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八条学園騒動記

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第五百六十六話 アンの絵その七

「つまり母親も息子さんもね」
「両方恨んでるんだ」
「息子さんは動く前にいなくなったから何もしていないけれど」
 それでもというのだ。
「それでもね」
「お婆さんにはしたんだ」
「もうあることないこと一族中にいつも言い回って」
「犬のお話で遂に切れて」
「その前から怒ってたけれど」
 それがというのだ。
「遂に切れてね」
「精神病院に叩き込んだんだ」
「それで親戚の誰にも会う必要ないって言い回ってるよ」
「一々やることが徹底してるね」
「嫌いな相手には徹底した仕打ちを延々とする人で」
 そうした性格でというのだ。
「そうなっているんだ」
「難しい人だね」
「うん、ちなみにその人普通に働いてるよ」
「それは出来ているんだ」
「うん、けれどね」
 それでもとだ、菅はマルティに話した。
「今話した通り性格的には問題のある人だよ」
「というかその人の執念深さって」
 アンは菅の話すその人について述べた、見ればどうかという顔になって腕を組んでそのうえで言っている。
「もう劇的ね」
「シェークスピアかな」
「いや、シェークスピアはまた違うでしょ」
「こうした人じゃないんだ」
「最後の最後まで抑えた悪?」
 アンはこう言った。
「そんな感じがしない?」
「そういえばそうかな」
 菅も否定しなかった。
「シェークスピアの悪役は」
「確かに裏で動くのはシェークスピアだけれど」
「ヤーゴとかマクベス夫人とか」
「リア王でもそうしたの出たわね」
「うん、けれど切れないね」 
 シェークスピアの作品における悪役はというのだ。
「その人みたいに」
「その人切れて精神病院に叩き込んだのよね」
「お婆さんが犬を保健所に送れって言ったらね」
「安楽死されないのに」 
 この時代だとそれはない、動物愛護の精神からそうなっている。ただし軽率な理由で預けると罰金を取られ安易に保健所に渡せなくなっている。これは飼い主の容易に命あるものを捨てる行為を防ぐ為のことである。
「それでもなのね」
「犬猫の星に送るのならって怒って」
「お婆さんをなのね」
「お前が出て行けって瞬時に切れて」
 そしてというのだ。
「もう我慢出来るかって叫んで」
「老人ホームどころか」
「キチガイは精神病院だって言って」
「精神病院送りにしたのね」
「いつも喚き散らすからキチガイでも通じるって言って」
 そしてというのだ。
「自分の親戚の人だったけれど」
「そうしたのね」
「それでそれからもね」
「誰にも会うなって言って」
「勿論入院費もそのお婆さんの年金からだよ」
「お金も出してないのね」
「足りなかったら好きにしてくれって病院にも言ってるし」
 そうしたこともしているというのだ。
「もう徹底してるよ」
「執念深くて残忍なのはシェークスピアでも」
「その激情は違うね」
「シェークスピアで感情爆発させるのっていい役の方じゃない」
 アンはこのことを指摘した。
「悪役、悪人は最後までね」
「素顔を隠して」
「それで感情も隠してるから」
 だからだというのだ。
「そこは違うわね」
「うん、というか僕その人いい死に方しないと思ってるよ」
 菅はここでこうも言った。 
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