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ロックマンZXO~破壊神のロックマン~

作者:setuna
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第三十四話 イレギュラー軍の撃退

エリアOに着陸したガーディアンベース。

そこは既にセルパン・カンパニーの攻撃を受けて火の海となっていた。

「何て酷いことを…!ヴァン、エール…二人はイレギュラーを指揮しているリーダーを倒して!居住区に向かうイレギュラーの大軍は地上部隊のみんなで抑えるわ!!」

「「了解!!」」

ガーディアンベースを飛び出した二人はイレギュラーを指揮しているリーダーを探すために街へ飛び出した。

途中で遭遇するイレギュラーを一蹴しながら奥へ奥へと進んでいくのであった。

そして、ガーディアンベースの停まっている場所から大分離れた…エリアOの市街地の中心では…。

「モデルVの反応が大きくなってきたな」

「あの計画…上手くいってるみたいね…」

イレギュラーの指揮を執りながらプロメテとパンドラは人々の悲鳴が飛び交い、火の海に包まれた街を見つめていた。

「かなり前からの計画だからな…モデルOのロックマンとモデルZXのロックマンと言うイレギュラーな存在がいても止まらないだろう」

「人々の負の感情……恐怖と絶望、そして怒り。どんなに正義を振りかざす人も持つエネルギーよ。」

どれだけ精神的に強い人物であろうが、誰もが持つ感情。

モデルVのエネルギーとするために長い時間をかけてきたプロジェクトは確実に進んでいた。

「連合政府・レギオンズからの支援をあまり受けられずにイレギュラーやエネルギー問題に苦しんでいたこの国を豊かにしたセルパン・カンパニーの社長であるセルパンは英雄だった。だが、あの演説と今回の襲撃で人々は一気に絶望のどん底だ。奴らの信じた英雄が実は悪の親玉だったんだからな。セルパン・カンパニーに回収されている絶望と恐怖に染まったサイバーエルフのエネルギーと人々の負のエネルギーがあればモデルVの復活は目前だ…。中々良く出来たシナリオじゃないか…セルパンのプロジェクト・ヘブンは…使い捨ての小心者の駒にしては上出来だろう」

「…そうね……少しずつだけど、あの男の計画にも少しの乱れが生じている…」

秘密裏にモニターで見たあの男の表情には多少の苛立ちがあったように思える。

「ククク…あの男のあんな面白い面は初めて見た…まあ、あいつもあの女と同じように当時の時代の者だからな。モデルOのオリジナルの恐怖を良く知っているはずだ。あいつには感謝してやっても良いかもな」

「随分と楽しそうじゃないか」

二つの足音が聞こえてプロメテとパンドラが振り返ると、そこには鋭い目付きでプロメテとパンドラを睨むヴァンとエールの姿があった。

「やっぱりあんた達の仕業だったのね…プロメテ!パンドラ!」

「ククク…待っていたぞ…さあ…クライマックスだ!ヴァン!エール!我らロックマン…力を持った者同士が殺し合う滅びの運命…!そう…俺達は呪われた運命に魅入られた同じ仲間なんだよ!」

「…アタシ達はあんた達の仲間なんかじゃない!」

「いいえ…あなた達も私達と同じ…ライブメタルの…真の力を引き出せる…特別なロックマン…あなたが否定しようと事実は変わらない…全てはモデルVの意志のままに…」

「モデルVの意志だと?と言うことはセルパンは…」

「そう、ライブメタルは……意志を持つ生きた金属…心弱き者は…ライブメタルに支配される…」

その言葉にヴァン自身もモデルOに乗っ取られかけた経験があるために理解出来た。

「セルパン如きにモデルVを制御仕切れるわけがないだろう!奴ではモデルVを扱うどころか取り込まれるのがオチだ!だが、セルパンは良くやってくれたよ。モデルVを振り当て、イレギュラーロックマンと強力なロックマンの二人を誕生させる切っ掛けを作っただけでも充分役に立った。」

「つまりお前達は初めからセルパンを利用していたのか…!」

「何を企んでるのか知らないけど…絶対に許さない!」

ヴァンがアルティメットセイバーを抜き、エールもZXバスターを構えながらプロメテとパンドラを睨み据えた。

「…もう遅いわ…モデルVは…もうすぐ覚醒する…」

「もう少し俺達に付き合ってもらうぞ…破壊神と英雄のロックマン!!」

プロメテが鎌を構え、パンドラも浮遊しながら杖を構えるとヴァンとエールは同時に飛び出した。

「てやあっ!!」

「ふんっ!!」

「当たれっ!!」

「受けなさい…」

ヴァンのセイバーとプロメテの鎌が激突し、エールのチャージバスターとパンドラの電撃がぶつかり合う。

ヴァンとプロメテは燃え盛るビルを足場にしながらセイバーと鎌の光刃を高速で動き回りながらぶつけ合い、エールはモデルFXに変身して二丁のナックルバスターを構えた。

「行けっ!」

ナックルバスターの銃口から発射される変幻自在のショットをパンドラも電撃を放って相殺する。

「……強くなったわ」

初めて会った時は相手との実力差も理解出来ぬ少女だったというのにだ。

「良い手応えだヴァン!あのオンボロ船を襲撃して大して時間が経っていないのにここまで強くなるとはな!!」

「お前達が余計なことばかりしてくれたおかげでな!!」

鋭い目で自分を睨むヴァンにプロメテは笑みを深める。

「良い目だ…俺の目に狂いはなかった。お前は本当に強くなった…破壊神のロックマンに相応しいくらいになぁっ!!」

「チッ!!」

プロメテが強引にヴァンを弾き飛ばすと、空中で体勢を整えてバスターショットを引き抜くのと同時にチャージバスターを発射した。

「はっ!!」

プロメテが鎌を振るって光弾を両断する。

「プロメテ……楽しそう……」

元々好戦的なプロメテだが、あそこまで機嫌が良いのはこの体になってから初めてな気がする。

「どこ見てるの!?」

パンドラに迫るモデルFXのショット。

それをパンドラは氷達磨を作り出して盾にする。

「……私も少しだけ…プロメテ……お兄ちゃんのように楽しませてもらうわ」

「!?」

無機質だったパンドラの瞳に鋭さが混じり、頭部のビットを射出して交互に属性を変化させながらエールに猛攻を加える。

まるでプロメテを彷彿とさせる攻撃の激しさ。

「(あの遺跡で戦った時とは比べ物にならない速さ…!もしかしてあいつ…エンジンが入ったの!?)」

「ほう…珍しいな…あいつがあんな戦いをするなんてな…あいつも乗ってきたようだ。俺達も楽しもうじゃないかぁ!!」

「吹き飛べぇ!!」

オーバードライブを発動し、ダブルチャージバスターからのセイバーによる真空刃の遠距離での三連擊。

「フンッ!灰になれぇ!!」

ワープしてかわし、髑髏の形をした炎を発射する。

更に炎から火球が発射し、このままではヴァンに直撃するかと思われたが、ヴァンはオメガナックルのエネルギーを拳に纏わせて地面を殴る。

「滅閃光!!」

火球と炎を蹴散らし、プロメテに突撃するヴァン。

プロメテとパンドラは互いに見遣るとプロメテはエールに、パンドラはヴァンに突撃した。

「「!?」」

不意を突かれたエールはプロメテの斬擊を、ヴァンは杖に乗ったパンドラの突進をまともに喰らった。

「くっ!」

「やってくれたな!」

エールはモデルZXに変身してZXセイバーを構え、ヴァンはセイバーのチャージをしながらパンドラの攻撃をかわす。

「モデルZXのロックマン!パンドラを退けたんだ…少しは楽しませてくれよ!」

プロメテの猛攻をエールはセイバーで必死に捌いていく。

「(こいつ、こんなでかい武器使ってるのにヴァンと同じくらい速い!!)こいつぅっ!!」

距離を取ってセイバーをバスターに変形させ、チャージバスターを発射する。

「射撃は正確だが、剣の扱いはまだまだだな!」

ジャンプしてかわし、エールの真上を取るとそのまま急降下。

「ダブルロックオン!モデルPX!!オーバードライブ!!」

シャドウダッシュで回避し、クナイを投擲してからのチャージ攻撃の十字手裏剣を投擲する。

「モデルP…攻撃性能が低いライブメタルかと思ったら…意外にやるじゃないか…」

クナイを抜くと、十字手裏剣によって受けたアーマーの損傷が瞬く間に修復されていく。

「何なの…それ…?ヴァンもあんた達も…」

「フンッ、俺とパンドラはヴァンと同じ…ライブメタルと一体化したことで普通のロックマンとは桁外れの力を手にしている…ダブルロックオン…だったな?ライブメタルで強くなる方法がそれ以外にもあると言うことだ。代償は勿論ある…二度と元に戻れないということがなぁっ!!」

「くっ!!」

プロメテの放つ炎に対して十字手裏剣を展開して投擲せずに高速回転させて盾の代わりにする。

一方、ヴァンはバスターを構えてショットを連射してパンドラを墜とそうとする。

「ちょこまかと動くな!!」

「……プロメテと渡り合えるだけあって剣の腕は凄いけれど…射撃はそれほどでもないわね……」

近接戦闘が得意なヴァンを相手にパンドラは最初の一撃以外は距離を取って攻撃していた。

「滅閃光!!」

「当たらないわ」

拳を地面に叩き付けて放射状にエネルギー弾を放つが、パンドラは隙間を縫うように回避し、逆に電撃を浴びせる。

「ぐっ!まだイケる…!」

どれだけ攻撃を受けようとヴァンの闘志は決して衰えない。

ダブルジャンプでパンドラとの距離を詰めようとするが、パンドラはそれを読んでいたのか更に上昇する。

「…無駄よ」

「それはどうかな?」

真下にバスターを向けてそのままチャージバスターを撃ち、更に上に飛ぶ。

「っ!?」

「墜ちろ!!」

チャージセイバーを喰らわせて地面に叩き落とすと、パンドラはすぐに起き上がった。

「…………」

「見た目によらずにタフな奴だな」

あっさりと立ち上がるパンドラにヴァンは少し呆れたように見つめる。

「………どうしてあなたは…憎まないの…?」

パンドラには不思議で仕方がなかった。

モデルOに取り憑かれたヴァンはもう元には戻れない。

人としての一生は望めず、穏やかに街で暮らすことも出来ない体なのにどうしてあそこまで澄んだ目が出来るのだろう。

「…?」

「ライブメタルと一体化して…人としての人生を失って……どうして憎まないでいられるの…この世界を…」

「…何を言ってる…イレギュラーに人々を襲わせているのはお前達だろう!!」

「この世界は…狂ってる…この世界はあの男を楽しませるために都合良く作られた玩具箱…モデルVの主に相応しい者を選び…ロックマンを生み出して殺し合わせる…あの男を満足させるゲームのための…」

「パンドラ!!」

「っ!!」

プロメテの声にパンドラはハッとなって口を閉ざした。

「らしくないな、珍しく熱くなったせいでお喋りになったようだな…少し物足りないが…今回はここまでだ。」

溜め息を吐きながらエールとの戦闘を中断するプロメテ。

「……お前達は一体何なんだ?セルパンに従っているのかと思えばそうでもない。だからってあの男とやらのために戦ってるわけでもなさそうだしな」

さっきのパンドラの声には底知れぬ怒りと憎悪を感じた。

だからプロメテ達はこのゲームを仕組んだ黒幕に従っているわけではないと理解出来た。

「さあな、全てを知りたければ勝ち続けろ。今のところ最もあの男に警戒されているのはお前だ。お前が全てのロックマンを倒し…王となる直後に現れるだろうよ…それまでお前自身が生きていればいいな」

それだけ言うとプロメテはパンドラを連れて去って行き、直後にプレリーから通信が入った。

『イレギュラー達の勢いが弱まったわ。敵のリーダーを倒したのね!』

「まだだよ、プレリー…まだ終わりじゃないよ…」

「残るセルパンだけだ。あいつはどこにいるんだ?」

『ごめんなさい、もう少し時間がかかりそうだわ。ヴァン、エール…一度ガーディアンベースに戻ってきて…』

プレリーの言葉に従い、ヴァンとエールはガーディアンベースへと帰還する。

一方、プロメテとパンドラは並びながら火の海となった街を歩いていた。

「……ごめんなさい…プロメテ」

「本当にらしくなかったな、まるで昔のお前のようだった」

「分からない…自分でも言葉が抑えられなかった……ごめんなさい」

俯きながら謝罪するパンドラにプロメテはメットに手を遣ると溜め息を吐いた。

「別に謝る必要はないだろう、大体お前は喋らなさすぎる。寧ろ、あれくらいで丁度良い…行くぞパンドラ、この国がどんな結末を辿るのか見てやろうじゃないか」

手を差し伸べるプロメテにパンドラはそっと握り返した。

「うん……行こう…お兄ちゃん」

手を繋いだ二人はそのままセルパン・カンパニーへ向かって行くのであった。 
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