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戦国異伝供書

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第八十八話 初陣その二

「そして敗れるやも知れぬ」
「どうしてもですな」
「その危険はありますな」
「戦をするには」
「そのことがありますな」
「左様、しかしな」 
 元就はあらためて述べた。
「謀はそうではない」
「戦とは違い兵も動かさない」
「そして銭も使わぬ」
「兵糧もその分残りますな」
「民も駆り出されぬ」
「流れる血も最低限ですな」
「それで済むからな」
 だからこそというのだ。
「戦よりもな」
「謀ですか」
「これからはそちらを主に使い」
「そうして家を守りますか」
「そしてまずは安芸を手に入れるぞ」
 この国をというのだ。
「よいな」
「では、ですな」
「その謀は」
「そのことは」
「わしが進める、謀を使うからには」
 どうするかもだ、元就は家臣達に述べた。
「徹底的にやる」
「容赦なく」
「そうしていかれますか」
「使われるには」
「うむ、例え世からどの様な誹りを受けようとも」
 それでもというのだ。
「わしはそれでもな」
「進めていかれますか」
「謀による攻めを」
「他の家に対して」
「そうしていく、乗っ取ったりすることも内輪揉めを起こさせることも暗殺もな」
 これもというのだ。
「用いる、そしてだ」
「そして?」
「そしてといいますと」
「今は吉川家と通じ」
 元就はその外交の話をした。
「結びつきを深めていく」
「そうされますか」
「今は」
「そしてですか」
「そのうえで、ですか」
「力を強めてな、そして今我等を狙っておるのは」
 元就はその目を鋭くさせた、そして酒ではなく水を飲みそのうえで家臣達に対してさらに話すのだった。
「武田家じゃ」
「あの家ですか」
「ではですか」
「あの家と対する為に」
「その為にですか」
「吉川家と誼を通じていきますか」
「そうする、そしてな」
 そのうえでというのだ。
「武田家と対する、そしてあの家が攻めてきたら」
「その時はですか」
「武田家と戦いますか」
「吉川家と手を結び」
「そして対しますか」
「そうする、そしてその時は」
 元就はさらに話した。
「わしもな」
「出られますか」
「そうされますか」
「ご自身が」
「その時がわしの初陣になるが」
 それでもというのだ、見れば元就はまだ若い。その歳は実はまだ十五にもなっておらず妻も迎えていない。
「思えばわしの歳ではな」
「初陣に相応しいですな」
「そうしたお歳ですな」
「そういえば」
「うむ、ならばそれを機にな」
 武田家との戦になればというのだ。 
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