八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百七十話 神戸に戻ってその一
第二百七十話 神戸に戻って
僕達はトラックでヘリコプターを停めていた場所に戻るとすぐにヘリコプターに乗り込んだ。そしてだった。
最早一目散といった感じで神戸まで戻った、神戸の八条家のお屋敷のお庭に着陸して。
ヘリコプターから出た時に親父はお袋を抱いたまま俺に言ってきた。
「じゃあ俺はな」
「すぐになんだ」
「イタリアに戻るな」
「そうするんだね」
「こうした時はもうな」
それこそというのだ。
「すぐにな」
「戻るものなんだね」
「関西新空港にはジェット機をそのまま置いてもらってるんだ」
「そのジェット機に乗って」
「ヴェネツィアに戻るな」
「速いね、けれどこれでね」
「もう母さんは連中に捕まらないさ」
こう僕に笑って話した。
「前みたいなことはないさ」
「何ていうか」
お袋は僕に話す親父の言葉を横から聞いてだった、微笑んでこう言った。
「あなたは変わらないわね」
「ああ、俺はずっとな」
「変わってないのね」
「変わったところはあるかも知れないけれどな」
それでもというのだ。
「俺自身はな」
「そう思っているのね」
「ああ、だから今もな」
「すぐになのね」
「ヴェネツィアに行こうな、そしてな」
「そして?」
「ヴェネツィアに戻ったらな」
その時はというのだ。
「母さんの身体じっくり診てもらうな」
「どうしてなの?」
「ずっと閉じ込められてたよな」
親父はお袋を眉を顰めさせ悲しい顔になって述べた。
「だからあちこち弱ってるかも知れないだろ」
「あまり歩いていないっていうのね」
「実際あまり動いていないよな」
「監視つきでお庭に出たりしていたけれど」
「それでもあの部屋からだよな」
「基本出ていなかったわ」
「そんな生活何年もしていたらな」
それこそというのだ。
「色々弱ってるさ、人間ある程度身体はいつも動かした方がいいんだよ」
この辺り流石は医師という言葉だった。
「だからな」
「それでなのね」
「ああ、俺も診させてもらうけれどな」
「他の人にもなのね」
「俺じゃわからないところもな」
親父は外科だ、お医者さんといっても色々な科があって内科や放射線科、耳鼻科、眼科と診てもらう場所も様々だ。
「そうしてもらってな」
「それでなのね」
「ゆっくりと身体回復させていこうな」
数年間閉じ込められていたがというのだ。
「そうしていこうな」
「わかったわ、じゃあね」
「また空の旅になるけれどな」
「ヴェネツィアにね」
「行こうな」
「わかったわ、じゃあ義和久し振りに会ったけれど」
お袋は僕に笑顔を向けて声をかけてくれた。
「またね」
「うん、また会おうね」
「そうしましょう、親子なのに慌ただしいわね」
「そうだね、けれどお袋が無事でよかったよ」
僕の偽らざる本音だ、ずっと行方知れずだったのが今日会えただけでも奇跡だ。
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