夢幻水滸伝
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第百三十三話 高度を下げてその九
「そこはわかってや」
「わかってるで」
「ほなな」
「ここは迂闊には動かんで」
「そうして軍師さんの策通りに動く」
「そうしてくな」
「そうしてくで」
こう言ってだった、綾乃は今は迂闊に動かなかった。
そのうえで敵を待っていた、その敵である中国軍はというと。
六百四十万の軍勢が今まさに攻めんという布陣で崑崙の進行方向に布陣していた、だがその前線にはだった。
星の者はいない、見れば全員布陣の最後尾にいる。羅はその状況について苦い顔で施に対して言った。
「我としてはやな」
「後ろにおることはやな」
「好きやない」
こう施に言うのだった。
「どうもな」
「ああ、しかしな」
「これがやな」
「一騎打ちをせんで」
「そして勝つやり方やな」
「そら自分かてな」
施はここで本音を述べた。
「一騎打ちは好きや」
「六将星としてやな」
「戦の采配も好きやが」
「一騎打ちもやな」
「こっちも好きや」
何といってもというのだ。
「ほんまにな」
「そやな」
「ああ、けどな」
それでもとだ、施は羅に話した。
「勝つ為にはな」
「一騎打ちをあえて捨てることもやな」
「手でな」
それ故にというのだ。
「ここはな」
「あえてか」
「そや、もう捨ててな」
一騎打ちをしたい、その望みをというのだ。
「軍勢同士の戦に持って行ってや」
「そうして勝つか」
「そうするんや、ええな」
「わかったって答えるしかないか」
羅は自身の神具である青龍偃月刀を見た、振るえば全てを両断するとさえ言われその衝撃波で敵軍にさえ打撃を与えるその神具をだ。
その強さは知っている、それ故に言うのだった。
「ここは」
「そういうことや」
「そうか、ほなな」
「お互いそこは我慢してな」
「そうしてやな」
「日本に勝ちにいくで」
「わかったわ」
苦い顔だったがそれでもだった。
羅は自分達がいる陣の最深部である本陣のさらに一番奥の場所から六百四十万の軍勢を見た、彼と施の周りには二十人の星の者達がいる、そこから貝殻そして部下達を通じて軍勢の指揮にあたっている。
その中で莫は不安そうに郁に問うた。
「いや、数は圧倒していて」
「それでもでしな」
「そうです、わたくし達が勝つのは確実にしても」
「日本ですしな」
郁も不安を見せて莫に応えた。
「何をしてくるかです」
「わからへんのが」
「それを言うとでし」
「不安になりますね」
「どんとですし」
「おることですね」
「それが一番ですし」
「一騎打ちはしたいけどな」
今度は紅美が言ってきた、その手には彼女の神具である青雲剣がある。
「棟梁さん達から止められてるし」
「僕ちん達二十人全員が一騎打ちに出てもでしよ」
郁は紅美にも話した、バーバリアンの大柄な身体は郁よりも大きく強さも感じられる。
「日本はまだ星の人がいるですし」
「それも二十人以上も」
「二十人以上の星の人に好き勝手させたらでし」
それこそというのだ。
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