【完結】RE: ハイスクール D×D +夜天の書(TS転生オリ主最強、アンチもあるよ?)
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第2章 見習い悪魔と不死鳥のハーレム団
第12話 赤龍帝と不死鳥と夜天の王と――誰がために鐘は鳴る
――時刻は、夜十一時四十分を過ぎる頃だった。
ボクは、家族と旧校舎にあるオカルト研究部の部室にいる。
各々のアームドデバイスを起動し、騎士甲冑を展開している。準備は万端だ。
リアス・グレモリーたちグレモリー眷属も、思い思いの格好でくつろいでいた。
アーシア・アルジェントが何故かシスター服だったが、他全員は、駒王学園の制服を着ている。
(主はやて、緊張しているようですね)
これから戦場に赴くというのに学生服は場違いな気がしないでもない。
が、木場は手甲と脛当を、小猫はオープンフィンガーグローブをつけていた。
ボクたちも、それぞれのアームドデバイスを手に持っている。
シグナムは、剣型の『レヴァンテイン』
ヴィータは、ハンマー型の『グラーフアイゼン』
シャマルは、ペンデュラム型の『クラールヴィント』
ボクは、騎士杖型の『シュベルトクロイツ』
(シグナムにはバレていたか。負けられない戦いだからかな。高慢ちきな男に好き勝手される趣味はないのでね)
(あの焼き鳥やろう。あたしがゼッテーぶっ飛ばす)
念のために説明すると、デバイスとは、メカメカしい魔法の杖だと思ってほしい。
普段は、待機状態となり、小型化して持ち運びがしやすくなっている。
ボクのシュベルトクロイツは、待機状態は、剣十字を模したペンダントだ。
(ご安心ください、主はやて。我らヴォルケンリッター一同、一命に代えましても勝利を捧げて見せます)
(うん。ありがとう。ボクには頼もしい騎士たちがいる。これほど心強い味方はいないさ)
(本陣の防衛は、お任せください。盾の守護獣の真価を見せましょう)
起動すると、騎士甲冑あるいは騎士服――防護服ともいう――と呼ばれる衣裳も身にまとう。
騎士甲冑は、好きにデザインできる。
たとえば、ボクの騎士甲冑は、原作の「八神はやて」と同様だが、鎧には見えない。
しかしながら、見た目によらず、全身を魔法で守る優れた防御性能を誇る。
起動状態のデバイスは、戦闘形態へと変化し、魔道師――ベルカ風にいうと騎士――の武器となるのだ。
ボクのデバイスであるシュベルトクロイツは、大人モード使用時のボクの身長を越える程度の騎士杖へと形態を変化させる。
杖としても短槍としても扱える頼もしい相棒だ。
(マスターもご無理をなさらぬように。我々だけでも、不死鳥を完封できましょう)
(リインフォースの言う通りよ、はやてちゃん。王は、どっしりと後方で控えているのがお仕事なのだから)
(わかったよ。ただ、止めは譲ってもらうからね。宣言どおり、おのれの分を弁えさせてやらないとね)
デバイスには種類があり、アームドデバイスとは、杖というより近接戦闘用の武器として扱うデバイスのことを指す。
原作で主流だったミッドチルダの魔道師に比べて、ボクたちベルカの騎士は、接近戦を好む。
したがって、自然と武装は、アームドデバイス一択になるのだ。
(さて、そろそろ時間、か。どうやら、彼らは、通信機器で前線とのやり取りを行うようだね。やはり、念話で気づかれずに相談できるのは、大きなアドバンテージだな)
開始十分前となり、部室の魔法陣が輝いて、銀髪銀目のメイド――グレイフィアが出現する。
「みなさん、準備はお済みになりましたか? 開始十分前です」
◇
――――午前0時
試合の開始時刻になった瞬間、結界につつまれた。
外の世界に影響を与えない異空間に包まれた戦闘用の世界らしい。
『そこではどんなに派手なことをしても構いません。使い捨ての空間なので存分にどうぞ』
とは、グレイフィアの説明である。いまも、グレイフィアの説明が、校内放送を通して聞こえてくる。
ボクたちが使う魔法にある封鎖領域とは、微妙に異なるようだ。
「わざわざ駒王学園そっくりのステージを用意するとはね……」というリアス・グレモリーの発言がそれを裏付けている。
封鎖領域は、結界で包んだ現実世界の位相をずらし、対象を取り込む魔法だ。
予めステージを設定しなければいけないのならば、シミュレーターに近いのかもしれない。悪魔の技術力も侮れない。
『今回の「レーティングゲーム」は両家の皆様も中継で今回のゲームの戦闘をご覧になります。更に、魔王ルシファー様も今回のゲームを拝見されております』
魔王が来ると聞いた兵藤一誠は、驚いていた。
しかも、現魔王がリアス・グレモリーの兄だと聞くと、さらに驚いていた。
原作知識通りの展開であり、面識もあるボクも、一応形だけは驚いて見せた。
はぐれ悪魔に両親が殺害された一件以来、彼にはお世話になっている。
力ある純血悪魔は、人間を見下す傾向が強い――にも関わらず、いろいろと便宜を図ってもらえた。さすが、情に厚いリアス・グレモリーの兄といったところだろうか。
明らかに異質な神器である『夜天の書』(そもそも神器ではないのだから当たり前だ)を所有しているボクを、守ってくれたのも彼だ。
全てが善意ではないだろうが、悪意――利用しようと、あるいは危険だから殺害しようとする連中はいたはずだ――から身を守ってもらえた。
(感謝をして当然だし、信頼もしていてもいいはずだが――なかなか素直に態度で表せない。ボクは捻くれているな。これが、「ツンデレ」というやつだろうか)
当初の約束通り、グレモリー家からの依頼は、少なくない数を引き受けていた。
受ける依頼の大抵は、はぐれ悪魔退治だ。憂さ晴らしができて、実戦経験も積める、おいしい仕事だった。
ボクが中学に入学する前までは、生活から護衛まで、守護騎士たちは必ず傍にいてくれた――実は、小学校と中学校は、ヴィータと一緒に通学し、同級生として仲良く学校生活を楽しんでいた。
守護騎士たちが、朝から晩まで傍にいたおかげで、ボクは寂しい思いをせずに済んだ。
(――どうした?はやて)
(ん?昔を思い出していてね。高校生になってから、ヴィータ姉と一緒に過ごせなくて少しさみしいなあ、と)
(うれしいことを言ってくれるじゃねえか)
高校進学と同時に、彼女と通学できなくなった。
その理由は――身体にある。
(ヴィータ姉は、成長しないからなあ。成長しないヴィータ姉は、一部で大人気だったっけ)
(うるせえよ。あたしに嫌なことを思い出させるな。はやても変身魔法を解けばおなじだろうが)
ボクは、いまとおなじように常に変身魔法をつかっていた。彼女も、変身魔法をつかえるが、常時展開することはできない。
向き不向きもあるが、常に人間(しかも成長した姿)に変身するためには、膨大な魔力と緻密な術式、それを運用する技術が必要だ。
いまでこそ、楽に大人モードでいられるが、必要に迫られ、最優先で努力した成果である。
(はやてちゃんは、必死に努力したものね。実際、高度な変身魔法を維持し続ける技術は、驚異的よ?)
(主はやては、努力家だからな。ヴィータも練習はしていたが、長時間の維持は難しかったようだ)
ある程度、ボクが身を守る術を会得し、社会的にも自由な行動が許されるようになってからは、家族と共に積極的に仕事をしていた。
単に依頼を受けるだけではなく、こちらからも、協力を積極的に申し込みもした。
(はやてが異常なんだよ。常に、変身魔法の維持に意識を振り分けながら、生活するんだ。あたしには無理だった)
(日常生活をしながら集中力を維持するためには、何事にも動じない精神が必要だ。主は、鋼の精神をお持ちでいらっしゃる)
シャマルが臨時保険医だったり、シグナムが臨時剣道顧問だったりするのは、その一環である。
駒王学園を職場に指定したのは、原作の舞台でとなることを「知っている」ためだ――ボクの護衛が表向きの理由だが、間違ってはいない。
(ボクが「鉄の女」とでもいいたいのかい、ザフィーラ?)
(いえ、そのような意味では断じて――)
戸籍や金銭といった面で支援を受ける以上、必要以上に借りを作りたくなかったことが、その大きな理由だ。
ボク自身、どこかの勢力に肩入れするつもりはない。
マルチタスクで、家族とのコミュニケーションをしつつも、辺りに意識を巡らす。
魔王の妹が参戦するだけあって、このレーティングゲームは注目の的らしい。
大勢の悪魔たち――おそらくは上級悪魔だろう――が、観戦に来ていた。
「さて、事前の取り決め通りいくわよ」
「はい、部長。では、二手に分かれましょう。よろしくお願いします、シグナムさん」
「ああ。木場祐斗もよろしく頼む」
リアス・グレモリーが、指揮官として、作戦の確認を行う。
堂々とした振る舞いは、非常に様になっている。
生まれ持ったカリスマと、たゆまぬ研鑽は、彼女に王者の風格を漂わせる。
「怪我をしたら、わたしに言って頂戴ね?」
「わ、わたしも『聖女の微笑み』で治療します。遠慮なく怪我していいですよ」
「いや、それはちょっと――」
「よし、あたしたち行くぞッ!」
「久々の実戦だな。塔城子猫も、油断しないように」
「ヴィータさん、ザフィーラさん。部長と八神先輩のために。いっしょに頑張りましょう」
「もちろんだ。はやてに手を出す奴は、アイゼンで潰してやる」
人数に余裕ができたグレモリー陣営だが、原作通り、二方向から攻めることになっている。
つまり、本陣と合わせて、3チームに分かれるわけだ。
攻め手の内訳は、木場祐斗、シグナム、シャマルチーム。塔城子猫、ヴィータ、ザフィーラチーム。となっている。
残る本陣に詰めるのは、『王』(キング)であるリアス・グレモリー、姫島朱乃、アーシア・アルジェント、リインフォース。そして――
「リインフォース。主はやての身を頼んだ」
「必ずマスターのことは、守って見せます。烈火の将たちも油断しないように」
「当然だろ。はやてを焼き鳥野郎に渡してたまるかよ」
「――兵藤くん。部長のこと、僕たちの分まで守ってくれ」
「任せておけ。お前たちも、急がないと。大勝首を俺が取るかもしれないぜ?」
「ずいぶんと大口を叩きますね――――兵藤先輩、期待しています」
――兵藤一誠、ボクの5人である。原作では、本陣に詰めていたのは、今のメンバーから、八神家、兵藤一誠を除くリアス・グレモリーたち3人だった。
切り札に近い赤龍帝の兵藤一誠を、なぜ本陣に置いたのか。それは――
「兵藤くん、ボクたちの役割は、わかっているね」
「もちろん。『予備戦力』として、本陣に待機するんだな?」
――予備戦力とするためである。戦略予備、後詰とも呼ばれ、前線後方に待機する戦力のことだ。
ときに劣勢な味方の増援として派遣され、戦線の崩壊を防ぐ。ときに優勢な味方の増援として派遣され、敵陣を突破する。
ときに別動隊として敵を包囲する。ときに撤退時の殿として、敵の攻撃を防ぐ。などなど。
このように、予備戦力は、多様な使い道を誇る。前線に出ている部隊の交替要因と誤解されがちだが、決定的な場面を左右する重要な戦力なのだ。
予備戦力の運用をみれば、指揮官の能力が分かると言っても過言ではない。
人数に余力のない原作ならまだしも、現在は、予備戦力は重要な意味をもつ。
使いどころは、王で指揮官のリアス・グレモリー次第だ。
おそらくは、本陣の旧校舎にあるオカルト研究部に割り当てられた部室の護衛、と敵本陣の新校舎にある生徒会室の強襲、に使われるだろうか。
「はやてたちの助力は、正直とてもありがたいわ。けれども、お互いのメンバーをチーム混ぜてよかったのかしら」
「たしかに、グレモリー眷属と八神家と分けた方が、連携という意味では上だろう。だが――」
「わたしの力を大勢の前で披露する機会でもあるわけね。お兄様を含めたお歴々の前で、フェニックス家の長男を撃破する。
わたしの実力を嘲り血筋目当てだけで、足元をみる輩はいなくなるでしょうね――ライザーのように」
そう。ボクたち八神家は、あくまでグレモリー家の客人にすぎない。
ボクたちが活躍してしまうと、たとえ勝利しても、「リアス・グレモリー」自身の能力が評価されないのである。
実力のない有象無象を避けるためにも、ボクたちはサポートに徹するべき――と、表向きの理由を説明してある。
むろん、嘘はいっていない。
が、本音としては、実力を曝して余計なやっかみを受けたくないだけだ。
「ライザーの『女王』であるユールベーナは強敵です。『爆弾王妃』の異名をとり、上空からの一撃は脅威でしょう」
姫島朱乃が、イヤホンマイク式の通信機器――戦場ではこれを使ってやり取りをするらしい――を配りながら言う。
(通信機器とは、ね。やはり、念話は大きなアドバンテージになりそうだ)
「リインフォースは、姫島先輩を補佐するように。上空は、空中戦ができる二人に任せるよ」
「承知しました、マスター。ユールベーナの相手は、私がしよう。姫島朱乃は、地上の援護を――」
「いえ、私も『雷光の巫女』の異名を誇っています。リアスの『女王』として、ユールベーナと戦わせてください」
「……いいだろう」
「ありがとうございます」
(ゲームの勝率は、五分五分――いや、こっちの方が有利かな。実力も、状況も原作より上だろうし)
(私もそう思います。ライザー以外は、任せてもいいでしょう)
『開始のお時間となりました。それでは、ゲームスタート』
つい先ほどまで、ゲームの説明をしていたグレイフィアの声が響く。
と、同時にあたりに木霊する学校のチャイム音。これが、ゲーム開始の合図となる。
――――レーティングゲームが幕を開けた。
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