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地獄の訓練

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第一章

               地獄の訓練
 その英国海軍士官は日本でやれやれといった様子で礼儀正しく語った。
「航空機を使っても」
「それでもですか」
「はい、どうにもなりません」
 士官は流暢な日本語で山本五十六に話した、日本にいて長いので英語だけでなく日本語も喋れる様になっていて階級が上である彼に話した。
「あれは」
「近頃帰国も航空機を盛んに開発、製造していて」
「我がロイヤルネービーもですね」
「導入していますが」
「航空機は空軍のものです」
 士官、見れば少佐の階級を持つ彼は笑って話した。
「あちらは出来たばかりでも頑張っていますが」
「ロイヤルネービーとしては」
「航空機よりも」
「やはり戦艦ですか」
「はい、優れた戦艦を多く建造し」
 そうしてというのだ。
「運用する」
「それを続けていかれますか」
「これからも、空から艦艇を狙っても」
 例えそうしてもというのだ。
「動くうえに小さな的です」
「攻撃は当たらないですか」
「とても。爆撃を行っても」
「爆弾は艦艇に当たらない」
「そうです、地上の基地や軍を狙うのではないのです」
 艦艇、それを攻撃するからだというのだ。
「とても当たるものではありません、それよりも」
「こまで通りですか」
「艦艇同士の戦闘で」
 砲撃そして魚雷によるそれでというのだ。
「行うべきです」
「やはりそれが一番ですか」
「そう思います、そちらでも航空機を実用化してですね」
「海軍だけでなく陸軍も」
 もっと言えば陸軍は海軍以上だが山本は海軍なので内心で対抗意識も出して海軍を先に出したのだ、そのうえで少佐に話した。
「盛んに」
「そうですね、ですが」
「海軍においてはですか」
「航空機はいらないかと」
「あくまで地上のものですか」
「そちらでは地上でも航空機を使っていますね」
「爆撃機も」
 こちらもとだ、山本は答えた。実際に帝国海軍は双発の爆撃機も考えている。
「そうしています」
「それよりもです」
「艦艇の方にですか」
「力を入れるべきです、あんなもの海では使えないです」
「地上の方は」
「そちらはいいでしょうが」
 それでもというのだ。
「こと海では。偵察位しかです」
「使えないですか」
「私はそう思います」 
 こう山本に言うのだった、だが。
 山本は彼のその話についてどうかと思いそれでだった、航空機を専門的に研究している山口多聞を料亭に呼んだ。
 そうして料亭で飲んで食いつつだ、彼にそのイギリス海軍少佐の話をした。そのうえで彼に対して問うた。
「どう思うか」
「それは違います」
 山口は厳めしいその顔で山本の皺があるにしても精悍かつ落ち着いた感じの顔を見てそのうえで答えた。
「最初の頃はです」
「どの兵器もか」
「そうしたものです」
「効果は小さいか」
「はい、ですが」
 それがとだ、山口は杯を手にしているが飲まないまま述べた。
「それを大きくしていけば」
「変わるか」
「航空機もまた」
「陸軍さんか盛んに開発しているな」
「そうですね」
「まるで空軍みたいにな」
 そのイギリス空軍の方にというのだ。 
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