魔女が使えないたった一つの魔法
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4.お家
「ん、ぅ…」
ゲートをくぐった紗夜は、白く強い光に包まれ目が眩んだ。
力いっぱい目をつぶり、腕で目を保護した。
スっと光が消え、ガラスが砕け散るような繊細な音に囲まれた紗夜は恐る恐る目を開いた。
「わ……すご……」
紗夜の前には、森の中の少し開けた広場があった。
人通りのなさそうな森の奥。視界の先には小さく王宮が見える。
「え、良さげじゃない?ひっそりまったりライフにピッタリ!!」
さっそく紗夜は水晶玉を取りだし、願った。
(えー、二階建て屋根裏部屋つきでアンティーク風のお家を1件!)
すると、水晶にいくつかの候補が映った。
「え、と?これってどうやって選べばいいのかな?」
スマホのように人差し指を使ってスライドすると、次のページが映った。
「あ、これいいかも…」
紗夜が目をつけたのは、白い壁とレンガの屋根、可愛らしい木の扉と小さな窓の着いた家だった。壁の筋交いもいい雰囲気を醸し出している。
「じゃ、これで」
水晶玉をタップすると開けた広場の中心に、水晶玉に映っていた家がエフェクトとともに現れた。
紗夜はドアを開けて中へ踏み込んだ。
小さな窓ばかりだと思っていたが、家の裏には大きな窓とベランダ、出窓も着いていて、更には天窓と吹き抜けもありとても明るく綺麗な家だった。
「よしっ、次は…」
紗夜は家具、小物などを次から次へと出現させた。
「こんなもんかな。」
紗夜は一息ついて見回した。我ながらいい出来だ。
1階は、2部屋に分け、出窓や大きな窓とベランダがある方を住居スペースに。最低限の広さだけを使い1人用のダイニングテーブルとイス、キッチンや現代で言う冷蔵庫の役割を果たすものなどを置いた。また、その近くには温泉をひいたお風呂など水周りも完備させた。
もう1部屋は、本のスペース。ハードカバーの物語本を主に置いていて、人がすれ違えるだけのスペースの通路を開け、本棚を綺麗に並べた。まるで図書館のようだ。
その部屋の片隅、縦長の小窓のある所には壁に沿ったL字ソファーとミニテーブルを。ここでくつろぎながら本が読めるようになった。
「次は2階ね。」
紗夜は目を輝かせながら階段をかけていった。
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