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『組長と零』

作者:零那
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『永遠の心の恋人』



二度と無い最後の...。

もう、どんなに傷ついたとしても、すがりつく事は出来ない。此の腕に包まれて、此の胸で泣くことは無い。二度と...。

それが、自分の選んだ答えだった。今なら引き返せるのに...もしかしたら其の為の時間かもしれないのに...何も言えない。

やっぱり嫌、さっき言ったの取り消して!
って言いたい。何もかも棄てて此の腕に包まれてたい...。
でも...でも...それだけは...組長の為にならん...。

解ってるのにそんなこと出来ん...だから、ここで思い切って、組長から巣立つ事。それが今の零に唯一出来ること。

解ってる。だからこんなことになってるんや。

元々、解ってたことや。

こんな再会すると思て無かったから、ちゃんとこうした別れが出来るだけ良かったんや。
本心を半分は伝えれた。
それは、何も伝えれんかった頃より充分幸せなことだと思ってる。

だから...我慢する。
大事にしたいものは自分で守りたい。
今度こそ守り通したい。
組長だけは、零にとって永遠に聖域で在って欲しい...そんなことを本気で想った。

今迄、守れんかった命も失った命も多く在った。もう誰も失いたくない。組長だけは...

『零、オマエはちゃんと成長しとる。もうあの頃のオマエじゃ無い。強がりばっかりで弱くてワシからしたら可愛いもんやった。
でもオマエには強い信念が在った。守りたいものを守る為には手段を選ぶ事が出来ん真っ直ぐさがワシには怖かった。

今やから言うけどな、零の事を調べてくうちにサイコパスやと思たんや。オマエも非社会的人間、人格障害ってのは結果言われたやろ。覚えてるか?
このままじゃシリアルキラーになる思た。ワシがどうにかしたらんとあかんって焦った。
でもオマエのは違った。オマエは良心が無いわけじゃなく、むしろ大事にしたいが故にって、そんな強い情が在るのにサイコパスなわけないって確信した。
カズの時はチョット最後やっぱり一瞬だけ不安になったけど、怒りや憎しみの頂点を越えたらそうなること位ワシにも解るからな。

零、これからはシッカリ自制心を持て。どんなに怒りや憎しみや殺意が沸き上がっても、絶対にもう其の手を血で染めるな。
それは零自身の為や。それと、いつかの誰かの為や。
今は解らんでも、いつか、命を懸けて守りたいものが出来た時にワシの言葉の意味が解る。

最後に聞く。ほんまにワシから離れるんか?此の腕を振り払うんか?唯一泣ける場所、ワシを棄てるんか?』


コッチが間で突っ込む暇さえ与えんかったくせに、そんな質問ひどい。

怖かったってどういうこと?
シリアルキラーって何?
いつかの誰かって組長には解るん?

聞き返したくても遮れん空気出して最後にそれ聞くんか...

ただただ涙が止まらんだけじゃなく、しまいには鼻水も垂れそうで、もう幼児みたいに声あげて泣き出す寸前みたいにパンクしそう...。

もしかしてわざとそんなこと聞いてる?って思う。

『答えれんか...しゃあないのぉ』

組長が、零の顔を自分の胸に当てるように頭を持ったまんま、もう片手でティッシュを取る。
体勢を変えず、そっと鼻を拭いてくれた。

声をあげて泣き出すのは堪えよう。此れ以上みっともない姿を見せたくない。

『零、ワシは零の心の恋人でおる。永遠に。今後どんなことが在っても、逢わんでも、来世では最強の夫婦になれるように願う。
オマエが選ぶどんな男よりワシはオマエの心を永遠に独占する』

なんでこんないい人と一緒に生きる道を選んだらあかんのんやろう...。
この人以上の人なんか絶対おらんのに...。
いや、だからこそ一緒になれんのんや。せやろ。必死に言い聞かせた。
組長を、零の不幸な人生の道連れにはせん。



『最後に、チョット仮眠しよう』

そのままお姫様抱っこされてベッドに行った。

嫌だ!絶対そんな穢れた関係になんかなりたくない!
そう思った瞬間、組長が笑いだす。

『オマエの想像しとることは無い。言うたやろ、こ.こ.ろ.の.恋人や。プラトニックや。体の繋がりなんか持ったって何の意味も無い。
ワシみたいなんがオマエを抱けるのは嬉しいことやけど、でも、神聖なもので在りたいな。ワシもそう思う。
だから安心せぇ。でも同じベッドで離れて寝るのは淋しいから、せめて腕枕で寝てくれ(笑)』

組長の腕の中はホントに心から安らぐ。まさかあの体勢で5時間も眠った事にも衝撃だったけど...
どんな睡眠薬や精神安定剤よりも効くと思った。

そんなことをチラッと腕の中で話した。反応がなかったから、そっと顔上げたら組長の目から涙が流れてた。
組長が涙...あまりにもビックリして息が止まった。
そして目が合った。
引き寄せられ、おでこに軽くチュッてされた。
嫌ではなかった。穢れとも違った。

『ワシはオマエを救ってやれたか?』

『勿論!!人生最大の奈落の底から救ってくれて以来何回も!!あの時組長に拾われて無かったら...』

『解った、ありがと』

『ありがとうはコッチやん...』


どんなに言っても足りんくらい、ありがとうの気持ちはすごいってのを伝えたい。なのにどう言えばいいか解らんくて言えん。
で、結局『一生言い続けても足りんくらい、ありがとうって思ってるよ』って...。

『零を救ってやれてワシが救われたんかもしれんな。ワシもオマエには感謝しとる。オマエが思とるよりいっぱい感謝しとる。ほんまに...
だから自信もって、自分の選ぶ道を生きてけ!何があっても死のうとするな。それだけは守ってくれ。なっ!
オマエが死んで哀しむ奴が此処におる事、よぉに刻み付けとけ。
死んだら殺すからな。その前に、死にたくなったらワシが殺してやるって昔約束しとるやろ。それも忘れるなよ』

あーあ、もぉ泣き過ぎて頭痛いし仮眠って言いつつ組長寝てないし。
最後か...最後なんよな...此の手に触れる事は二度と無いんか...淋しいな...離れたくないのに離れなあかんのんか...こんなに辛いんもんなんやなぁ、愛する人との別れは。

てか、此れがきっと本当の愛なんだろうなぁ...
もう誤魔化しようが無い...お互いに...。

最後の最後に、組長の震えが伝わるくらいの、ぎこちない優しい唇が零の唇に微かに触れた。


唯一無二の愛、此を越える愛は一生絶対に出逢え無い。


組長、貴方は今も其処から見守ってくれていますか?

遠い遠い未来で、またいつか魂が巡り逢えたなら其のときは...



 
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