【完結】RE: ハイスクール D×D +夜天の書(TS転生オリ主最強、アンチもあるよ?)
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第1章 これから始まる物語
第6話 旅は道連れ、世は情け容赦してくれない
バイサーを倒した翌日。
兵藤一誠は、木場祐斗、八神はやての傍にいた。
約束通りオカルト研の部室で、昨日の説明してもらうために、だ。
ところが――
――――放課後の教室は異様な熱気に包まれていた
(……どうしてこうなった!?)
◆
話は少し前にさかのぼる。
帰りのHR(ホームルーム)が終わり、クラスメイトたちは、そそくさと席から離れていこうとする――その最中、廊下から呼び声がかかった。
どうやら、先にHRが終わっていたようで、彼は教室の扉の前で待っていたらしい。
とくに、珍しい光景ではなかったといえる。ありふれた日常だ。
「やあ、二人とも。待っていたよ」
――――その声の主が、女生徒に人気のイケメン男子でなければだが。
しかも、声がかかった人物も大問題だった。
なにせ、駒王学園の三大お姉さまとして名高い女生徒と、悪名高い変態だったのだから。
浮いた噂を聞かない美男美女の二人に、変態を加えた3人組。
奇妙な組合せを前にして、クラスメイトたちが面喰らうのも仕方がないといえよう。
木場祐斗は、その容姿や言動から、クール系なイケメンとして女生徒に支持されている。
しかしながら、女性に興味を示さないとして有名だった。数多の女生徒が撃沈している。
八神はやては、三大お姉さまの一人である。
ボーイッシュな性格、女性に優しく、凛々しい姿。
一部の百合百合しい女生徒に熱狂的な信者をもつのも道理だろう。
さらに、男性に興味がない、と本人が公言している。
とはいえ、特定の女生徒と親しいわけでもなかった。
兵藤一誠は、エロ魔人であり、変態として、女生徒から嫌悪されている。
おっぱい紳士を自称するオープンな変態である。
男子生徒には妙な人望があるが、女生徒からは、倦厭されていた。
つい先日も、他校の女子に告白されたと騒いでいたが、振られたと噂されていた。
――――最近、木場祐斗と兵藤一誠が一緒にいる姿が、よく目撃されるようになったらしい
掛け算好きな女生徒の間では、攻守のポジションについて、熱い議論が交わされている――――なお、木場祐斗は、寒気を感じるようになったという。
その話題の人物たちが、ボーイッシュな性格で有名なお姉さまと接触した。
しかも、イケメン王子こと木場祐斗が、女生徒の帰りを待つなど、入学以来初めてに違いない。
変態紳士こと兵藤一誠にしても、八神はやてはからは、避けられている節があった。
三大お姉さまこと八神はやてに至っては、いつも女生徒に囲まれ、木場祐斗と兵藤一誠とは、絡みが一切ない。
――実は、接点がない理由は、原作への影響を恐れて、木場祐斗や兵藤一誠といった原作キャラとの接触を、八神はやてが、控えていたことに起因している。
だが、周囲からは、「面識のない男女3人が、急にお近づきになった」という事実しか分からない。
―――以上が、教室で渦巻く異様な熱気の正体である。
「ここは『今来たところだよ』というのが、男子のあるべき姿ではないかな?」
「それはすまなかった。僕はそういった男女の機微には疎いものだからね」
他人なんて知ったことねえ、と無視しているのか。
あるいは、注目をうけることに慣れているのか。
廊下で待つイケメン男子こと木場祐斗。彼と相対する三大お姉さまこと八神はやて。
お似合い――ルックスや学内の評判という意味で――の二人は、気にした様子もなく会話を続ける。
そんな彼らの傍らで、変態こと兵藤一誠は――周囲から向けられる好奇の視線にさらされ――戦慄していた。
事情を知らぬ人間がみれば、なんとも不可思議な光景だった。
「ふむ。ならば、なぜ迎えに来たんだい?それともまさかデートのお誘いなどと、言い出さないだろうね?」
「面白いことを言うね。もし、ここで『実は、デートの誘いに来た』といったら、どうするつもりだい?」
――――なぜ、平気な顔をしながら、地雷のような会話にいそしむことが出来るのか
兵藤一誠としては、すぐさまオカルト研の部室に向かいたいところだった。
だがしかし、せめて要らぬ誤解や邪推をなんとかしないと、大変なことになるだろう
――――主に彼自身が。
教室には緊迫した空気が漂っている。誰もかれもが疑問をもてど、とても口を挟める状況ではない。
必然的に、皆が彼らの会話に意識を集中することになる。
「兵藤くんと三人でデートかい?なんとも、不健全なお付き合いだな。兵藤くんはどう思う?」
(おい、なんてこと言いだすんだ!)
今の今まで、除け者にされていたはずなのに、最悪のタイミングで話題を振られて固まる。
彼は、いつもの明るさが見る影もなく冷や汗をかいていた。
クラスメイトたちから向けられる、様々な感情――興味、嫉妬、敵意など――は、見えない重荷となって、彼を押し潰さんとしている。
特に、エロ仲間たちからの視線は、憎悪どころか殺意まで感じられるありさまだった。
「い、いやあそうですネ。八神さんのような女性なら大歓迎デスヨ?」
彼は、無難に返答した――つもりだが、まったく状況は好転していない。
とにかく、居心地の悪さをどうにかしてほしい気持ちで一杯だった。
「そうかい?まあ、冗談は置いといて――」
(ってオイ、冗談なのかよ!?)
「――木場くんが、誘いに来るとはね。グレモリー先輩に気を使わせてしまったかな?」
「ああ。一応、旧校舎は一般生徒が立ち入りできないからね。僕が案内役を仰せつかったのさ」
「なるほどね。では、喜んでエスコートされるとしようか。だが、兵藤くんについていけば、済む話ではないかな?」
「僕もそう言ったんだけどね。部長曰く『ゴシップを避けるために必要な措置』らしい」
なんとか弁明しようにも、雰囲気が許してくれそうにない。
彼にできることはただ、嵐が過ぎ去ることを祈りながら、待つだけであった。
――普段ならば、美人と会話する木場に対して呪詛の一つでも送るところだったが。
『グレモリー先輩に頼まれた木場裕斗が、兵藤一誠と八神はやてを迎えに来た』
すでに、事実が明らかになっているにも関わらず、好奇の視線は霧散しない。
滅多にない組み合わせに興味津津なのだ。
(い、生きた心地がしねえッ…!)
「――なるほど。確かに得心がいったよ。現に、クラスメイト達は噂話に忙しいようだしね」
「オカルト研究会の部室に誘うだけだと言うのに、大げさすぎるとは思うけどね」
「まあ、ゴシップ云々を置いておいても、キミがボクを誘う構図は、とても珍しい。仕方ないさ」
「そうかもね――」
その後、しばしの間、歓談する二人。
ときおり、兵藤一誠のほうにも話題が振られるが、彼は生返事しかできなかった。
なんというか、もういっぱいいっぱいだった。
盛り上がる二人の会話。
比例して高まる教室の緊張。
それぞれが、ピークに達したそのとき――――
「――おっと、少々話し込んでしまったようだ。早く行こう。ついてきてくれ」
「ああ。キミとの会話はなかなか楽しかった。つい話し込んでしまったよ。兵藤くんには、すまないことをした」
「い、いや、いいんだ。八神さんと俺は、グレモリー先輩に頼まれた木場に迎えに来てもらった『だけ』なんだからな!!」
渦中の一人、兵藤一誠は、ようやく解放されると喜んだ。
と同時に、釘をさす発言も忘れない。
かくして、残念そうな、安心したような、ゆるんだ空気が教室を漂い
――ようやく彼は安堵することが出来たのであった。
(ハーレムを目指すなら、これくらいの注目は流せるようにならないとな。嫉妬されるのは間違いないだろうし)
なんだかんだで、平常運転な彼だった。
少々の苦難では、へこたれない姿は、まさに「漢」であった
――とは、クラスメイトの一人(変態)が後にした証言である。
◇
部室なう。
――ってわけで、やってきたオカルト研の部室。
魔法陣やらシャワールームやら、目を引くものが多々ある魔窟であった。
いま、お互いの自己紹介をしているところである。
「じゃあ、まずはボクからいこうか。ボクは神器もちで、名前は『夜天の書』というんだ。
昨日使って見せた魔法もその一種だよ」
「へえ、すごいな。悪魔しか魔法は使えないと思っていた」
「あら。一誠君は知らないようだけれど、人間にも魔法使いはいるわよ?
彼らは、悪魔の魔法を下地にして、人間用に改良しているの。
わたしの眷属として活動していれば、そのうち出会うこともあるかもね」
兵藤一誠は、ボクが悪魔でもないのに魔法を使えると聞いて、非常に驚いていた。
だが、そういう神器だと言われて納得したようだ。
他のグレモリー眷属は、異質な神器に少なからず疑問をもっているようだがね。
どのみち、原作に関わっていく以上、隠している力を解放することになるだろう。
――――リリカルなのはの魔法や夜天の書は、様々な意味で、この世界では「異常」である
「それで、どんな魔法が使えるんだ?」
「それについても説明する。他にもいろいろと機能があって、たとえば――」
まず、人間が扱える魔法。
歴とした科学として成立しているプログラミングで成り立つ魔法技術。
騎士甲冑は、オートガードとして優秀だし、飛行魔法で自由に飛びまわることができる。
非殺傷設定なんて、概念すらないだろうし、プログラム体であるボクたちは、半不老不死といえる。
サーチゃーで気づかれずに監視出来、自由自在に個人で転移出来ると聞いたらどうなることか。
とりあえず、ここでは適当にごまかしておく。
「――といった具合かな」
「なるほどねえ。わたしも知っていたとはいえ、あらためて聴くと、デタラメな性能よね。
あなた達が使う魔法は、他人が行使することはできないのかしら」
「以前に、申し上げたとおりです。ボクとボクの家族だけですよ」
次に、夜天の書。
元の世界ですらロストロギア認定された破格の性能をもつ魔道書である。
守護騎士や管制人格の実力は非常に高い。
ボクを含めた皆が、夜天の書に記載されている魔法を扱うこともできる。
加えて、夜天の書内の防衛プログラムが正常化したことで、主であるボクは保護下におかれている。
すなわち、プログラム体になり、防衛プログラムに本来搭載されていた修復機能の恩恵を受けることができるのである。
「ん?家族が使えるのなら、他の人間も使えるってことじゃないのか?」
「鋭いね。ボクには5人の家族がいるんだけど。彼女たちは皆、夜天の書に付属した存在なのさ。
昨日、兵藤くんは、現場で銀髪の女性をみただろう?彼女もその一人なんだ」
「マジかよ。あの巨乳さんは、人間じゃないのか。今度、是非紹介してください」
「だが断る」
――まあ、弊害として成長できないのはご愛敬だ。
おかげで、ヴィータといっしょに、永遠の9歳児に仲間入りしてしまった。
実は、普段の姿は、変身魔法を使っている。
原作にもでてきた「大人モード」を参考に、成長した姿をイメージ化した。
アニメ第三期の「八神はやて」といえば、近いだろうか。
「さて、ボクの自己紹介は、こんなところだ。次は、誰にする?」
「そうねえ。一誠君以外とは面識があるのだし、彼が自己紹介すればいいわよね」
「おう。俺の番だな。俺も神器もちだ。最近、発現したばかりで、まだ扱いこなせていないんだが――」
最後に、ボク自身。
無尽蔵の魔力に、夜天の書の主という立場。
希少技能である「蒐集行使」を何故か所持しており、単独でも戦える。
「蒐集行使」とは、夜天の書にある魔法を、管制人格の補助なしで行使できる希少技能である。
原作では、リインフォースが託した贈り物だったはずだ。
彼女は、自身の消滅に伴い、「八神はやて」に夜天の書のデータを託した。
その結果、希少技能が備わることになった――少なくともボクがもつ知識では。
――――こちらのリインフォースは健在であるが、別行動しても大丈夫なのは、有難い限りだ
しかしながら、リインフォースとユニゾンしたときこそ、ボクは真価を発揮する。
駒王町をまとめて消し飛ばせる広域せん滅魔法を連射できるといえば、その凄さがわかるだろうか。
ゆえに、ユニゾンは奥の手として、ぎりぎりまで隠すことにしている。
ユニゾンすると、変身魔法が解かれ、幼女姿を曝すことになることも理由のひとつではある――――もちろん、周囲には秘密だ。
「――っていうわけなんだ。正直、実感がわかないけれど、上級悪魔目指して頑張るつもりだ」
「『上級悪魔』ね。領地を手に入れて、女性の眷属でも手に入れようってのかい?」
「うぐッ」
「さすが、八神先輩です。一発で見抜くとは」
「簡単なことだよ、塔城さん。これでも一応クラスメイトだし、彼はわかりやすい性格をしているしね」
「つまり、単純ってことですね。兵藤先輩にもっと言ってやってください」
そんな本心を隠しつつも、『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』の説明を聞いて、
さも、はじめて知ったかのように驚いてみせた。
ドヤ顔の兵藤一誠が若干ウザかった。が、なにせ伝説の装備を手に入れたのだ。
少しぐらい有頂天になったとしても、仕方がないかもしれない。
ボクだって、夜天の書をもっているのだから、人のことはいえないだろう。
「さて、自己紹介はこれでお終りね。
さっきも説明したけれど、はやてと家族たちには、はぐれ悪魔の討伐などで協力することが多いのよ。後日でいいから、他の人たちと顔合わせしたほうがいいわね」
「そうだね。ボクたち家族は、グレモリー家の客人扱いになっている。
だから、厳密には悪魔陣営とはいえないけれど、基本的には共闘関係にあると思っていい。
今後、家族に会う機会もあるだろうから、会った時にでも紹介するよ」
その後、いくつかの決まりごとや他愛もない雑談をしてから、お開きになった。
教会を監視しているサーチャーからは、アーシアの様子が送られてきている。
やはりというか。あまり扱いはよくないようだ。
なんとかしてやりたいが、グレモリー家の客人であるボクでは、
堕天使に干渉して、戦争のきっかけをつくることになりかねない。
原作知識のとおりなら、堕天使の総督であるアザゼルは戦争否定派だ。
が、コカビエルのような戦争狂もいる。迂闊に動くことはできない。
――――偽善かもしれないが、ボクは、ボクにできる限りのことをしようか
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