不敗将軍
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第三章
「よくあそこまで戦い抜いたものだ」
「ボナパルトは退位したが」
「それでもまだ戦い続けたとはな」
「それも退位してから一ヶ月の間だ」
「恐ろしい意地だ」
「そこまで戦うか」
「不屈と言っても余りある」
ただ強いだけではないというのだ。
「どうやら王政には従わない様だが」
「それでもだ」
「彼の名誉は守られるべきだ」
「一度も負けていないしだ」
それにというのだ。
「ボナパルトにあくまで忠誠を違う」
「実に見事な者だ」
「全く以てな」
こう言って彼を讃えた、そしてナポレオンがエルバ島を脱出すると真っ先に彼のところに戻った。しかし彼がワーテルローで敗れ再び転落しようとすると。
戦争大臣でありナポレオンからパリを預かっていた彼は部下達に言った。
「すぐに友軍を助けに行く」
「軍を出してですね」
「そうしてですね」
「そうだ、敵軍は追撃してきている」
敗れたフランス軍をというのだ。
「その友軍を救う為にだ」
「これよりですか」
「このパリから軍を出し」
「そのうえで」
「戦う、私が出る」
ダヴー自身がというのだ。
「そして友軍を救うぞ」
「わかりました」
「では我等も行かせて頂きます」
「皇帝の為に」
「フランスの為に」
部下達はダヴーの言葉に奮い立ちそうして戦場に出た、そうしてだった。
ワーテルローでイギリス軍と共にナポレオンを破り勢いに乗るプロイセン軍の前に出た、そのうえで。
プロイセン軍を破った、プロイセン軍は戦場に立つダヴーの姿を見て言った。
「やはり強いな」
「この状況で勝つか」
「こうフランスの命運は尽きているというのに」
「あくまでフランスの為に戦うか」
「そして勝つか」
「最後まで戦うつもりか」
「彼がいる限りパリは攻められないな」
彼等はパリを目指していた、だがだった。
それはダヴーがいる限り無理だと悟りこう言うのだった。
「迂闊には攻めないことだ」
「さもないと痛い目を見るぞ」
「まだフランスにはダヴー将軍がいる」
「彼がいる限りはパリは攻め落とせない」
小柄で冴えない顔に禿げ上がった頭の男を見て言うばかりだった、そしてダヴーは各国との協定が成立するまでパリを守りぬいた。
ナポレオンは今度はセント=ヘレナ島に流され再び王政となりダヴーはまたしても全ての役職を剥奪された。しかも熱烈な共和制そしてナポレオンの支持者であったので警察の監視まで受けることになった。
だがある日彼はネイのことを聞かれてこう言った。
「彼は逃げない」
「亡命されないですか」
「あの方は」
「陛下に睨まれていますが」
「それでもですか」
「そうした人ではない」
ネイ、彼はというのだ。
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