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曇天に哭く修羅

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第三部
  気付き

 
前書き
_〆(。。) 

 
日が過ぎるのは早い。

明日は【領域内戦争】の決勝戦。

【龍帝学園】と【刻名館学園/こくめいかんがくえん】は予想通り勝ち上がった。

その日の夜。


「どうした?」

「あ、立華さん」


紫闇と《佐々木凜音(ささきりんね)》が話す。


「何で立華さんは戦ってるんですか? なぜ誰かに勝とうとするんですか?」


紫闇は彼女の兄、《佐々木青獅》が夏期龍帝祭で戦う前に言ったことが浮かぶ。


『き、君はどうして、ここに居るの? どうして、戦っているの?』

「佐々木にも同じことを聞かれたよ」

「お兄ちゃんが?」


紫闇はその時の答えを聞かせる。

英雄になりたい夢を、輝きたいという願望を諦めたくない。


「そう言った。俺は光り輝く存在に憧れて自分もそうなりたいって思う一般人。だから闘争に赴く理由も珍しくない。小さい頃からの夢を叶えたかったんだ。でも今は違う」


紫闇の顔に真剣さが宿る。


「強くなりたいと思うのは変わらないけど、それだけに拘り過ぎていたことにやっと気付いた。俺は大事な人を悲しませてたんだよ」


聖持とエンドの顔が脳裏に浮かぶ。


「俺は佐々木と同じになってた。強くなる代わりに誰かとの繋がりを捨ててたんだ。そのせいで一人の時間が多くなってたけど全然気にならなかった。それが当たり前なんだって無意識に行動してたんだよ」

「強くなる為に大切な人を捨てる。私は絶対に認めません。間違っています」


紫闇を見る凜音の目には怒り。

なぜ紫闇が強くなれたのか。

それは捨てただけではない。

《永遠レイア》と再会し、焔に助けられ、弥以覇に弟子入りを認められたから。

しかし彼等だけではない。


「お兄ちゃんは何もかも捨てないと前に進めない、強くなれないと言ってたけど違うと思う。人は誰かに支えられて前に進む生き物だと思うから。支えてくれた人達まで捨てるなんておかしいですよ」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


凜音の言葉を聞いた紫闇は想起した。

自分が黒鋼の修業に耐え切れず心が折れそうになった時、幼馴染みの《的場聖持》が紫闇に対して言ったことを。

聖持と紫闇が初めて逢った頃に聖持が周りに馴染めず苛めに遭っていたこと。

それを紫闇が助けたこと。


『あの時の紫闇は輝いて見えた』

『ふざけんなよっ! どいつもこいつもっ! 俺の幼馴染みを馬鹿にしやがって!』

『弱くたって俺にはヒーローみたいな存在だったんだよ。そんな紫闇が馬鹿にされるだけの人生を送るなんて我慢できるか……!』

『俺は俺のことを助けてくれたお前が駆け上がってヒーローになる姿が見たいんだよッ!!』

『紫闇なら出来る。誰が否定しても俺が信じる。だから自分の可能性を諦めないでくれ』


「ああ……そうだ。聖持が居なかったら俺は修業に耐えられなかった。何で忘れてたんだ。何で気付かなかったんだろう」


師匠になってくれた焔や聖持のような友だけでなく、《江神春斗(こうがみはると)》のように対抗心をもたらしてくれる強敵もそうだ。

応援してくれるファンのように紫闇が顔も名前も知らないような人も同じ。


「凜音の言う通りだよ。誰かが支えてくれるから人は前に進めるんだ。俺は色んな人の力を貰ってやって来た。佐々木だって同じはず。その支えになったのはきっと」


紫闇は凜音を見る。


「?」

「凜音のお陰で間違いに気付けた。お陰で何の迷いも無い。自分が正しいと信じて戦える。今までの信念は捨てることになったけどな」


凜音は困惑していた。


「勝つよ。そしたら佐々木は凜音と元の関係に戻れるだろうからな」


紫闇はマンションの自室に戻る。


「ん、着信か」


《矢田狂伯/やだきょうはく》からだ。


「やあ立華君。突然なんだけど良いかな?」

「構いませんが」

「佐々木凜音の身柄をこちらで預かった。俺の要求は領域内戦争決勝での敗北だ。申し訳ないとは思うが宜しく頼む」
 
 

 
後書き
_〆(。。) 
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