戦国異伝供書
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第八十九話 初陣での大手柄その四
「それでは」
「その様にする」
「わかり申した、では」
「わしの言う通りに動いてもらうぞ」
「それでは」
「してです」
四角い顔の男が言ってきた、眉は太い。重臣の一人である桂広澄である。この者も元就と共にいるのだ。
「これより我等は」
「よいな、何があろうともな」
「はい、殿にこの命預けております」
「ならその様に頼むぞ」
「それでは」
「ではまずはじゃ」
元就は桂の言葉を受けてさらに言った。
「武田家の軍勢にさらに攻める」
「そうしますか」
「ここは」
「熊谷殿を討ち取りましたが」
「さらにですか」
「左様、そこからじゃ」
元就は笑みを浮かべさらに言った。
「仕掛ける、よいな」
「はい、それでは」
「その様に致しましょう」
「ここは」
「ではな、さらに攻めるぞ」
こう言ってだった、元就は実際に千の軍勢を率いてそのうえで武田家の軍勢四千にさらに攻めにかかった。すると。
武田元繁は家臣達に告げた。
「攻めるぞ」
「はい、敵は一千です」
「こちらは四千です」
「数はこちらの方が上です」
「それも四倍です」
元繁の家臣達も彼に応えて言った。
「それならばです」
「ここはです」
「攻めましょう」
「是非共」
「千程度の数ではじゃ」
それではとだ、元繁はさらに言った。
「我等に勝てるか」
「左様ですな」
「勝てる筈がありません」
「それではですな」
「この度は」
「熊谷殿の弔い合戦でもありますな」
「そうじゃ」
その弔い合戦にとだ、元繁はさらに言った。
「その為にもじゃ」
「ここは一気に攻めて」
「熊谷殿の弔い合戦としましょう」
「熊谷殿の墓に毛利家の者達の首をです」
「供養としましょうぞ」
「是非な」
元繁もそうだと言ってだ、そしてだった。
元繁は自ら陣頭に立ち敵を攻めよと言い軍配を振るっていた、そうして毛利家の軍勢を攻めさせるが。
元就はその彼等を見て言った。
「退くぞ」
「そうしますか」
「この度は」
「その様にしますか」
「そもそも兵達も疲れておる」
激しい戦を行ってというのだ。
「それでじゃ」
「退きますか」
「ここは」
「敵が攻めてきたので」
「うむ、そうしてな」
そのうえでというのだ。
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