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ロックマンZXO~破壊神のロックマン~

作者:setuna
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第六十六話 二人の先輩ロックマン

ヴァンの乱入によって誤解が解け、モデルAにモデルZXのデータが吸い込まれた途端に四人の脳裏にアルバートのレポートデータが展開された。

次の瞬間、四人の体が苦痛に襲われる。

「きゃあああああぁぁっ!」

「うあああああぁぁっ!」

「ぐあっ…な…何だ…これは…!?」

「きゃああっ!な…何…これ…!?」

アッシュとグレイは苦痛に絶叫し、絶叫はしなかったが突然のことに動揺するヴァンとエール。

「共鳴している…!?奴のライブメタルのせいか!」

「気をつけて!エール!彼女達のライブメタルからデータが流れこんでくる…!」

モデルXの声が聞こえるが、それどころではない。

《コードAC196からTC2343までを解放、レポートデータ展開》

《これが最後のプロテクトとなる。計画の全てを知った君は、究極のライブメタルを手にする権利がある。各地で眠るモデルV達は、人々の恐怖を喰らいつつ覚醒の日を待っている。そして、全てのモデルVが一つとなった時…究極のライブメタルが誕生する。その名はウロボロス…ウロボロスを手にした者こそが、人と機械を超える進化の果てにいる者…私が追い求める究極のロックマンとなるのだ。我が名はマスター・アルバート、世の理を定める三賢人の一人にして…新たな世界、新たな命を創造せんとする者。いつの日か、私の研究が進化の地平を切り開かん事を願う》

レポートデータの展開が終わるのと同時にヴァンを除いた全員の変身が解け、四人は膝を着いた。

「「ウロボロスと究極のロックマン…それがアルバートの計画…!」」

「これが…他のロックマンを倒すと展開されるアルバートのレポートか」

アッシュとグレイから前回のレポートの内容を全て聞いていたのでヴァンは混乱することはなかった。

しかしエールからすれば突然苦痛に襲われてわけの分からないレポートを見せられたので混乱している。

「今のは…?」

「マスター・アルバート…レギオンズ三賢人の一人でモデルVを作った男だ。そして、今のイレギュラーの大量発生は奴が原因なんだ…とうとう今までの黒幕が動き出したんだよ」

ヴァンの説明を聞いてエールの表情が引き締まり、最後の戦いが近付いていることを悟った。

「そうか…やっと分かった…何でオイラが作られたのか、何でアッシュとグレイが、オイラで変身出来るのか…」

それを聞いたアッシュとグレイがモデルAに振り返った。

「モデルA…?今、何て…?」

「モデルA!?思い出したのか!?僕の事も知っているのか!?」

自分の正体が分かるかもしれないと言う期待からか、モデルAに詰め寄るアッシュとグレイ。

「そ…それは…」

言いにくそうにするモデルAだが、直後にモデルVが戦いの衝撃に耐えきれずに落下してしまう。

「しまった…!モデルVが」

「戦いの衝撃に耐えきれなかったか」

モデルXとモデルZの言葉にエールとヴァンは表情を顰めたが、アッシュとグレイはモデルAを問い詰めていた。

「教えて!モデルA!あんた一体何を知っているの!?」

「モデルA!僕は一体誰なんだ!」

「ごめんよ…今は…まだ言えない…」

「「モデルA!」」

モデルAは答えようとはせず、アッシュとグレイは更にモデルAに詰め寄りそうになったが、エールとヴァンに止められた。

「止めなさい!ライブメタルが可哀想よ。今はそれどころじゃないでしょ?こうしてる間も、モデルVはイレギュラーを増やしているわ。また近付くのが大変になる」

「モデルAにも話したくない理由があるんだろ、無理やり聞き出すような真似は止めるんだ。相棒の意志を無視するようならお前達もモデルH達を利用しているヘリオス達と何も変わらないぞ。今、俺達がやらないといけないことは何だ?」

「…………」

「マスター・トーマスに言われたようにモデルVをアルバートの手に渡らないように回収すること…」

エールとヴァンの言葉にグレイは沈黙し、アッシュは自分達がここに来た理由を呟く。

「ここから先は俺とエールで行く。お前達はここで頭を冷やしていろ…エール、手を貸してくれ」

「勿論、アタシに遠慮なんかしないでよ」

「ありがとな…アッシュ…グレイ…お前達の正体っていうのは、相棒の意志さえ無視してまで知らないといけないことなのか?お前達はお前達だ。わけの分からない“過去”や予想のつかない“未来”よりも、今必要なのは“現在(いま)”じゃないのか?」

アッシュとグレイを残してヴァンとエールはモデルVの元へ向かっていった。

「それにしても…昔と変わらないなエール」

「む、どういう意味よ?アタシだって髪を伸ばしたり背が伸びたり大人になったんだからね!」

「ああ、大人になったよ。昔のお前ならきっとアッシュとグレイをきつく怒鳴っていただろうしな」

四年前のエールならば、先程のような対応ではなく、感情的になって怒鳴っていただろう。

あのような大人の叱り方が出来るようになったことに時の経過を感じた。

「……あんたが旅に出てから、運び屋にも新しい後輩が来たのよ…アタシ達のような子もね…そういう子と接するには感情的になるのは駄目なのよ。」

「ああ、分かってる。俺が言いたいのは…昔と変わらず優しいままでいてくれたってことだよ。大人になって優しさに磨きがかかったって言うか」

「ふふ、ヴァンは落ち着いた大人の男性って感じになったわね。でも根っこの方は変わってないのは分かるわ」

「そうか?とにかくモデルVを破壊してアッシュ達の所に戻るぞ」

「ええ」

ヴァンとエールがそれぞれアルティメットセイバーとZXセイバーでイレギュラーを薙ぎ払いながら採石場を駆け抜けて行った。

一方、残されたアッシュとグレイは地面に座って二人の帰りを待っていた。

二人に言われたことで、少しだけ冷静になれたアッシュとグレイは気まずそうにしているモデルAに振り返った。

「アッシュ…グレイ…オイラ…」

「さっきはごめんね、モデルA…アタシ、どうかしてた。ヴァンの言う通りだわ。アルバートにとってアタシがどうだろうと、アタシはアタシだもの、知らない過去なんてどうでもいい。これからのアタシの物語はアタシが作るんだ」

「僕もごめん、僕が何者かとか、そんなのは関係ない事だったんだ…僕はこの力で…僕を助けてくれたアッシュやみんなのために戦いたい。モデルA…僕達の事は話したくなった時に話してくれれば、それでいいよ」

程無くして採石場全体が震えたかと思えば、しばらくしてヴァンとエールが戻ってきた。

「モデルVは?」

「跡形もなく破壊した…メカニロイドと融合したから回収は出来なかった…頭は冷えたか?」

グレイの問いにヴァンはさらりと答える。

尤もヴァンは依頼に関係なく、モデルVを元から破壊するつもりだったのだ。

口にするつもりはないが、レギオンズはアルバートがいた組織なのだからモデルVを安心して渡せるわけがない。

「そっか……頭なら冷えたわよ…ごめん」

ヴァンの考えなど知らないアッシュは納得すると、先程の件を詫びた。

「僕もごめん」

「ふふ、二人共意外に素直なんだね」

「“意外に”は余計よ」

「…馬鹿にするなよ」

からかわれたと思ったのかアッシュとグレイはむっとなるが、エールからすれば怖くもなく、寧ろ可愛いものである。

「それにしても、ヴァンの幼なじみだっけ?あんたは何でモデルVと戦ってるの?」

「あのねえ、初対面の相手に“あんた”はないでしょ?後、人を指差さない。アタシの名前はエール、この青いライブメタル…モデルXのロックマンよ。こっちの赤いのはモデルZ、これはアタシのじゃなくて大切な人の預かり物なの…ヴァンから聞いたけど、アタシも君達と同じ。わけの分からないうちに戦いに巻き込まれてね、イレギュラーやモデルVとの戦いで大切な人をたくさん失ったの」

自分を指差して尋ねてくるアッシュに溜め息を吐きながらかつての過去を語るエール。

「復讐…か」

「ううん…アタシ達のように苦しむ人を増やしたくないだけ、だから決めたの。運命のゲームを終わらせるためにモデルVを全て破壊しようって、みんなを守るためのロックマンになろうって決めたんだ………お節介かもしれないけど、一人の人としての、ロックマンの先輩として、君達に一つアドバイス…君達の運命は君達だけが決められる。正体が何者でも関係ない、君達の力は、君達だけの未来を掴む力なんだよ」

「僕の運命…僕だけの未来…」

「ヴァンにも言えるけど、よくそんな台詞を真顔で言えるわよねぇ…でもそうね…ありがと」

「あ、そうだ。君達にこれをあげるわ」

エールが渡したのは緑色のカードキー。

「「これは?」」

「そのキーで行けるエリアにフォルスロイドの反応があるわ。後でアタシが調べようと思ってたんだけど、君達が持っていた方が良さそうね。アタシ達は仲間のところに戻るわ、奪われたライブメタル…モデルH達を追わなきゃ、お互い、同じ敵を追っているなら、またどこかで会うかもね…さあ、ヴァン。アタシと一緒にガーディアンベースに……あれ?」

ヴァンをガーディアンベースへと連れていこうとしたのだが、幼なじみであるためにエールの考えなど気付いており、ヴァンはこの場から去っていた。

「ヴァンならお前が語ってる間に外に出ちまったぞ」

「何ですって!?またあいつは勝手に~っ!今度こそ逃がさないんだから!!」

モデルAの言葉に今までの大人びた表情は失せ、エールは顔を真っ赤にして飛び出していった。

唖然となる二人だったが、トーマスから通信が来た。

『ミッションご苦労だった。回収出来なかったのは残念だが…モデルVの一つが破壊された事で、アルバートの計画にも狂いが出ているはずだ。何とか、このチャンスに奴を追い詰めたいのだが、残念ながら手掛かりはない。新しいキーを使ってまだ行っていないエリアへ行けば何か分かるかもしれん。頼む、アッシュ君、グレイ君。後は君達だけが頼りなのだ』

トーマスからの通信が切れ、このままここにいても何なので、採石場を後にするのであった。

そして採石場を後にしたアッシュとグレイはヴァンがどこに消えたのかと、周囲を見渡したがどこにもいないことに疑問符を浮かべた。

「ヴァン、どこにいったんだろう?」

「エール、凄い形相だったからねぇ。きっとどこかで隠れてやり過ごしてんじゃない?」

「化け物みたいに強いけど幼なじみって奴には弱いんだな。ある意味最強のロックマンってエールじゃないのか?」

モデルAの言葉に思わずアッシュとグレイは吹き出した。

「言えてる~っ!」

「確かに…」

「楽しそうだな」

「「「え?」」」

背後からの冷たい声に全員の表情は強張るが、次の瞬間に頭に衝撃が走り、目の前が一瞬真っ白になった。

「「~~~っ」」

「ア、アッシュのパンチより強烈だぜ…」

頭を抱えて蹲るアッシュとグレイ、そしてフラフラしているモデルA。

「少し姿を消していただけで良くそこまで言えるな」

「……な、何で姿を消してたんだ?」

「…これ以上エール達と一緒にいたら名残惜しくなるからな……会いたい奴には会ったし、話したいことも話しておいた。最後のレポートに関してもエールがプレリーに話してくれるだろ」

「…別に一緒にいてもいいんじゃない?」

「別行動をしている方が色々と動きやすいからな。プレリーの…あいつの所に帰るのは全てが片付いてからだ。アッシュ、グレイ。俺は俺なりにアルバートの居場所を探ってみる。お前達は他の場所を頼んだぞ」

ダッシュでこの場を去るヴァン。

取り敢えず頼りになる先輩が味方でいてくれるという事実はアッシュとグレイにどこか安心を与えた。

「あー、そうだ。モデルZXのデータをコピーしたからモデルZXに変身出来るようになったぞ。特殊な移動能力や属性は持たないけどエネルギーの燃費や攻撃力、セイバーとバスターのおかげで攻撃の範囲が広いからどの状況でも問題なく戦えるぞ。セイバーのチャージ攻撃はチャージセイバー、バスターのチャージ攻撃はチャージバスターだ。能力差はほとんどないけど、使える技が違うな、アッシュは滞空技のライジングファング、高い所にいる敵に有効だ。正面に衝撃波を飛ばすから前にいる敵の足止めも出来るぞ。グレイは対地技のエナジーフィシャー、自分の真下にいる敵に攻撃出来る技なんだ。威力が低いけど周囲に瓦礫を吹き飛ばすから囲まれた時にも使えるかもな」

ようするに他のロックマンよりバランスが良く、状況を選ばずに戦えるオールラウンダーと言うことなのだろう。

使い勝手の良い変身が出来るようになったことは素直にありがたいと思う。

実質敗北のようなものだが、エールがヴァンに注意が向いたことで戦意喪失したと見なされたのが助かった。

早速、アッシュとグレイはモデルZXに変身すると、ZXセイバーを数回振ってZXバスターの試射をする。

「うーん、かなり使い勝手が良さそうね。おまけにこの髪みたいなコードって本当に髪のようだわ。結構お洒落なロックマンなのね」

試しに触れると本当に髪の毛のように感じるくらい上手く再現されている。

「アッシュ、このカードキーを使って早速行ける所に行こう」

「まあ、待ちなさい。急いでは事を仕損じるわ…まずは腹ごしらえよ」

良く良く考えれば最近はまともな休息を取っていない。

食事だってほとんど携帯食で済ませているし、たまには温かい物が食べたい。

「……そうだね」

グレイも同意見なのか、アッシュに何も言わずに頷いた。

「さーて、今日は何を食べようかしら」

今まで頑張ったのだから今日くらいは贅沢してもいいだろう。

今日のハンターキャンプの食堂のメニューは確か…。

オムライス。

カレーライス。

パスタ系。

ラーメン系。

日替わり定食…etc。

デザートにアイスなども頼むのもいいかもしれない。

二人は吸い込まれるようにハンターキャンプの食堂へ向かっていった。

そして時間は少し戻り、ガーディアンベースに戻ったエールは不機嫌そうな顔で司令室であるブリッジに入り、上機嫌のプレリーに迎えられた。

「嬉しそうだね」

「そう?久しぶりにヴァンに会えたからかしら?」

そうやって頬を微かに赤らめながら言うプレリーは同性のエールから見ても素直に可愛いと思った。

「ヴァンったら、ここに来たんだからそのまま残れば良いのに」

「一人の方が動きやすいようだから仕方ないわ」

「プレリーはヴァンに甘すぎ!もう少し厳しくしないと!!」

「う~…でも…」

頭を抱えるプレリーにエールは溜め息を吐きながら端末を弄ってハンターキャンプにいるアッシュとグレイの二人の姿をモニターに映す。

「あ、映った映った」

「この子達がヴァンの言っていたロックマンなのね」

モニターに顔を向けるプレリーの言葉にエールは頷いた。

「ええ、頼りになりそうな子達だったわ」

そして二人がトランスオンでモデルZXに変身した時、司令室がざわついた。

「これは…」

「アタシも初めて見た時は驚いたわ、まさかダブルロックオンまでコピー出来るとは思わなかったけ…」

「エール?」

不自然に言葉を切ったエールにプレリーが疑問符を浮かべるが、エールの視線を見るとモデルZXに変身したアッシュに向けられていた。

やはり自分の使っている力をコピーされると言うのは複雑なのだろうか?

いや、それならグレイにも視線が向けられているはずなので、良くモニターを見てみるとアッシュの一部分をエールが凝視していることに気付いて赤面した。

「<●>ω<●>…あの子…見た目からして多分、アタシがロックマンになったのと同じくらいの年齢だよね…」

「え、ええ…多分」

エールの表情が怖く、プレリーの表情が引き攣っているが、エールは構わずアッシュの一部分を凝視する。

「<●>ω<●>…あの時のアタシと同じくらいなのに何なのこの差は?黒幕の…アルバートにとって特別だから?体も特別だって言うの?」

「い、いや…それは個人差だと思うけど…あ、あまり気にしない方が良いわ。人それぞれだもの」

「<●>ω<●>…ねえ、プレリー…プレリーが言うと嫌味にしか聞こえない」

出るところは出てて、締まるところは締まってるプレリーが言うとエールからすれば嫌味にしか聞こえない。

「なあ、エール?何を見てんだよ?」

「<●>ω<●>…うるさい、あんたには関係ないわよ」

運び屋時代からの悪友であるシュウを一蹴するが、シュウがモニターを見ると、エールの不機嫌な理由を察したようだ。

「ああ、胸か。気にするなってエール、サイズがどうだろうとジルウェさんはそんなの気にしないって!あの子が肥えた土地だとすればお前は枯れた土地だからどうしようもない…イギャッ!?」

シュウの顔面にエールの鉄拳が炸裂し、エールは鬼のような形相でシュウの頭を鷲掴み、そのままブリッジを後にした。

残されたプレリー達は連れていかれたシュウの冥福を祈るばかりである。 
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