戦国異伝供書
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第八十五話 四万十川の戦いその三
「欲しいが」
「それでもですな」
「今は言っても仕方ないですな」
「敵が持っていても」
「それでも」
「うむ、その鉄砲を持っている敵にもな」
元親は諸将達にあらためて話した。
「戦を挑みじゃ」
「そうしてですな」
「勝ちますな」
「これより」
「そして土佐一国を手中に収めますな」
「鉄砲はその後じゃ」
一条家を倒し鉄砲を手に入れた後でというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
「ではこれよりですな」
「戦ですな」
「一条家と」
「そうする」
こう言ってだった、そのうえで。
元親は本山にこう告げた。
「お主は一軍を率いてじゃ」
「そうしてですか」
「うむ、千五百程を率いてな」
そのうえでというのだ。
「これより北に向かいじゃ」
「そのうえで」
「そこから川を渡るのじゃ」
「そうすればよいですな」
「そうせよ、そして川を渡ればな」
元親は本山にさらに話した。
「一条家の軍勢を攻めよ」
「はい、それでは」
「その様にな」
こう告げてだ、そのうえでだった。
本山に千五百の軍勢を率いて北に向かわせた、だが元親はそれだけではく残った将帥達に対しても告げた。
「よいか、次にわしが言えばな」
「その時にですな」
「殿の命じられるままに」
「そのままに動けばいいですな」
「そうしてもらう」
こう告げて五千五百の軍勢を待機させた、そうしてだった。
一条家の軍勢の動きを見た、見れば彼等は。
本山が率いる軍勢の動きを見て浮足立った、慌ててそちらに軍勢を向けようとするが。
そこで元親率いる主力への警戒の目が緩みしかも。
「敵の動きが乱れていますな」
「どうにも」
「そうなっていますな」
「うむ、これはじゃ」
まさにというのだ。
「機じゃ」
「では、ですな」
「今よりですな」
「攻めますな」
「川を渡って」
「そうせよ、今こそな」
まさにというのだ。
「川を渡る時が」
「川には乱杭や逆茂木がありますが」
「それでもですな」
「今こそですな」
「そうしたものがあっても突き進むのじゃ」
そうせよとだ、元親は命じた。
「よいな」
「杭等ものともせず」
「そしてですな」
「川を渡りますな」
「その時は」
「そうする、そしてじゃ」
元親は川を見てこうも言った。
「乱杭なぞがあってもな」
「それでもですか」
「逆茂木についても」
「そうしたものについても」
「うむ、そうしたものは置かれていてもな」
それでもというのだ。
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