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GATE ショッカー 彼の地にて、斯く戦えり

作者:日本男児
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第14話 ようこそ!ショッカー世界へ!! 

 
前書き
お待たせしました!
更新が遅くなり申し訳ございません。

それと誠に勝手ながら作中の対日穏健派の目的を「日本と帝国を影から支配する」に変更します。
私のミスで対日穏健派の目的とショッカーの行動に矛盾が生じてしまい、申し訳ございません。 

 
『帝国主要都市を解放!!』
『我が軍、時代遅れの帝国軍を圧倒!!』



今日もショッカー世界では対帝国戦での快進撃を伝える勇ましい記事がズラリと並んでいる。主要都市とは間違いなくイタリカのことだろう。

どの記事も非常に分かりやすく、大衆の心に訴えかけるようなものばかりである。




ショッカーが異世界に逆侵攻し、日本と接触する前までショッカーは捕虜や占領地の住民から帝国の内情、種族構成、政治体型などを聞き出し、調査していた。

その結果、判明したのが排他主義的ともとれる帝国のヒト至上主義や覇権主義だった。

帝国の所業にはさすがのショッカーも耳を疑った。第一皇太子が自身の気分で亜人種の国を攻め滅ぼしたり、気に食わない属国があれば軍事力をちらつかせて恫喝する。


ショッカーから見て帝国がいかに残虐で恐ろしいか、そして今回の戦争目的がいかに正しいかを伝えるプロパガンダにこれ以上いい材料はなかった。


いつの時代でも政治において重要なのはどれだけ心に広く響き渡る「ストーリー」を作れるかどうかである。民衆とは往々にして「目の前の事実」に興味はなく、それよりも心に響くセンセーショナルな言葉を含んだ「ストーリー」によってこそ動かされる。


そして『異世界で圧政を敷く帝国から民衆を解放する為に決死の戦いをするショッカー』という非常に分かりやすく心に響くストーリーを目にした人々は『銀座動乱』での一般市民に対する虐殺も相まって帝国を『悪の権化』、皇帝モルトを『邪悪なる愚帝』として見るようになり、それに対して戦いを挑んでいる防衛軍を『正義の官軍』として見ていた。




しかし、ちょうどイタリカ戦が行われた頃からショッカーの想定以上に帝国に対する憎悪や敵意が増長されていた。
その中には異世界人の人間性を否定する意見があり、政府は正直に言って手を焼いていた。



というのもここでも対日強硬派が一枚噛んでいたからだ。



対日強硬派は日本世界と帝国、両方の世界を武力で征服することを掲げている一派であるため、帝国に対する"より大規模"な攻勢を求めたがっているのだ。



その中で彼らが市民に言うのは決まって『偉大なる大首領様の子供たる優秀なる我々は日本・帝国という劣等異世界を征服し、殲滅すべき』だとか『ショッカーに仇なす敵は帝国人だろうが日本人だろうと追いつめて殺せ』といったようなもので、さすがのショッカーから見ても過激だと思うようなものばかりであった。


これは元々、ショッカーが創設時から唱えていた『大首領に選ばれた改造人間がその他大勢の人民を率い、支配する』という超エリート主義の少数支配を肯定する為の選民思想から派生したものだ。

彼らの活動を規制しようにもショッカーの思想から派生したものなので『危険思想扇動罪』はおろか『反ショッカー罪』にすら問えない野放しの状況が続き、対日強硬派の多いネオショッカー州やクライシス自治区で支持を得つつあった。


特地のミラーワールドへの移民が決定してから次第に彼らは勢いを失ってはきたが委員会の有力者の3分の1が対日強硬派なのを考えれば油断はできない。
 
派閥としての生き残りをかけて市民レベルでの扇動により力を入れる可能性もある。  
 

このままではショッカー世界内部で軋轢が生まれ、円滑に移民を行うことが難しくなる。それに帝国を恨むのは結構だが異世界の人民まで憎悪されてはこれからの占領政策や異世界への植民・親ショッカー化に支障がでる。


そこで政府は千堂の保護したコダ村避難民の一部をショッカー世界に招待し、友好的な様子を見せることで民衆の憎悪の矛先を『帝国と異世界人』から『帝国政府と帝国軍』に変えさせることを決定した。



少しずれるが、対日穏健派が日本とあまり事を構えたがらないのにはこれらの事情が多少、関係している。それにようやく落ち着きを見せた対日強硬派を再び増長させない為にも日本世界と戦うことで異世界人に対する憎悪をこれ以上、蔓延させたくないというのが本音であった。







「門の向こうに行くの!?」


「そう、こっちの世界にも『友好的』な人や種族がいることを伝えるためにね」


ある朝、オ・ンドゥルゴ基地の一室で千堂はテュカやレレイにこれからショッカー世界へ行く旨を話した。


「へぇ、門の向こうってショッカーの世界なんだよね?楽しみー」




テュカは自分を救ってくれた兵士達の世界がどんなところなのか想像し、わくわくした様子を見せた。



「ねー、私はー?」


ロウリィが千堂に尋ねる。自分だけ仲間外れにされてるんじゃないかと顔に書いていた。


「あー、勿論、ロウリィも招待されてるぞ」
 

「♫」


千堂の言葉を聞いてロウリィはふと嬉しそうな顔をして鼻歌を歌いながら自身のハルバートを磨き始めた。
余程、嬉しかったのだろう。


「センドウはどうするの?」


「俺もついていくよ。尤もその後もしばらく向こうに残ることになりそうだけどね」


千堂は彼女らの"付き添い"が終わった後、対日使節団の事前打ち合わせの為にショッカー世界に留まらなければならない。そしてそのまま日本国へと向かうのだ。
 

まさにハードスケジュールである。


その場に居合わせた部下達はそのことを知ってか千堂に対して純粋に哀れみの顔を向けていた。


((大尉、ご愁傷さまです………))






数十分後、千堂達はショッカー世界へと向かう準備を終え、門が収容されているドーム状の建物の前に集まっていた。




「ねェ、これ外しちゃダメェ?」


ロウリィはハルバートの刃に巻きつけられた布を千堂に見せつけながら文句を言う。


「ダメに決まってるだろ!向こうは聖地だぞ!それに俺達の世界じゃ武器の取り扱いには厳しいんだ!そんな刃物むき出しのままじゃ捕まるぞ!置いていって欲しいくらいだ!」


「神威の象徴を置いていけるわけないじゃない!!」


「じゃあ言うことを聞け!!」


千堂は正直、このロウリィへの注意だけで疲れ果てそうだった。そんな中、ふと1人足りないことに気づいた。


「あれ?加頭はどこにいった?」


千堂が辺りを見回すと1台の装甲車が近づいてきた。
運転していたのは加頭だった。



「遅れてすみません!」


「遅いぞ、どこに行ってた?」


「本当にすみません、ゾル大佐から急遽、新たな客人をお連れするようにいわれまして」 


「新たな客人?」



後部座席の方に目をやると意外な人物が乗っていた。



「………で、お姫様達も来ると……勘弁してくれ」



そう、後部座席にいたのはピニャとボーゼスだった。千堂はボーゼスに殴られたことを思い出し、バツが悪そうな顔をする。



「…まさか連れて行くのか?」


「はい、捕虜の返還や今後の講話の為に我々の世界のことを知りたいのだそうです」


「よく上層部が許可したな」


ピニャは帝国、つまりショッカーの敵国の皇女である。常識的にそんな危険人物を"本国"、それも政治・経済の中心地であり、大首領様のおわす聖地 日本エリアに連れて行くのはどこか不安があった。



「全く、政治ってのはよく分かりませんね」


加頭がやれやれと言った様子でため息がちに言った。そしてピニャの乗っている後部座席のドアを開けた。2人はゆっくりと降りる。



「センドウ殿、よろしく頼む」


「ハァ、それでは行きましょうか」


千堂はピニャにむかってあからさまに面倒くさそうにため息をつくと踵を返し、レレイ達と共にドームの中へと入っていった。


一方、ピニャとボーゼスはこれから『敵国の首都』に乗り込むとあって息を呑む。


「………殿下」


「ウム…………」



(ショッカーの統治する世界…いかなる場所か…)







一行がオ・ンドゥルゴ基地内の門を収容されているドームの中に入るとそこで科学戦闘員らによる身体検査を受けた。


異世界由来の未知の病原菌やウィルスに感染している可能性もあるので検温は勿論、検尿や血液検査などありとあらゆる検査が念入りに行われた。
何かしらの病原菌を持ち込まれてパンデミックでも起こされたら戦争どころの騒ぎではなくなるからだ。


またこの時、ピニャとボーゼスが注射や見慣れない医療機器を怖がって中々、検査が進まなかったのはまた別の話である。



検査の結果、全員に異常が無いことが分かるとようやく門をくぐってショッカー世界へと続く長く薄暗いトンネルのような空間に入る。
かなり距離があるその空間をある程度、進むとやっと光が見えてきた。


そして―


  
ピニャ達の目に門の向こうに広がるショッカー世界の光景が勢いよく飛び込んだ。

そして彼女達はその光景に愕然とした。

見渡す限りの高層建造物や飛び交う民間の飛行機、自動車。

どれも帝国の技術水準ではどうやって作ったのかすら分からないものばかりだった。



(天を貫かんばかりの巨塔や摩天楼、空を飛ぶ鉄の塊、自走する箱……帝国がここまで発展するのに何十年…いや何百年かかるだろうか)




これにはピニャやボーゼスだけでなくレレイやロウリィ、テュカも目を丸くしていた。


「かなり驚いてる様子ですね」


「中世レベルの文明からいきなり現代に来たんだ。無理もない」




すると黒塗りの高級車がやって来て千堂達の前で停車し、後部座席のドアが開いて1人の男が出てくる。



「情報本部から参りました増沢です。皆様の警護役という大役を任されました」


その男の姿をひと目見ただけで千堂と加頭は彼の正体に気づいた。優しそうな声と低い物腰で接してきてはいるが目の前の男からは何かを隠そうとしているオーラが漏れ出ていたからだ。



((コイツ……GOD秘密警察の人間だな))

 

男の正体を察して千堂と加頭が増沢の耳元に近づいてカマをかける。



「GOD秘密警察の人間だよな?ご苦労さま」


「それもかなりのベテラン、しかも放つオーラが普通の諜報員のそれとは違う……あなた、難波重工の難波チルドレン出身ですよね?」



増沢は一瞬、驚いたような顔をしたがすぐにフッと諦めたように笑った。


「何で分かった?今まで1度たりとも見破られたことなんてなかったんだが」


先程までとは打って変わって低い声と冷たい目で増沢は千堂達に尋ねる。それを見た千堂達はニヤッと笑い腕を組んで答えた。


「諜報員なんて俺達みたいに場数を踏んだ人間が見れば簡単に見破れるよ」


「私はこう見えても元財団Xの人間なんでね。難波チルドレンぐらい見分けられます。それに貴方達って異常なまでに"普通"や"一般的"を演出したがるからすごく分かりやすいですよ。まぁ一般市民や不穏分子には全く見分けがつかないでしょうけどね」



「はぁ、やっぱりあんたらは噂通りの優秀な人間らしい」


増沢は1冊の手帳を懐から取り出して読み上げた。


「千堂印一、優秀な成績で士官学校卒業後、陸軍曹長に任官。勤務成績の方も優秀で改造手術をこの時に受ける。
不穏分子の掃討作戦で名を挙げるとその優秀さを買われ、少尉に任官されると共に党からガイアメモリとアストロスイッチも授かる。
そのままでも将来は軍の上級幹部に昇格確定なのに銀座動乱での功績が讃えられ、ゾル大佐から賞状と2つの勲章を賜われ、異例の2階級特進して大尉になる……すごい経歴じゃないか」


「よくもまぁ、そこまで調べたもんだ」
 

「同期からの評判は『一族の七光り』、『嫉妬の対象』……こりゃまた……フフッ…酷い言われようだな」


皮肉混じりに増沢が笑うと千堂は不愉快というような顔をした。


増沢は次に加頭の経歴を読み上げた。


「加頭秀明、財団X傘下のミュージアムの御曹司として何不自由なく育つ。
祖父はあの園咲琉兵衛。20歳の時に財団Xに入社し、キャリア組の筆頭と言われ、将来はミュージアムの跡取りになるはずが……」


増沢はそこで経歴を読むのをやめた。続きには『財団Xから防衛軍に転身』と書いてあったかだ。


増沢は不思議に思った。
ミュージアムの御曹司なのだから財団では相当な地位にいたはずだ。何故、それを捨ててわざわざ軍に入ったのかと。


増沢にはどうしても加頭が輝かしい出世の道を自ら捨てたことが理解できなかった。


「なぁ、なんで好き好んで軍なんかに入ったんだ?あのままミュージアムの後取りになればよかったのに」


加頭はバツが悪そうに少しだけ困った顔で答えた。


「どうも自分には財団特有の堅苦しい雰囲気が合わなくて……それをお祖父様に相談したら―」


「軍に入れられた……と?」


「"入れられた"んじゃない、"入れてくれた"んです。お祖父様もあそこで僕が窮屈そうにしてるのを感じてくれて別の場所を用意してくれたんだと思います…他の家族はまだ僕を跡取りにするのを諦めてないでしょうけどね」





やがて千堂達は用意された大型バスに乗り、大ショッカー党本部へと向かった。増沢は黒い高級車に再度、乗り込むとバスの背後にピッタリとついて周囲に危険がないかを監視する。




バスが大通りに入った後も異世界の客人達…特にピニャにとっては驚きの連続だった。


ピニャは帝国の皇族であり、幼い頃から帝国が世界で1番繁栄しており、他国は文明的に劣り、野蛮であると教え育てられてきた。


だが目の前に広がる光景は何だ。



通りには先が見えないほどに高層建造物が建ち並び、無数の人民が行き来していた。さらに市民やサラリーマンで歩道はいつものようにごった返していた。
皆、一様に目に力がこもっており、表情はどこか自信に満ち溢れている。


歩道にゴミは一つも落ちておらず、道脇に浮浪者や物乞いの類はいない。
普通、大都市ともなるとその逆が当たり前なのだがここではそんな様子は全く見られない。


街頭の動く絵(大型スクリーンによる党営放送)がショッカーの素晴らしさを伝え、民衆はそれに対してショッカー式敬礼をしてショッカーに対する忠誠心を示していた。

さらに街の至るところで地球儀を掴む鷲のマークが描かれた旗やスローガンが書かれた広告を目にする。


目の前に映る全てが帝国とは隔絶していた。


「帝国は……勝てるのか?こんな世界を相手に帝国はどう立ち向かえば……」


目の前の光景に呆然とし、力無く自信のない言葉を吐いてしまう。








そうこうしている間にバスは大ショッカー党本部に到着した。





「なっ!!??」


ピニャは自身の目を疑った。
目の前の建築物は900メートルはあろうかという帝国からすれば超超超超規格外の大きさの高層ビルだった。さらにビルの屋上にはショッカーのシンボルである地球儀を鷲掴みにする鷲の巨大な彫刻が鎮座していた。



これにはピニャも言葉を失った。


(大きさなんだ!!!さっきまでの摩天楼が小さく感じるぞ!!)
 


「センドウ殿!ここがショッカーの元老院なのか!?」


「うーん、元老院といえばそうですね。民主制はとうの昔に放棄したので厳密には違いますが……」




そう言うと千堂はレレイ、テュカ、ロウリィの3人を連れてバスから降りた。 


「じゃあ加頭、あとはよろしく」


「わかりました」


加頭が了承するとバスの扉が閉まった。
バスの車内は運転手を除いて加頭、ピニャ、ボーゼスの3人だけとなる。


「妾達はセンドウ達と一緒ではないのか?」


「別の会合場所に向かいます。
殿下は非公式の訪問ですので…」



再びバスは発進し、党本部から離れてショッカー外務省に向かった。


――――――――――――――――――――――――――――――――
大ショッカー党本部……ショッカーが世界統一直後に旧日本国の国会議事堂を接収し、増改築工事を行って建設された大ショッカー党の本部。旧国会議事堂の背後に地上33階、地下5階建てのビルを増築したことで旧日本国時代の面影を僅かに残しつつ、竣工時の人民にショッカーによる新時代の到来を感じさせる作りとなった。

なお、本部の土地を上空から見ると羽を広げた鷲の地上絵が見えるという。

            ショッカーペディアより抜粋
――――――――――――――――――――――――――――――――


大ショッカー党本部の記者会見室ではいくつものカメラが並べられ、記者達がところ狭しとひしめき合っていた。


記者達が今か今かと異世界の客人であるレレイ達を待っているとホールの奥のドアが開かれた。そして、レレイ達が姿を現す。傍らにはいつものように軍服に身を包んだ千堂が控えていた。


パシャパシャとカメラのフラッシュが点滅する中、レレイ達は記者達の正面にあるテーブルの席につく。


「これより記者会見を開始します。質問のある社は挙手してください」
 

一斉に手が上がり、進行役が指名する。



「毎朝新聞です。レレイさんは魔法が使えると聞きました。できれば見せて頂きたいのですが可能ですか?」



それを聞いたレレイが指先で緑色のつむじ風の渦を作り、それを見た記者席でどよめきとまばゆいフラッシュが起こる。



次の質問に移り、女性の記者が手を上げる。


「フリージャーナリストの滝川です。
テュカさんはエルフとのことですが…その耳は本物ですか?」


「本物ですよ、触ってみます?」


そう言ってテュカが髪をかき分けて耳をヒョコヒョコと動かす。またも記者達は驚いた。

 


しかし、次の質問で1人の記者が爆弾発言をしてしまった。



「ロウリィさんは肉体のある神…亜神とのことですが……その…これは事実ですか?」



この質問を聞いて千堂は内心、焦った。今まで幾度も異種族と接触し、社会の歯車として組み込んできたショッカーだったがこれまで接触してきたものの中に『神』を自称する存在はなかった。


ここでロウリィの発言が原因でショッカー世界の宗教を刺激することになればゲルダム教をはじめとする宗教界は大混乱に陥り、彼らが対日強硬派に賛同する可能性がある。


それだけならまだましな方で、ショッカーの最高指導者であり、全知全能の至高の存在であり、まさに『神』そのものといっても過言ではない大首領様の権威を失墜させかねない。そんなことになれば本当に世界の終わりだ。


(言葉には気をつけてくれよ…ロウリィ!!)


祈るようにロウリィを見つめる。
そんな千堂の様子を見て察したのか記者達に向かって話そうとするロウリィを遮ってレレイが話し始めた。



「その説明をするには私達の世界の種族について説明する必要がある。

まず私は門の向こうではヒト種と呼ばれる種族。寿命は60歳〜70歳前後。住民の多くはヒトである。

テュカは不老長命のエルフ。その中でも希少な妖精種で寿命は一般のエルフより遥かに長く、永遠に近いと言われる。……そして」
 

レレイは一息おいてロウリィについて話し始めた、


「ロウリィもヒトではなく亜神…肉体をもつ神とされる。
元はヒトで昇神したときの肉体年齢で固定されている。通常、1000年ほどで肉体を捨て霊体の使徒に、そして真の神になる。したがってロウリィがこの世界における『神』と同じものということではない。ロウリィはこの世界では神官……あるいは改造人間に近い」


元はヒトでありながら超人的な力を持ち、長命になる。日本世界ならともかくショッカー世界においては別に珍しいことではない。

事実、改造手術を受けて怪人になり長命になった例など数多ある。怪人の中には5万年以上、昔から存在していた者もいるし、アンデッドやオルフェノクのように死の概念すら超越している例すらある。それにただ神官というだけならゴルゴムの幹部の肩書は『大神官』である。


記者達は身近なそれらの事例を思い浮かべ、レレイの回答に納得した。



レレイは彼らを引き合いに出すことでショッカーと帝国の間で新たに宗教的な争いが起こることを防ごうとしたのだ。


ロウリィが改造人間に当たるかどうかはこの際、置いておくとしても詭弁ではあったがなんとか記者達の疑問に対して余計な波風を立てることなく答えることができ、千堂は安堵する。


ロウリィの方は自分の言葉を遮られて不満そうではあったが。



また、次の質問に移った。


「OREジャーナルの者です。レレイさん、現在、防衛軍基地内で生活しているとのことですがヒト種の貴方から見て我々の世界はどう思われますか?」
 


レレイは少し困った顔をしつつも答えた。千堂には慎重に言葉を選んでいるように見えた。



「進んだ技術力を持ち、様々な種族と共存している世界。帝国ではこうはいかない」

 

その後もレレイ達に向けて様々な質問が行われ、記者会見は落ち着いた雰囲気のまま無事終了した。

 
余談だがこの会見はショッカー世界のネット、新聞、テレビなどのメディアでトップを飾り、ショッカーの思惑通り、帝国に対する人民の怒りの目線から異世界人民を除くことに成功した。 
 

 
後書き
千堂の怪人態ですが思いの外、応募が少なかったのでアンケートに切り替えようと思います。
すみません。


次回予告 
ピニャとボーゼスは外務省で講話の仲介をすることを約束する。そして2人はショッカーの頂点とも言える人物と謁見し、ショッカーの真の強さ、そして恐ろしさを知る。

乞うご期待!! 
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