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【完結】RE: ハイスクール D×D +夜天の書(TS転生オリ主最強、アンチもあるよ?)

作者:羽田京
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第4章 ???×夜天の書
  第22話 HAYATEのごとく

「何か分かった?ユーノくん」

「うーん、それがまったくわからないんだ……けど」


 ショートボブにした栗色の髪に、ネコ型の髪飾りをつけた少女が、無限書庫の司書長を務める少年ユーノ・スクライアに尋ねる。
 だが、ユーノからの返答は、芳しくなかった。
 カリムから依頼を受けた彼女は、真っ先に知己のあるこの少年に調査を依頼したのだ。
 調査結果を受け難しい顔をしている彼女こそ、時空管理局で提督になったばかりのハヤテ・Y・グレアム一佐である。


「けど?」

「ここからは僕の推測で、突拍子もない話になるけど、それでもいいなら聞く?」

「もちろん、構わへんよ。いまはほんの少しでも情報が欲しいからなあ」

「うん、預言の詩にあったうち「夜空」「雲」「騎士」。この3つのキーワードに関係のありそうなロストロギアを一つだけ見つけたんだ」

「なんや。大手柄やんか」


 期待を裏切らず優秀な友人に、感謝する。
 だが、「まったくわからない」というのはなぜなのか。
 疑問符が浮かんでいたのだろう。
 それを見て取ったユーノが説明を続ける。
 突拍子もなさすぎて、まだ推測にすぎないからと、前置きを忘れない。


「落ち着いて聞いて欲しい。『夜天の書』というロストロギアに心当たりはあるかい?」

「いや、初めて聞くかな」

「『夜天の書』は、どうも――『闇の書』の前身らしいんだ」

「なんやて!?」


 落ち着くようにと、再度ユーノは促す。
 その一方で、無理もないと思う。
 史上最悪と呼ばれたロストロギア『闇の書』と、ハヤテは無関係ではないのだから。
 落ち着いた頃を見計らって、詳しい説明を続ける。
 もともとは『夜天の書』と呼ばれる資料収集用の魔道書だったこと。
 所有者に改造されることで、いつのころからか破壊をまき散らす『闇の書』に成り果てたこと。


「――と、いうわけなんだ」


 なるべく簡潔に。感情をこめないように説明をし終える。
 目の前のハヤテの表情をうかがうと、思ったよりも冷静なようだ。
 取り乱すのではないかと危惧していたが、杞憂に終わった。
 そう思って胸をなでおろそうとして、


「その話……私以外の誰かにした?」


 ――唐突に、両肩をつかまれた。
 かなりの力が入っており、怖いくらい真剣な表情をしたハヤテの顔が、ユーノの目前にあった。
 声も、先ほどと打って変わって、詰問するような響きがある。
 ハヤテの豹変に驚きつつ、話すのは彼女が初めてだと、告げた。
 調査もユーノ個人で行っており、他に、知るものはいない、とも。


「ふーん。今の話は、秘密にしておいて。対策は私の方でやっておくから。誰にも話さないこと」

「え?まって、ハヤテ。もしかしたら『闇の書』が再来するかもしれないんだ。管理局全体で取り組まないと、だから――」

「だから――なに?」


 言葉をつづけようとして、口をつぐむ。
 微笑を浮かべる少女に、気おされて、それ以上何もいえなかった。
 口調も変わっており、何より、目が全く笑っていなかった。
 

「『闇の書』事件は、私のお義父さんが解決済み。『夜天の書』なんて誰も知らない。そうよね?」

「そう、だよ。だからこそ、皆に知らせて、早めに万全の対策を――」

「もう一度言うけれど、対策なら私がやっておくから、安心して。貴方は、黙って私に任せればいい。そうよね、ユーノ?」

「え、でも――」

「ユーノ、貴方とはこれからも友達でいたいの。あまり私を失望させないで」


 なおも反駁しようとするが、できなかった。
 ハヤテが発する膨大な魔力と殺気が、ユーノを締め上げる。
 彼にできることは、黙って彼女に従うことだけだった。


「『闇の書』を解決する英雄は、ギル・グレアムだけでいい。もう一度くるなら、今度こそ私とお義父さんで、引導を渡せばいいだけ」


 帰り際に、独り言をつぶやく姿は、狂気じみていた――と、のちに司書長は語るのだった。





 ジェイル・スカリエッティ事件――通称JS事件は、史実通り機動6課の活躍により解決された。
 部隊長は、ハヤテ・Y・グレアム。
 彼女は、ユーノが予測した『闇の書』の再来に備えて、極秘裏に戦力を集めていた。
 ところが、結局、『闇の書』は現れず、預言の内容も再度変わってしまい、彼女の準備は無駄になる――はずだった。


 しかし、カリムが、新たな預言によって、管理局の危機に備える必要がでてきた。
 そのために、集めた戦力を転用することにしたのだ。
 その戦力こそが、機動6課である。


 提督は、海の所属であり、機動6課は、地上部隊の管轄である。
 それなのに、なぜ、ハヤテは、部隊長になったのか。
 彼女を英雄扱いする人々は、預言に備えて、念願の提督の地位を捨ててまで、地上部隊に移った。
 と、口々に賞賛した。
 しかしながら、真実を知る者たちは、皆口をつぐんでいた。
 なぜなら、


「せっかく、地上部隊に移ったのに、また海で提督をやらされるなんて――――お義父さんに会えないじゃない!」


 ――単に、ファザコンを拗らせただけだったからだ。


 提督に就任からたった1年で、彼女は、音をあげた。
 別に、仕事が辛かったわけではない。
 提督は、長期任務が多く、数か月家に帰れないこともないことも、ざらだった。
 だからこそ、直に家族に会えなくなったファザコンにとっては地獄だったのだろう。
 カリムの預言を聞いてから、あっという間に、機動6課を設立し、地上本部に移ってしまった。
 

 ロストロギア『聖王のゆりかご』とガチンコ勝負を繰り広げたハヤテは、まさに英雄と呼ぶに相応しいといえよう。
 その姿を見たユーノは、ファザコンでさえなければなあ……と、高町なのは、フェイト・T・ハラオウンと一緒に残念がっていた。
 ちなみに、義姉たちリーゼ姉妹は、ファザコン対策として、譲渡されていたものの、あまり効果はなかったらしい。
 




 とある海外のイベント会場にて。


 そこでは、海外では最大規模のコスプレイベントが開催されていた。
 西洋系のキャラクターは、やはり西洋人が仮装すると様になっている。
 日本からきたコスプレイヤーも、負けじと和装で対抗していた。


 ――つまり、とてもレベルが高かった。


 その中でもひときわ目立つのは、魔法少女リリカルなのはの主人公「八神はやて」のコスプレだった。
 あまりの出来のよさに、人だかりができている。
 そのうえ、そのコスプレイヤーは英語にも堪能であり、大いにその一角は盛り上がっていた。
 英語力を生かし、広報としても活躍する「彼」は、まさにスターといえよう。


 後日、インターネットで配信された姿に魅了されたものは多く、大いに知名度を上げたらしい。




 ――――世界は、いつだって…こんなはずじゃないことばっかりだよ!


 ――――私は、貴女の娘です!


 ――――それでも、私は行くわ。アルハザードへ。全てをアリシアとやり直すのよ。


 夢を見ていた。
 笑顔のアリシアと暮らす夢。
 魔道炉の暴走でアリシアが死に、絶望に打ちひしがれた夢。
 死者蘇生の方法を探して、研究を重ねる夢。
 プロジェクトFにより生まれた「人形」と会話した夢。
 そして……


「私は、アリシアとともに、アルハザードへ旅立った」


 呟き、目が覚める。
 思考がかすむ。頭が重い。
 ここは、どこだ。自分は、死んだのか。
 死後の世界ならば、アリシアと会えるのだろうか。
 そうだとしたら、死んだとしても悔いはない。


 もともと、アルハアードに行けるとは考えていなかった。 
 それでも、縋ってしまったのは、自身の弱さだろう。
 死者を蘇生させる方法を探して、研究に研究を重ね――――疲れ果てた。
 『9つ』のジュエルシードで、次元震を起こし虚数空間に落ちたのは、消極的な自殺に過ぎないのだから。
 「人形」は……フェイトは無事だろうか。


「今になって、フェイトの心配をするなんてね。私には、心配する資格はないというのに……」  


 もう一度呟く。
 そこで、やっと頭が覚醒してきた。
 はっきりとしつつある視界は、白い。
 だが、ここは死者の世界ではないようだ。
 五感が、「ここは現実世界である」と訴えかけている。
 消毒液の匂い――どうやらここは、病院のようだ。


「半分死人の私を助けるなんて、余計な真似をしてくれるわね」

「――――そう邪険にしないでほしい。目の前で死にかけている女性を助けるのは当然で、貴女には聞きたいことがあるのだから」

「誰ッ!?」


 男性の声がした方向を見ると、長身の偉丈夫がいた。
 だが、その姿は、人間とは異なっている――そう、おとぎ話に出てくる悪魔のようだった。
 思わず身構えようとして、ボロボロの身体では、何もできないことに気づく。


「安心してほしい。危害を加えるつもりはない」

「わざわざ助けたのだから、当然ね……私のそばにアリシア――――子供の遺体がなかったかしら」


 一番の気がかりを尋ねる。
 アリシアのことなのに、感情的にならずに済んだのは、諦観のせいだろうか。


「大切に保管それているようだったのでね。こちらで、手厚く保管してあるが、余計なお世話だったかね?」

「……いえ、礼を言うわ。あの子は、私の命よりも大切な、私の娘よ。結局、生き返ることはなかったけれど」


 自分でも意外なほど、蘇生に失敗した事実を述べることができた。
 「人形」――いや、もう認めよう。
 フェイトとの最後の会話は、「親」としての記憶を想起させるものだった。
 もはや摩耗した記憶の先にある、母親だったときの感情。
 狂人と化した自分を、最後に正気に戻してくれた。
 フェイトは――私に残された最後の娘は、無事だろうか。


「ふむ。貴女には、いろいろと聞きたいことがある。だが、その身体では、長く持たないだろう」

「ええ、その通りよ。せっかく助けたというのに、残念だったわね」


 なぜ、自分を助けたのかは、わからない。
 現状も、アリシアのことも、フェイトのその後も、何もかもわからないことだらけだ。


「いまの医療技術では、貴女を助けることは、できない。そこで提案なのだが――」


 ――――悪魔になってみないか?


 それが、魔王サーゼクス・ルシファーと、プレシア・テスタロッサとの初邂逅だった。
 その後、リアス・グレモリーの『女王(クイーン)』として、転生悪魔となり、彼女は、獅子奮迅の活躍をしていく。
 なぜ、彼女が、協力的になったのか。それは――――


「お母さん。今度のレーティング・ゲームも頑張ろうね!」

「そうね――――アリシア」


 アリシア・テスタロッサ。
 リアスの『兵士(ポーン)』となることで、転生悪魔として蘇った少女。
 戦力としては並だが、持前の明るさで、マスコットとして可愛がられている。
 そして、何より……


「アリシアには、指一本触れさせないわ。サンダーレイジ!!」


 彼女を狙う愚か者には、かつて大魔導師と呼ばれた魔女が、怒りの鉄槌を下すのだった。  
 笑顔を取り戻したプレシアとアリシア。
 上級悪魔になり、母娘水入らずに暮らすために、今日も彼女たちは、戦う。
 温かかな幸せを取り戻したプレシアは、ふと思い出す。


(そういえば、ジュエルシードはどこにいったのかしら)


彼女たちを巻き込み、史実と異なる「原作」が幕を開けるのだろう。
 けれども――――「八神はやて」は、この世界のどこにもいなかった。





 目を覚ますと、世界は青白い光に包まれていた。


 ここはどこだろう。
 寒い。寂しい。
 けれども、湧き上がる感情は――憎悪。


『お父さんっ、お母さんっ』

『お前たちだけは絶対に……絶対に許さない!』


 うつらうつらとしながら思い出す。


 化け物と戦ったことを。
 復讐を願いこの世から消えたことを。
 自分は死んだはずなのに……。
 ああ、そうか。 
 これは、未練なのだろうか。


 まどろみに包まれながら考える。


 自分の願いは、あの化け物どもを根絶やしにすること。
 けれども、力が足りない。
 けれども、知識が足りない。
 何もかもが足りない。 


 誰か助けて。


 力が欲しい。
 青い光に強く願う。
 すると、様々な世界の「八神はやて」とつながった。


 男だった。女だった。大人だった。子供だった。
 学生だった。働いていた。剣士だった。魔法使いだった。
 母親だった。父親だった。老人だった。赤ん坊だった。


 ……無限ともいえる世界の数々にいる「八神はやて」。
 彼らの力なら、「自分自身」の力なら、使いこなせる。
 だから、


 ――――魔法の力を、時空管理局員になるはずの「八神はやて」から貰った。

 ――――原作知識を、男子高校生の「八神はやて」からもらった。   


 最後に、「新しい家族」をもらった。
 戦力という意味もある。
 けれども、本当の理由は、復讐の代行者に、せめてもの餞別を渡したかったからだ。
 頼んだよ、守護騎士に管制人格たち。


 ごめんね、もう一人の僕


 怨嗟と憎悪の中。
 新たに獲得した魔法の力と知識。
 そして、残された力をすべて渡した。
 青白い光に包まれる5歳の、過去の自身をみて思う。
 願いはすべて託した。
 全てを終え、彼女は、眠りについた。





 ――――6月3日から6月4日に日付が変わる午前0時


 ――――「僕」の9歳の誕生日に、なるはずだった日。


(この時を境に、「俺」と「わたし」は「ボク」になった)


 「僕」はこの日を忘れない。生涯忘れることはないだろう!


 当たり前の日常が一瞬にして崩れ落ち、非日常の餌食になった日を。
(お父さんとお母さんの仇ッ…!)

 父と母の死を目の前にして、「ボク」だけが生き残った日を。
(「僕」はもう死んでしまったけれど)

 大事な家族を失うと同時に新しい家族を得た日を。
(「ボク」が「僕」の願いを叶えてあげる)


 「僕」は知ったのだ。知るしかなかった!


 当たり前と思っていた日常が、如何に尊いかを。
(悲しかった。悔しかった)

 非日常おいては、弱者は、強者の気まぐれで、時に庇護され、時に蹂躙されるしかないことを。
(「僕」は何を願ったの?)

 そんな「ボク」がひたすらに力を求めたのは、必然だったといえよう。
(……いまの「ボク」ならわかるはず)

 大切な日常を守りたい。理由はそれだけ――だったはず。
(本当に?)


 「僕」は、ただ家族と一緒に幸せに暮らせれば、他に何もいらなかったのに!


 「ボク」はただ、日常を取り戻したかっただけなのに。
(「僕」の願いを思い出せ)

 けれども、「僕」の最期の願いは――――だった。
(…っ思い出した!)

 「僕」が渇望する――――こそ、「ボク」の原点であり、根源でもある。
(お前たちだけは絶対に許さない)


 ――――全ては復讐のために。


 もちろん、ボクは(わたしは・俺は・僕は)独りで戦ってきたわけではない。
(皆一緒だよ)

 愛する家族――ヴォルケンリッターとリインフォースを合わせた5人――と、力を合わせて、頑張って来たのだ。


 ――――「わたし」「俺」「ボク」「僕」たちみんなの願いを叶えるために。


「そう。異形どもを一匹残らず根絶やしにするためにッ!」
(((そう。異形どもを一匹残らず根絶やしにするためにッ!)))


「「「「 人の世に巣食う害虫どもめ!苦しめ!!絶望しろッ!!!己の所業を悔いながら死んで往けっ!!!」」」」


 ――――さあ、黙示録をはじめよう





『天を夜空が奪いしとき
 地を暗雲が覆いつくさん

 人の世は王者を欲し
 王が救いしは常世の者なり

 騎士達は化生共を滅し
 王以て天下を安寧せしむ』


    (とあるベルカの「預言者の著書」より――変化した預言)


 これから語る話は、ただひたすら凄絶な復讐を願う少女たちと家族たちの物語。


つくられた喜劇。


つくられた悲劇。


たとえば、そんなデスティニー


――――それは、夜天の王「八神はやて」たちと家族の黙示録。
 
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