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眠れない夜は

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第三章

 医師は彼に言った。
「あの、身体がです」
「身体がですか」
「そう、それが」
 だからだというのだ。
「問題ですね」
「といいますと」
「お言葉ですが」
 医師は一呼吸置いてから渋沢に問うた。
「お聞きしたいことがあります」
「といいますと」
「結婚されてますか」
「はい、それで子供もいます」
 女の子が二人だ、丁度反抗期である。それを渋沢自身も話した。
「女の子が二人」
「では最近は」
「最近といいますと」
「奥さんと夜は」
「それはもう」
 実はとだ、渋沢は医師に答えた。
「ないです」
「そうですか、やはり」
「年齢と共に」
 それによってというのだ。
「そうした気持ちがです」
「なくなってきたんですね」
「はい」
 実際にというのだ。
「やっぱりそういうことは」
「はい、それはどうしてもですね」
 医師も渋沢の返事を聞いて述べた。
「なってしまいますね」
「そうですよね」
「それで貴方もですね」
「若い時はです」
 その時はというと。
「それなりに」
「そうでしたか」
「ですがそれが、特に四十代になると」
「落ちてきましたね」
「そうなりましたけれど」
「ですが」
 それでもとだ、医師は渋沢に話した。
「違いまして」
「そうですか」
「確かに落ちてきていましても」
「それでもですか」
「あることはありまして」
「では」
「それで身体が熱を持っています、あと貴方便秘ですね」
 このこともだ、医師は問うた。
「そうですね」
「実は」
「そのこともあって」
「だからですか」
「不眠症になっています」
「便秘も関係ありますか」 
 不眠症にとだ、渋沢は医師に問うた。
「そうですか」
「はい、実は」
「そうでしたか」
「やはり下半身に熱を持って」
「出ないとですね」
「実際何故寝られないか」
 それは何故かもだ、医師は話した。
「寝る時どうしても足が熱くてですね」
「はい、実は」
 それでとだ、渋沢は医師に答えた。
「そうでして」
「そうですね、それは明らかにです」
「精神的なものでなくて」
「身体的なもので」
「夜の生活がなくて便秘なので」
 この二つの為にというのだ。
「不眠症なのです」
「そうでしたか」
「ですから」
 医師は渋沢に今度はこう話した。
「まずは奥さんとです」
「夜の生活をですか」
「例えお若い時程でなくても」
「全くではなく」
「意識してそうしたことをする時間を持って」
 そしてというのだ。
「後はです」
「便秘をですか」
「何とかされて下さい、牛乳やお豆腐、食物繊維をよく摂られて」
「そういえば僕は牛乳やお豆腐、牛蒡とかは」
「あまり、ですね」
「食べないですね、お野菜は好きですが」
 それでもというのだ。
「牛蒡とか食物繊維の多いものは」
「お嫌いですか」
「いえ、特に」
「ならです」
「そうしたものを食べて」
「そして牛乳もよく飲まれて」
 そしてというのだ。 
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