呂に入った、そうしてサウナの中で話した。
「いや、ほんまな」
「まさかな」
「今も出て来るとか」
「その話したら」
「こんなことあるねんな」
「そやねんな」
「お昼でもな」
こう話すのだった。
「人がいそうな場所でも」
「あの時峠には私等以外おらんかったけど」
「出て来るねんな」
「そやねんな」
「いや、ええ勉強になったわ」
優子はここでしみじみとした口調で言った。
「今日のことは」
「妖怪のことでな」
「おるとは思ってたけど」
「人がいそうな場所でも出るねんな」
「そやな、それで夜に出るってな」
こうしたとこともだ、優子は言った。
「思ってたけど」
「それ私もや」
「お昼でも出るねんな」
「そやね、ほんまに」
実際にとだ、由紀も応えた。
「今後覚えとこな」
「このことはな」
「ほなお風呂から上がったら」
ここで由紀は優子に笑って話した。
「何する?」
「何するって旅館の中でおおっぴらにお酒飲めへんやろ」
実は二人はまだ高校生だが酒は飲む、煙草もシンナーも勿論ドラッグもしないがそちらは好きであるのだ。
「流石に」
「ほな何しよか」
「卓球しよか」
優子はこちらはどうかと提案した。
「今から」
「そうしよか」
二人で話してだった、優子と由紀は今度は卓球をはじめた。そうしてその遊びを楽しんだ。そうして明日に行く場所のことを卓球の後でお互いの布団の中で話してから寝た。もうその時には妖怪のことは楽しい思い出になっていた。覚えてはいても。
イマモ 完
2020・2・12
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