風狸
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第二章
末崎はそこに飛びついて風狸を捕えた、築海はその様子を見て驚いて言った、
「何と、あやかしを飛びついて捕えられるとは」
「拙者も日々武芸で鍛えておる」
末崎は驚く築海に落ち着いた声で答えた。
「忍術もしておってじゃ」
「武芸として」
「それでじゃ」
今の様にというのだ。
「あやかしといえど動きを読めればな」
「捕えられますか」
「そうじゃ、この紀伊は元々根来衆がおったであろう」
「雑賀孫一殿の」
「それで我等藩士の中にも忍術をする者がおってな」
「末崎様もですか」
「そういうことじゃ、忍術と水練、槍術は免許皆伝じゃ」
そこまでの腕だというのだ。
「剣術はまだじゃがな」
「免許皆伝を三つもとは」
「それでじゃ」
「あやかしも捕えましたか」
「そうした、ではな」
「はい、これよりですな」
「やしきに連れ帰り」
末崎の家にというのだ。
「そしてじゃ」
「そのうえで、ですか」
「確かめようぞ」
まことに死なぬかどうかということをいうのだ、こうした話をしてだった。
末崎は実際に風狸をまずは小柄で刺し殺した、これで風狸は死んだが風が吹くとすぐにその傷が塞がり。
ひょっこりと起き上がった、築海と共にそれを見た彼は唸って言った。
「ふむ、まことにな」
「生き返りましたな」
「見ての通りな」
まさにというのだ。
「そうなったな」
「そうして生き返るとは」
「苦しそうにしておったが」
刺し殺されたその時はというのだ。
「赤い血を流してな」
「あっさりと生き返りましたな」
「随分とな」
「書にある通りでしたな」
「では今度は切ってみよう」
言った通りにだ、末崎は風狸の首をその小柄で切ってみた、首は確かに胴と切り離されてまたしてもこと切れたが。
風が吹くとまた生き返った、首と胴が引き合いそしてくっついてしまった。末崎はこのことについても言った。
「これまたな」
「生き返りましたな」
「まさか首と胴が離れてじゃ」
そうなってというのだ。
「死なぬとはな」
「生き返るとは」
「流石にこれはない」
末崎は唸って言った。
「わしも驚いた」
「拙僧もです」
「しかしまだじゃ」
「殺し方がありまするか」
「うむ、次は頭を割ってみよう」
こう言って今度はそうしてみたが。
やはり風が吹くと生き返り平然な顔をしている、それで末崎はさらにだった。
煮たり焼いたりしてみた、妻に言わせて皮を剥いで丸ごと揚げて食ってもみた、そして骨だけにしても。
風が吹くと生き返る、それで彼は築海にこう言った。
「まさに何をしてもじゃ」
「食って骨だけにされてもですか」
「風が吹けばな」
それだけでというのだ。
「生き返る」
「そうなりますか」
「うむ」
まさにというのだ。
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