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人類種の天敵が一年戦争に介入しました

作者: C
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第25話

 
前書き
お久しぶりです。一年以上空きましたね。自分のPCに全然触れてないんですよ、親が使っていて。アベマ見るなら自分のを使えと。ここ半年でいえば今日で二回目ですかね、PC触れるの。泣ける。今も後ろからはよ代われと圧が凄いです。
一年以上かけて推敲が足りないとか自分でも意味わかりませんけど、どうぞ。 

 
 砂塵を上げて滑走する鉄の巨人。巨大な筒を担いだ鈍重そうな見た目にもかかわらず、右に左に軽快に巨体を振り、放たれる砲弾を躱していく。巨人の単眼が上を向くと、その背面から空に向かって光と煙が吹き上がる。デコイだ。巨人を狙ったミサイルのほとんどはが打ち上げられたデコイに釣られて空に消えたが、残ったミサイルでも仕留めるには十分。巨人は逃げの一手か巨体を傾けて右方向に一直線に振り切るつもりかと思いきや変針して真正面、追尾ミサイル群に向かって再加速、からの左に横っ飛び。コの字を描く動きで見事すべてのミサイルを躱し切った。
 ミサイルは横一直線の動きを追うことで軌道を揃えられ、急接近で角度を付けさせられ、反対方向への急加速で目標を見失ってしまったのだ。顔のすぐ前と腕を伸ばした状態で手を振って比べてみればわかるだろう。遠ければ追えるものも近ければ追えなくなるのだ。さらに、ミサイルは徐々に加速していく。加速し続けたままの急な変針に曲がり切れなかったのだ。
 追尾ミサイル群をやり過ごして荒野を滑走していた巨人はそのままの勢いで市街地に突入し、そこで世界は形が乱れて止まり、一気に暗く、何も見えなくなった。映像が終わったのだ。
 プロジェクターが止められ徐々に室内の明るさも戻ってきたが、この映像を見せられた人間は声もなく固まっていた。平気なのは見せた人間だけ。髪も髭も白く一見したところ老人だが、それでも眼光鋭く体格もよく、本来なら退役間近でであったことなど微塵も感じさせない堂々たる風格。地球連邦軍大将、ヨハン・イブラヒム・レビルである。小さめの会議室にレビルの声だけが流れる。

「……ここから先の映像はない。画面には映っていなかったが他に二機、同型のモビルスーツが別方向から同時に市街地に侵入、攪乱して離脱していった」
「……」
「レイ大尉、これがつい先日確認されたジオンの新型だ。従来のザクとは全く違う新型……これに対するにV作戦を見直すべきではないかという声も……」
「必要ありません!」

 突然の大声。大将の話を大尉が遮る。そんな無礼を全く気にせず、沈黙を破ったテム・レイ大尉は捲し立てる。

「確かにRGM系列の仮想敵はザクを想定していますが、この新型機にも十分対応は可能です。そもそもこの新型機には今見ただけでも指摘し得る問題、欠陥とも言うべき問題があり……」
 
 言葉を紡ぎながら立ち上がるとプロジェクターを操作し、新型機の全身像が捉えられる画面で止める。

「映像の中では使用されていませんが、この右肩に担いだ武装、これは後部の形状からロケットではなく無反動砲、ザクのものよりもかなり大きな無反動砲です。一方で、逆の手に握られた機関砲ですが、これもザクのものとは形状が異なります。おそらくこちらは口径が小さいでしょう。理由はホバー推進の欠点にあります」
「……」
「ホバー推進というのは、いうなればスケートをしているようなもので、重心の低い車両型、船艇型ならともかく重心の高い人型のモビルスーツにとっては非常に不安定です。この状態では反動の強い武装は使えませんから、このような、無反動砲と小口径銃といった武装にする他ありません。不安定ですから動作にも制限が付きますし、それは射角にも制限が付くということです。この新型機は限定された武装と動作、戦い方しかできず、それはモビルスーツという兵器の持つ運用の柔軟さを失っています。速度というアドバンテージは一対一では大きな脅威となりますが、RGM系列で想定しているわが軍のモビルスーツの運用方法においては……」

 レビルが指を立てた。待ちたまえ、あるいは、もうよい、という意味だが自分の作品にケチがつけられたと考えた技術者はとまらない。

「……そもそも既存の兵器に対するモビルスーツの優位性とは他の動物に対する人間の優位性に等しく、いたずらにそれを失うことは兵器としての優位性を欠くことに……」
「わかった」
「……他にもRX-77のデータを流用したRGCの開発が……」
「レイ大尉」
「……何よりもRX-78の完成がわが軍の勝利を確実なものと……」
「大尉」

 大きくはないがよく通る声。万単位の兵士に戦って死ねと言える将校の声。人を従わせる事に慣れた声だ。さすがの技術バカも何をしていたかに気づき、青くなったり白くなったり。プロジェクターの操作端末を机に置くと、ぎくしゃくと椅子に座りなおす。

「レイ大尉」
「はっ」
「大尉の認識は正しい」
「はい。……はいぃ?」
「映像を送ってきた欧州方面軍も、解析した技術本部、参謀本部、陸軍省も同じ見解だった」
「はっ、はい。ありがとうございます」
「だが……」

 レビルの視線が技術バカを貫く。

「それもこれも、モビルスーツを実戦配備してからの話だ」
「……ッ!」

 連邦軍にもモビルスーツはある。だがそれは、現時点ではどれもこれも実戦に出せないものばかりで、つまりはモビルスーツがないというのと同義語だ。
 無意味に小出しにするわけにはいかない。鹵獲され、研究され、対策を立てられてしまう。コロニー落としで限界ギリギリの地球連邦軍としては、数年がかりの長期戦は避けたい。故に反攻作戦は新兵器であるモビルスーツの大量配備、大量投入で一気呵成に片を付ける。それまでは通常戦力でジオン公国軍の消耗と足止めを考えていたのだが……

「遅すぎた。2月のうちに通せていればな……」

 レビルの声は呻くようなものだった。
 地球連邦軍の反攻計画、そのカギを握るV作戦。試作モビルスーツ開発計画であるRX計画と壊滅した宇宙艦隊再建のためのビンソン計画を中心とした再軍備計画だが、その歩みははかばかしいものではなかった。
 地球連邦軍はモビルスーツの実戦配備を実現できていない。しかし、独自開発したRGM系列など、ジオンのザクにも引けを取らないモビルスーツを開発済みだ。実戦配備できていないのは、大量生産とパイロットの育成が終わっていないからだ。戦場に出せないだけで、すでにモノはある。今すぐとはいかないが、調達の目途も立っている。時は4月末、1月にジオン公国軍のモビルスーツに叩かれた地球連邦軍は、僅か3か月で新兵器の開発を終了した……わけはない。なんのことはない、RX計画は戦前から進められていたのである。そのためモビルスーツの開発は順調だが、包括的な反攻作戦であるV作戦全体としては微妙、という進捗状態になっている。
 戦争継続で軍内部をまとめ、政府もそれを承認した。だからこその南極条約だったが、肝心のV作戦の発動はレビルの想定を大幅に遅れて4月となった。V作戦の内容で揉めに揉めたからだ。
 RX計画は戦前から存在した。ジオンのモビルスーツの存在を連邦は把握していたからだ。ジオンのモビルスーツに対する連邦のRX計画である。にもかかわらず開戦と同時にジオンのザクにいいようにやられ、決戦たるルウム戦役で大敗し、コロニーの落下を許した。連邦軍上層部がモビルスーツの戦力評価を誤り、RX計画を試作機の開発のまま放置し、特に対抗手段も取らず、従来の戦術に固執したからだ。これ全て現在の連邦軍上層部の責任である。新体制で戦争継続が決まったということは、旧体制の責任が追及されるということでもある。このことで軍内部での熾烈な責任の押し付け合いがあったことは想像に難くない。新体制の掲げるV作戦に容喙することで利益を得ようという輩が現れるのも同じだ。コロニー落としの混乱の中で壮絶な派閥闘争、権力闘争が繰り広げられ、結局はV作戦の発動は4月。すでに地球連邦の版図から北米を失った後である。
 仮に4月が2月でも、北米陥落は変わらなかっただろう。それは技術屋に過ぎないテムでもわかる。それでもレビルが二ヶ月の遅れに固執するのは。

「レイ大尉」

 小声というほど小さくはない。しかし、テムにとってその声は聞こえたのが不思議なほど聞き取りづらく感じられた。

「欧州はもう限界だ」
「……」
「もとより旧ユーロ圏の戦力は高いとは言えない。撃退よりも可能な限りの遅延と戦力維持を命じていたが……それとていつまで持つか」

 現在のタイムスケジュールによれば、モビルスーツに乗せるための機種転換訓練や部隊への配備が完了するのが10月いっぱい。陸軍省の提案した補助計画を考慮すれば、全軍は無理でもある程度の数を7月中に用意できるだろう。それはつまり、反攻計画の見直しが必要になるものの、それでも7月からまともに戦うことができるということだ。V作戦の開始が二ヶ月早ければそれが5月になっていた可能性がある。危機に陥っている欧州方面軍に、間一髪で起死回生の新兵器を配備できた、かもしれないのだ。
 先に記したように、早期配備は早期に研究、対策されることを意味するため、つまずく可能性を考慮に入れる分だけ反攻計画の見直しは必須となる。それでも欧州が完全平定された状態からの上陸・奪還作戦をするよりはマシだ、という考え方もある。誰も好んで敵前上陸などしたくはない。そんな危険を冒すよりは、ある程度手の内を知られることになろうとも欧州に陣地が残った状態、最低でも至近のブリテン島と対岸の上陸候補地一帯は確保していたい。5月中にモビルスーツを投入できていれば決して不可能な話ではなかったが、現実には最短で7月。二ヶ月も海岸で耐えろというのは不可能だ。というより、そんな状況に追い込まれてしまえばどれほど精強な軍でも一日で、いや一瞬で崩壊する。
 地獄のDデイ再び、という気配に、いくらタカ派のレビルとはいえ弱気が少し顔をのぞかせるくらいには気落ちしているし愚痴も出る。
 つい先日までサイド7の研究所にいた上に実戦士官ではないテムには、戦略もレビルの抱える焦燥も分からない。それでも常識でわかることはある。一般論とわかっていながら声をかけた。

「レビル将軍、欧州本土を一時的に制圧されようとも、水上戦力で優位なわが軍ならブリテン島を抑えていればそこからの欧州開放も十分可能と思われますが。私には政治のことは分かりませんが……」

 テムの不器用な慰めをレビルの声が叩き切った。

「これは純粋に軍事的な問題なのだよ。連邦議員や軍の派閥など、何ら問題ではないのだ」
「……はい」
「ユーロトンネルはモビルスーツでは通過できん。高さが足りんし、ブリテン島の出口は我々が抑えたままだからな。運よくコロニー落としにも残ったものの、トンネル内部で戦闘になれば今度こそ崩落の可能性もある。故に、たとえカレーを奪われようともトンネルの通過、陸路での通過は不可能だ。だが……英仏海峡は狭いからな。長くても180km、最狭部のドーバーなら34kmしかない。だからこそ欧州方面軍の支援に向く要地だったのだが……映像から判断してジオンの新型は時速200kmを超す。この新型なら、簡単な改修や補助装備があれば海峡を直接渡ってくるだろう、というのが参謀本部の結論だ。映像のそのままに渡ってくる可能性も指摘されている」
「洋上での迎撃は……」
「十分な水上艦艇がないのだよ……これは極秘だが」

 レビルが口を滑らせた内容にはテムも驚くしかなかった。コロニー落としの被害は宇宙にいたテムも承知している。しかし同時に、北大西洋は津波の被害が比較的小さいことも理解していた。地球連邦軍にとっても、大西洋に残された水上艦艇群は最大戦力だったはずである。それがもはや存在しないとは。ジオンにはまともな航空戦力がなく、それに輪をかけて水上戦力には乏しいはずだが、いったいどうやって地球連邦軍の水上戦力を撃破したというのか。
 地球連邦軍の艦艇は、武装ゲリラの鎮圧や海賊退治のためにミサイルよりも艦砲に注力していた。同格の仮想敵が存在しない地球連邦軍の水上艦艇においては、ミサイルよりは艦砲のほうが運用もしやすく財布にも優しかったからだ。ジオンお得意のミノフスキー粒子で誘導ミサイルを防げても、最初から無誘導の艦砲の砲弾には関係ないはずだ。ザクにまともな水上戦も水中戦もできないことはわかっている。ならば、いったいどうやって? まさか宇宙から洋上の艦艇にモビルスーツで直接タッチダウンしたとでもいうのだろうか。
 ありえない状況に困惑しきりのテムを脇に置いて、レビルは新しいデータを画面に映した。本来なら誰か適当に呼んでやらせればよい作業なのだが、今から流す映像は秘中の秘、それがたとえ自身の副官にすらも見せるわけにはいかない。そのためにこの会議室は人払いをしてレビルとテムの二人きりなのだから、レビルが手ずから作業するほかない。
 
「これも極秘だが、三月六日に欧州で反攻作戦が行われた。残念な顛末は、貴官も耳にしていると思うが」
「はぁ。確か、戦闘の余波で付近の坑道が崩落。崩壊した斜面から遺棄されていた放射性物質が漏洩し、現地に重大な汚染をもたらしたとか。わが軍は即時全面撤退、それでも重度の被ばくでかなりの被害が出た、と。一方のジオンはノーマルスーツのおかげで被害がほとんどないようだ、とも。事実上の南極条約破りだとか実は核兵器が使われたとかで互いに公式の抗議と非公式の協議をおこなっているとかいないとか」

 レビルの問いに対するテムの答えは民間のメディアと軍の公式発表、畑違いといえど軍人として耳に入ってくる噂の闇鍋とでもいうべきものだった。自然に集まった情報を並べただけのものともいえる。もちろん、情報を流す人間は何らかの意図をもってそれを行うため、取捨選択せず裏もとらない情報の寄せ集めは真実からほど遠いものとなっている。

「そうだ。そしてそれが真実ではないというのも、もうわかっているはずだ」
「……はい」

 嫌な流れである。鈍いテムでも気づくほどだ。レビル将軍には隠すつもりなどないのかもしれない、と勘違いしたくなるほどあからさまな話の流れ。知りたくないと言えればどれだけ楽なことだろう。

「貴官を宇宙から呼び戻したのは、この映像を見せるためだ」

 そうして見せられた映像に、テムは心の底から震えることになる。それは、たった一機の相手に三個師団が溶ける悪夢のような映像。

「これは……こんな……」
「この黒い鴉が反攻作戦を挫いた相手だ」
「……」
「我々の敵はジオン。RGMの敵はザクや先ほどの新型機。そしてRX-78の敵はこのアンノウンだ。……レイ技術大尉、貴官に特命を言い渡す。内容は、言うまでもないと思うが」

「不可能と、申し上げるわけには」
「いかん。これがなんなのか、我々にはわからぬ。わかっているのはただ敵であるということだけだ。ならば、倒さなくてはならぬ。他に選択肢は存在しないのだ」
「しかし、いくらRX-78といえど、これは……あまりにも……」
「言いたいことはわかる。しかし、ザク以上に、新型以上に既存の兵器では分が悪い。私個人の意見でいえば……ガンダムで駄目ならば、ほかの何を当てても駄目だろう。違うかね?」


 
 

 
後書き
出来が良くないので直す可能性大。時間があれば。いや、時間はある。PCに触れる時間がないだけで。泣ける。 
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