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戦国異伝供書

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第八十九話 初陣での大手柄その一

   第八十九話  初陣での大手柄 
 元就は自ら先頭に立って軍勢を進ませた、そうして後に続く兵達に対して強く大きな声で命じるのだった。
「堀は越えて柵は押し倒してな」
「そうしてですな」
「そのうえで、ですな」
「敵に攻め入ってじゃ」 
 そしてというのだ。
「槍を突き出せ、矢もじゃ」
「放つ」
「そうしますか」
「ここは」
「そうじゃ、敵が前に出て来たならばな」
 どうするかも言うのだった。
「迷うことなく突くか切ってじゃ」
「倒せ」
「そうせよというのですな」
「敵の数は多い、首は取り放題ぞ」
 兵達にこうも言うのだった。
「まさにな」
「手柄もですか」
「それも取り放題ですか」
「そうなのですか」
「そうじゃ、だからな」
 それ故にというのだ。
「迷うことなくじゃ」
「攻めてですか」
「そうしてですか」
「敵を倒し」
「首を好きなだけ取ればよいですか」
「取った首の数を競え」
 こうも言うのだった。
「よいな」
「承知しました」
「それではです」
「敵をすきなだけ討ちます」
「そして首を奪います」
「その意気じゃ、では攻めるぞ」 
 見れば敵はもうすぐ前であった、柵に堀がある。だが。
 元就は騎馬の者達は堀を飛び越えさせ柵は馬の足で蹴破らせた、そうしたうえで敵の真っ只中に入り。
 足軽達も続く、柵を瞬く間に破られ武田の兵達は驚いた。
「なっ、いともあっさりと」
「柵を破ったぞ」
「重い柵を築いたが」
「それをあえなく破るとは」
「これだけの柵であろうとも山を一気に駆け下りてじゃ」
 元就はその柵について述べた。
「馬で蹴破ることが出来る」
「かなりの柵でしたが」
「そうすればですか」
「それで破れますか」
「そうなのですか」
「左様、敵は柵に自信を持っておったが」
 元就は家臣達に自信に満ちた笑みで語った。
「その自信を破った、ならな」
「このままですな」
「攻められますな」
「敵は狼狽えています」
「そこを攻めるのですな」
「そうじゃ、その間にどんどん攻め」
 そしてというのだ。
「首を取れ、よいな」
「わかり申した」
「では首を次々に取り申す」
「今敵は狼狽えていますし」
「今のうちにですな」
「そうせよ、臆してはならんぞ」
 元就自身刀を抜き敵に向かう、だが。
 志道はその元就のところに来て言った、
「大将はです」
「自ら刀を抜いてはならんか」
「抜くまではいいですが」
 それでもというのだ。 
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