戦国異伝供書
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第八十四話 安芸家との戦その十二
兼序に追い出された一条家の家臣達を迎え入れ彼等に話した。
「ではお主達はな」
「これよりですか」
「長曾我部家に召し抱えて頂く」
「そうして頂けますか」
「うむ、しかしな」
ここで彼等に言うのだった。
「わしとしてはな」
「一条様とはですか」
「戦はしたくない」
「そうお考えですか」
「そうじゃ」
その通りだというのだ。
「そう考えておる」
「そうですか。ですが」
「一条様は去られぬかと」
「あくまで中村におられ」
「あちらで領主として生きていきたい」
「そうお考えかと」
「だからであるな」
元親も彼等の言葉を受けて言う。
「ご本家から去る様に言われてもな」
「中村からですな」
「都に戻れと」
「そう言われてもですな」
「戻られぬと」
「そうであろう、大友家の力もお借りしてな」
その戻った話もするのだった。
「そうされたのであろう、しかしな」
「それでもですな」
「殿としましては」
「それでもですな」
「うむ、ご本家はな」
一条家のというのだ。
「そろそろ中村の方に言われるという」
「最後のお言葉をですか」
「これ以上言うことを聞かれぬとなると」
「都に戻られぬとなると」
「それならですか」
「何が起こっても知らぬとな」
その様にというのだ。
「中村にお伝えされるという、そしてわしにもな」
「殿にもですか」
「中村を攻めてよい」
「その様にですか」
「ご本家の名代としてな」
その代わりにというのだ。
「中村を攻めてじゃ」
「そうしてですか」
「都に無理に戻って頂く」
「その様にですか」
「してもよいとの文もな」
それもというのだ。
「近々受け取ることになろう」
「では、ですな」
「それではですな」
「殿はですか」
「中村を攻められますか」
「その時が来ようとしておる」
まさにというのだ。
「いよいよな」
「ではその時は」
「我等もですか」
「戦に加われと」
「その様に言って頂けますか」
「うむ」
こう彼等に答えた。
「そうしてもらう」
「わかり申した」
「ではその時はです」
「先陣を務めさせて頂きます」
「長曾我部家の家臣として」
「宜しく頼む、ただな」
元親はここで彼等にこうも話した。
「ご当主殿の首は取らぬ」
「はい、それはです」
「我等もとても」
「かつての主でしたし」
「それは」
「そうであろう、だからな」
それ故にというのだ。
「わしもな」
「そこまでは、ですか」
「言われませぬか」
「左様ですか」
「一条殿の命は取らぬ」
絶対にという言葉だった。
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