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おぢばにおかえり

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第五十八話 入学前のその三十八

「それどころかからかってきて」
「嫌なのね」
「そうなんですよ、この春休みも神戸に来るらしいですけれど」
「それはいいことね」
「いいですか?」
「私あの子好きだから」
 大石さんは私に笑顔で言ってきました。
「だからね」
「阿波野君をですか」
「いい子だと思うわ」
「そうでしょうか」
 そう言われても私にはどうか、でした。
「いい子とは」
「思えないのね」
「はい」
 正直な感想です、あんないい加減な子がいい子とは思えないです。
「私のこといつも小さいって言ってきますし」
「小さいのはね」
「いいんですか?」
「千里ちゃんの可愛さの一つじゃない」
 大石さんは笑顔のままこうも言いました。
「だからね」
「そうでしょうか」
「その子も見てるわね」
「そうでしょうか」
「じゃあ絶対に」
 これまで以上に笑って言う大石さんでした。
「いいわね」
「何がいいのか」
「千里ちゃんもそのうちわかるわ。私はあの子応援するから」
「阿波野君をですか」
「ええ、そう決めたから」
「何で阿波野君を応援するのか」
 それが全くわかりませんでした。
「お話が見えないですが」
「千里ちゃんの為でもあるのよ」
「私の、ですか」
「そう、だからね」
「ううん、本当によくわからないです」
 大石さんが今言われていることがです。 
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