戦国異伝供書
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第八十二話 本山城へその一
第八十二話 本山城へ
本山家の本城は朝倉城であった、だが本貫即ち出身の地は家名にもなっている本山城である。その城にだった。
本山家は今は多くの兵を集めていた、主力を集めていると言っていい。それでそのうえで主な者達が言っていた。
「この城だけは渡せぬ」
「何があってもな」
「まことにな」
「ここは我等が出た地」
「そこにある城じゃ」
「ここを渡してなるものか」
「この城を渡すなら」
それ位ならばというのだ。
「この城を枕にして討ち死にじゃ」
「そうしてみせるわ」
「何があろうとも」
「そうしてみせるわ」
「ここは渡さぬぞ」
「何があろうともな」
こう言って城を何重にも守りそうしてだった。
城を守ろうとしていた、それでだった。
本山家の者達は何があろうと戦おうとしていた、だが元親はその彼等のことを聞いても躊躇することなくだった。
出陣の用意が出来ると即座にだった。
それを命じ自ら出陣した、それで言うのだった。
「如何に守ろうとしてもな」
「それでもですか」
「あの城については」
「臆するところはないですか」
「どの様な堅城でも落ちぬ城はない」
元親はこうも言った。
「決してな」
「それで、ですか」
「本山城もですか」
「攻め落としますか」
「そうされますか」
「うむ」
絶対にというのだ。
「そうじゃ、だからじゃ」
「本山城もですか」
「攻め落としますか」
「そうされますか」
「そうじゃ、出陣する兵の数じゃが」
元親は笑ってこう言った。
「今我等が出せるのは三千もないな」
「それ程ですな」
「かなり勢力を大きくしましたが」
「まだです」
「まだそれ位です」
「そこを五千と言うのじゃ」
その三千でなくというのだ。
「よいな」
「五千ですか」
「それだけの兵を出すとですか」
「言う」
「そうされますか」
「そして旗も多く出して飯を炊く時の煙もじゃ」
これもというのだ。
「あえてじゃ」
「多くですか」
「多く出しますか」
「そうされますか」
「そうせよ、よいな」
こう言うのだった、そして実際にだった。
元親は三千もない兵を五千と称しそのうえで旗を多く出し飯を炊く時の煙も竈以外からも焚火で出させた。
するとだった、それを聞いて見た本山城の面々は騒ぎだした。
「五千なぞ嘘かと思ったが」
「その旗の数を聞くとな」
「そして竈の煙の数を聞けば」
「それはな」
「やはりな」
「五千おるのか」
「五千の兵がおれば」
それこそというのだ。
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