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踊る犬と腐りきった家族

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第三章

 きなこは最初出来なかったが徐々に踊りを身に着けていった、彼はそのきなこを見て妻に夕食の時に話した。
「きなこは筋がいいぞ」
「そうなの」
「ああ、最初は出来なかったがな」
「やっぱり最初はよね」
「難しいな、しかしな」 
 それでもというのだ。
「今は違うぞ」
「出来てきているのね」
「ああ、このまま行けばショーにも出せる」
「それであなたと一緒に踊れるのね」
「いける、きなこ頑張っていくぞ」
「ワンッ」 
 きなこは部屋の中で自分の食事を食べていた、武者小路は教える時は厳しいが決して暴力は振るわない。そしてしっかりと優しく世話をするのでだ。
 きなこもすっかり彼に懐いていた、それで今も彼の言葉に明るく鳴いて応えた。そしてだった。
 きなこはダンスのショーに武者小路と共に出て見事なダンスを披露した、それは大好評でありネットでも動画で拡散された。
 きなこは忽ちのうちにネットでも評判の人気者になった、だが。
 明子はこの時祖父母と共に家にいた、休日だが祖父から話を聞いて憤慨して来たのである。それで祖父に言った。
「あのね、幾ら何でもね」
「非常識過ぎるな」
「何できなこを返せよ」
 怒った顔での言葉だった。
「自分達が捨てたんでしょ」
「それでもそう言ってきたんだ」
「よくうちの住所わかったわね」
「何でもご近所、この台にいた人らしいわ」
「それで噂を聞いてなのね」
「わしが今きなこを飼っているとわかったらしい」
「そういうことね」
「言っておくがきなこはわしの家の子だ」
 祖父は孫娘に言い切った。
「何があっても渡さん」
「そうしてね」
「ええ、今からその家族が来るけれど」
 妻も言って来た。
「絶対にきなこを渡さない様にしましょう」
「当たり前だ」
 武者小路は妻にも話した、そしてだった。
 その一家が来た、家族の苗字は辻元といった。口髭を生やした中年男と中年女に小学生くらいの男の子の三人だったが。 
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