【完結】RE: ハイスクール D×D +夜天の書(TS転生オリ主最強、アンチもあるよ?)
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第2章 見習い悪魔と不死鳥のハーレム団
第9話 ウェディングベルは不死鳥とともに
「はやてお姉さまは、どう思われますか?」
「留学生のことかい?」
「ええ」
――謎の美少女が別のクラスに留学してくるらしい
今日のクラスは、留学生の話題で持ちきりだった。
この時期――しかも高校2年生という中途半端な時期――の留学は珍しい。
しかも、美少女という噂があればなおさらだ。
とりわけ、男子連中は朝から興奮状態である。
(駒王学園の女子はレベルが高いというのに、贅沢な話だ)
思春期特有の男子のノリにため息をつく。
同時に、自身のことを思い出して自嘲する。
(果たしてボクは、男なのか女なのか――身体は間違いなく女性なのだがね)
いまだ答えの出ない問題に思いを馳せつつ、会話を続ける。
むろん、マルチタスクの賜物である。
とはいえ、この学園は、7割近くが女子である。つまり――
「突然だもんね。普通、留学してくるなら、前もって知らされるはずなのにねえ」
「急な留学ということは、前の学校で何か問題を起こしたとか!?」
「ええぇー。問題児は勘弁してほしいな」
――噂話好きの女子が食いつく格好の話題なのだ。
珍しいということは、それだけでも興味を惹く。
なにかしらの理由――それが良かれ悪しかれ――がある可能性が高いのだから。
「普通」を尊ぶ日本人は、異端や例外には頑なだ。
反面、「普通」の枠内にいる身内には、とても優しいという美徳もあるのだが――
「――言い忘れていたが、彼女とは顔見知りなんだ」
言った瞬間、教室が喧騒に包まれる。
不本意ながら、ボクは有名人だ。
駒王学園三大お姉さまとして、良くも悪くも影響力を持っている。
そんなボクの知り合いということは、大きな意味をもつ。
「そうだったんですか。彼女には、その――」
「何か事情があるのではないか、かい?」
「え、ええ」
「グレモリー先輩の身内らしくてね。ずっと前から日本に興味があったらしい。
やっと念願がかなって、駒王学園に留学してきたわけさ。
少し前から、こっちに来ていて、ボクが色々と教えていたんだよ」
気まずそうに言い淀んだ彼女らに、「理由」を説明する。
安堵した表情の彼女らを見つつ、周囲に気を配る。
会話を聞いていたクラスメイトは、ボクの発言に納得したようだ。
ボクの知り合いということで、「見知らぬ留学生」から「お姉さまの知り合い」に晴れてジョブチェンジしたわけである。
「外国人かあ。日本語大丈夫かな」
「むしろ、あたしたちの英語の方が大丈夫かな」
話題も好意的なものに変わる。
もうひと押ししてやれば、大丈夫だろう。
「彼女はなかなか勉強熱心でね。会話は、とても流暢にこなせる。
ただ、読み書きは苦手なようだ。できれば、面倒をみてやってほしい。
とても、素直で優しい子なんだよ」
と、苦笑しつつも釘をさしておく。
まあ、会話ができるのは、悪魔がもつ翻訳能力おかげなのだがね。
本当に便利な能力である。
ちなみに、読み書きは、「もう少し頑張りましょう」といったところだ。
◆
アーシア・アルジェントが、学園に通い始めて、数日が経った。
外国人――それも美少女――ということで、クラスメイトは、距離を測りかねていた。
しかし、流暢な日本語で会話できる(能力がある)ことが分かると、予想よりも早くに打ち解けていった。
同じ二年生である八神はやてや木場祐斗が何かと世話をしていたというのもある。
しかしながら、彼女の性格が一番の理由だろう。
控え目で優しい性格でありながら、どこか放っておけない雰囲気をしている。
――そんな彼女は、クラスのマスコット的な存在となっていた。
学校に慣れるためという名目でオカルト研に入り、彼女は、毎日のように部室に入り浸っていた。
そんな彼女と一緒に、二年生の二人――八神はやてと木場祐斗――は、部室へと向かう毎日だった。
転生悪魔として、必要な知識を得るためであったが、読み書きを練習して学校に慣れる意味もあった。
しかし、とくに彼女が力をいれていたのは、神器を使いこなすことだった。
悪魔となっても彼女の本質は変わらない。
――祈り、癒す。
祈ると痛みが伴うようになってしまったが、信仰の拠り所である神を否定することはできないらしい。
『よりたくさんの人が病苦から助かりますように』
つまるところ、この一言に彼女の本質は集約されるといってよい。
より大勢を救おうと、日夜努力しているのだった。
そんな生活が二週間ほど続き、今日も旧校舎にある部室へと向かう
最近、彼女には、困っている――というよりは、困惑しているできごとがある。
それは――
(はやてさんは、どうして私と距離を置くようになったのでしょうか)
――八神はやてについてである。
アーシアは、彼女に深く感謝している。
ひょっとすると、現在、仲間として家族のように接してくれているグレモリー眷属の人たちよりも。
恩を感じているし、何かお礼をしたいとも思っている。
はやての助けになるのだったら、どんなことでもしてあげたいとまで、強く願っていた。
――――アーシア・アルジェントは、八神はやてに救われた
それが、彼女の認識だった。おそらく、グレモリー眷属も同様に思っているだろう。
堕天使の保護下で、窮屈で先の見えない生活を強いられていた。
何かに利用されるとは分かっていても、どうすることもできずに怯える生活。
そんな生活から抜け出すことができない、弱い自分自身が悔しかった。
そんなときだった。
『おや?お嬢さん。日本は初めてなのかい?――』
――――「八神はやて」という少女に出会ったのは。彼女は、唐突にアーシアを遊びに誘った。
『――よし、だいぶマシな顔になったかな』
――――はやてからは、いろいろなことを教えてもらった。心からの心配は、アーシアにとって、初めてだったかもしれない。
『沈んでいた理由を聞かせてもらってもいいかい?』
――――だから、巻き込むわけには行けないと思った。巻き込みたくないと祈った。お礼をいって、そのまま別れようとした。もう二度と会うことはないだろう、と確信しながら。
ところが、彼女は、付き添いの堕天使まで巻き込んで、再会の約束をしてしまった。
彼女の身を危険にさらしたくなかったアーシア・アルジェントは、反対したが、巧みな話術で、押し切られてしまう。
その後の数日は、彼女にとってかけがえのない幸せな日々だった。
毎日のように、遊びに誘い。毎日のように、遊んでまわる。
特別なことは、何一つなかった。が、彼女にとっては、そんなあたりまえが、何よりも「特別」だった。
そんな日々が続いたある日のこと。別れ際に彼女はいったのだ。
『――ごめん。明日は、用事があるのだ。ちょっと、お姫様を救うことになってね』
いたずらっぽく微笑む彼女に、「そうですか」と、少し悲しそうに返事をしたような気がする。いや、実際、悲しかったのかもしれないが、余り覚えていない。
なぜならば、別れの寂しさを吹き飛ばすような出来事が、次の日の夜にあったのだから。
(あのときは、本当に驚きました)
彼女が持つ神器、『聖女の微笑み』を移植する。と、堕天使に言われた時。
もはや、自分は死ぬのだと、諦観していた。
そのまま、気を失い――――
――――気づいたら、助け出されていた
その後、あれよあれよと言う間に、転生悪魔となり、平和な日常を手に入れた。
だから、アーシアは、はやてと一緒に、楽しい日常を過ごせるとばかり思っていた。
だが、当のはやてが、急に余所よそしい態度に、なってしまった。
彼女に尋ねても、
『まずは、グレモリー眷属と仲良くなってほしい。という、ボクなりの誠意の表れだよ』
と、いつもはぐらかされてしまった。
部長(リアス・グレモリー)に相談しようとしたものの――
(最近部長の様子がおかしいけれど、何か困りごとでもあるのでしょうか)
――彼女は、憂鬱そうにしており、新参の彼女が話しかけるのは、ためらわれた。
なによりも、他の古参の部員たちも、彼女とはやての微妙なすれ違いについて、とくに何もいわなかった。
だから、アーシアも時が解決してくれるだろう、と深く考えないようにした。
そんな、はやてや部長の態度を気にしつつも、おおむね彼女の生活はうまくいっていた。
いつものように彼女は、二年生の二人と連れだって、部室に行く。
部室に到着すると、部長が険しい顔をしながら、姫島朱乃と話し合っていた。
そんな彼女たちの様子を、木場祐斗と塔城子猫が気遣わしげに伺っている。
しかし、何より目を惹く異質な存在。それは――
――――メイド
何故かメイドがいた。
背後にいた二人も、驚き息をのんでいるのが分かる。
銀色の髪を三つ編みにして纏めており、瞳の色も銀色のメイド服を来た若い女性。
姿勢を伸ばし、微動だにしない彼女は、メイドの鏡のような存在だった。
しかし、雰囲気は、重苦しい。
物々しい雰囲気に気押されながらも、アーシア・アルジェントは、部長に問いかけようとして――
――――突如、魔法陣から熱気が溢れだし、火の粉が巻き散る
呆気にとられた彼女の前で、炎が散ると、中から男が出てきた。
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