| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

野槌の生

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二章

「見事な学識を持った方であられた」
「日々修行に励まれていた」
「仏法もよく学ばれていた」
「ならばな」
「それならばな」
「きっと次の世はよき世であられるだろう」
「全くですな」
 こうした話をしていた、皆青空の来世はこれまでよりいいものだと思っていた。だが陸山だけはだった。
 安心していなかった、そしてだった。
 彼の来世がどうなっていたか気になっていた、そのことを気にかけながら一年が過ぎた時にだった。
 夢の中に。
 柄の取れた槌そのままの形をしていてだ、頭は口ばかりで他には何もない。そんな姿をしていてだった。
 その口には無数の歯がある、陸山は夢に出て来た彼の姿を見てそのうえで問うた。
「青空殿か」
「左様」
 その口で答えてきた。
「今はこの姿になっておる」
「野槌か」
 青空の返事を受けてからまた言った。
「その姿は」
「知っているか」
「山に棲み獣を襲って喰っておるな」
「うむ」
 まさにというのだ。
「そうしたあやかしであるな」
「そうじゃ」
「まさかな」
「人としての生の後はな」
「その姿になったか」
「拙僧が思うにな」
 青空はその野槌の姿から話した。
「まともな仏法の学び方をしてこなかった」
「生きている時の話の通りか」
「うむ」
 まさにというのだ。
「前世で名誉と利得ばかり求めてな」
「そのうえで仏法を学んでか」
「それでじゃ」
「死ぬとか」
「こうなったのじゃ」
「そうなのか」
「今では口ばかりがあり」
 そしてというのだ。
「他の生きものを襲って喰うばかりの生じゃ」
「完全に獣のか」
「その生になっておる」
 こう語るのだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧