DQ3 そして現実へ… (リュカ伝その2)
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鎹
<イシス>
「ちょっとリュカ!どうすんのよ!?」
目が泳ぎまくってるリュカの顔を、両手で押さえ詰問するビアンカ。
「ちょっと!リュカに馴れ馴れしいですけど、貴女は誰です!?」
リュカとビアンカの間に立ち塞がり、ビアンカを睨むレイチェル。
「あ~…どうしよう……何から説明すれば混乱が少ないだろうか…」
かなり動揺しているリュカ…何をどうして良いのか分からないで居る。
「女王様…色々込み入ったお話がございます故、後程で構いませんからお時間を頂けませんでしょうか?」
ティミーが一時、混乱を落ち着かせる。
「…貴方は?」
「は、私の事も後ほど説明させて頂きます。今は勇者アルル一行の一員とご理解下さい」
「………分かりました…では別室で待っていて下さい…」
そう言うとレイチェルは、側近の一人に手で合図し、アルル一行を別室へと誘う様指示する。
別室では重い沈黙の中、皆の視線がリュカへと集まる…
そして妻ビアンカが、不機嫌な表情で机を指で叩きながらリュカを睨んでいる。
その圧力が、皆の口を開かなくしている…誰も喋らない…喋れないで居るのだ!
(ガチャ!)
「大変お待たせしました!随分と込み入った話と言う事ですが…どうしました?皆さん暗いですね?」
重い雰囲気も頂点に達し、アルル達の胃も悲鳴を上げ始めた所でレイチェルが現れた。
「お時間を戴きありがとうございます。まず最初に自己紹介をさせて頂きます…私はティミー。リュカとは血の繋がった息子でございます」
「まぁ!?随分と大きな息子さんが居るのね!?」
「で、でしょぉ…凄いイケメンだし、レイチェルの彼氏にどう?」
「うふふふ…私は息子さんよりも、お父さんの方に気があるんですよ♡」
やり取りを見ていて、アルル達は胃を押さえてる…
「じょ、女王様…続いてご紹介しますは、私の妹のマリーです。…そして此方が、私と妹の実母であるビアンカでございます」
続いて紹介されるマリーとビアンカを見て、顔色を変えるレイチェル。
「…あら…私とは結婚できない事を、改めて分からせに来たのですか!?」
ビアンカを見据えて、冷たく言い放つレイチェル。
「いや…今日来た理由は違うんだ!…アルル!ほら、お願いしなよ!!」
話を変えたいが為に慌ててアルルに振るリュカ。
アルルも此処に来た用件を思い出し、レイチェルに懇願する。
・
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「…なるほど…分かりました。アルルの為、私に出来る限りの事は致しましょう」
レイチェルは力強く頷き、カンダタの噂を広める約束をする。
「いやぁ~、ヨカッタネ!無事カイケツダネ!!じゃぁ帰ろうかぁ!」
勢い良く立ち上がり、扉へ向けて歩き出すリュカ。
「まだでしょ!座んなさい!」
リュカのマントを掴み睨み付けるビアンカ。
「そうよリュカ!先程は妙なやり取りをしてたでしょ!?それの説明を!」
「いやぁ…別に大したことではないから…説明する事も…」
「リュカ!女王様は知る権利があるのよ!」
皆の視線がリュカに集中する…
《何度体験しても居心地が悪いなぁ…本人より先に分かっちゃうってのも問題だよなぁ…》
「はぁ…」
リュカは大きく息を吐き、真面目な表情に切り替えレイチェルに向き直る!
「レイチェル…お願いだから落ち着いて聞いて欲しい」
レイチェルは黙って頷く…リュカの瞳を真っ直ぐ見ながら。
「…僕には特殊な特技があるんだ。…それはね…妊娠してる女性に触れると、その人の中にある新たなる生命の暖かみを感じる事が出来るんだ!」
…………………………
誰も何も言わない…
皆、理解出来てない様だ………リュカファミリー以外。
「はぁ…今一意味が分からないんですけど…本人が気付いてなくても、リュカには分かっちゃうって事?」
「う~ん…ま、そう言う事だ「あ!ま、まさか…リュカさん…」
やっと思考が纏まったアルルが、リュカの台詞を遮り驚き叫ぶ!
「アルル…」
ティミーが静がにアルルの名を呼び、目で答えを告げる。
「さ、最悪な男ね…」
謁見の間でのティミーと同じように、アルルも頭を抱えて俯いている。
「え!え!?な、何?何なの!?…ねぇリュカ…もうちょっと分かりやすく説明してくれない?」
「うん。つまりねレイチェル…君のお腹には子供が居る。…やぁ、めでたいね!父親はさっきの大臣のオッサンって事で…」
リュカが最大限明るい口調で結論を告げる。
しかし後半の台詞と相まって、軽薄にしか聞こえない。
そんなリュカをアルルが白い目で睨む…
アルルだけではない…ビアンカもティミーも…カンダタですら…
誰もが呆れて何も言わない中、マリーが瞳を輝かせ喜びだした!
「きゃー!私に弟妹が出来るのですね!私がお姉様になるのですね!!」
それを見たレイチェルも一緒になって騒ぎ出した!
「そうよ、マリーちゃん!私、ママになるのよ!!リュカの子のママになるのよー!」
レイチェルとマリーは抱き合い、ダンスを踊るかの様に舞っている。
しかしアルル達は対照的に暗い面持ちでリュカを睨んでいる。
「どうすんねんリュカはん!」
「え?どうするって?」
「リュカさんは元の世界に帰るんでしょ!それなのにこの世界で子供作ってどうするんですか!?」
正直エコナとハツキも、今のレイチェルの立場になろうと画策していたのに、先を越された為リュカにきつく当たっている。
「………どうしよっかねぇ…困ったねぇ…」
まるで他人事の様な口調で話すリュカ…
(バン!!)
リュカの態度に見かねたティミーが、勢い良くテーブルを叩き立ち上がり、レイチェルに全てを打ち明ける。
「女王様!父は貴女に話してない事があります!それは………」
・
・
・
「………と言うわけで、我々はこの世界の人間ではございません!父は…リュカは、元の世界に帰り、国王として国を統治せねばなりません!身勝手ではございますが、それを了承して頂きたい!」
ティミーは誠心誠意事実を伝え頭を下げている。
リュカはそれを見て「頭下げる事ないのに…」と、小声で呟いていたが、それを聞いたビアンカに頭を押さえられ、一緒に頭を下げている。
「…なるほど…私と結婚して王位を継げないのは、こう言った理由だったのね…」
「違う!違う違う!!それは違うよレイチェル!」
寂しそうに呟き見つめるレイチェルに、リュカは近付き手を握り締め答える。
「結婚出来ないのは、僕には既にビアンカが居るからなんだ!国王だからでも、異世界人だからでもない!それに王位を継ぎたくないのは、本気で国王なんてやりたくないからなんだ!も、辞めたいんだけどさぁ…辞めさせてくれないんだよねぇ…」
不意に近付かれ手を握り瞳を見つめられ、顔を赤くするレイチェル。
「うん。分かったわ…でも、可能な限りイシスに帰って来てね。その時はフリーパスで私の元に来て良いから!」
「うん。そうするよ」
丸く収まりつつあるのだが、少し納得のいかないエコナが余計な事を呟いた。
「不憫やな…父親の顔も知らんで育つなんて…」
言わなくて良い一言が、更に言わなくて良いリュカの発言を呼び込んだ。
「じゃぁ…コイツあげる!」
そう言うとティミーをレイチェルに突き出すリュカ。
「イケメンだし、真面目だし…まぁ、何かの役には立つんじゃね?…弟か妹か分からないけど、『パパ』って呼ばせちゃえよ!」
(ブチ!!)
さすがに切れたティミーが、剣を抜き放ちリュカへと振り下ろした!
「おわ!あぶねぇ!!…当たったらどうすんだよ!ったく…真に受けんなよ!」
しかしそれを余裕で躱すリュカ。
「あ、貴方って人はぁ………」
怒りの収まらないティミーは、尚も斬りかかるが掠りもしない。
ティミーの剣技はレベルが違いすぎて、アルル達には止める事すら出来ない…
そしてそれを余裕で躱すリュカが、化け物の様に見えてきたのだ…
二人を止めたのは、妻であり母であるビアンカだ!
「いい加減にしなさい!!」
強烈な叱咤を受け、男二人が大人しくなる…
そこから延々とビアンカの説教を聞く事になる二人…
この時アルル達は納得した…
リュカを押さえられるのは、この女性だけなのだと…
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