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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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Ep??誓い~Appointment for reunion~

†††Sideルシリオン†††

「シャル、君だけでもこのまま管理局に残っていいんだぞ?」

「ううん。ルシルにだけ負担は押し付ける真似はしたくない。それに大事な義弟の面倒を見るのはお姉ちゃんの務めだしね」

「最後までどちらが姉か兄か決められなかったな」

「私は契約終了まで、姉を押し通すからね」

「俺だって、兄だと言い続ける」

俺と“義妹”であるシャルは、管理局本局の総務統括官であるリンディさんの居る総務部へと向かっている。俺たちが手にしているのは辞表だ。これから馴れしたんだ管理局を辞めるために、リンディさんの元へ行くのだ。本来なら人事課のある運用部に行くべきなんだろうが、俺たちの認める上官はリンディさんだけだ。あの人に拾ってもらったから、そのケジメとしてリンディさんの元へ行こう、とシャルと決めた。

「俺ひとりでも十分だ。負担なんてものはそもそも契約執行中の界律の守護神(オレたち)にはない。それに本契約ではない以上、わざわざ2人で出向く必要もないからな」

辞職する最大の理由は、抑止力である俺とシャルの行動範囲が次元世界全体に及んだことでの、この次元世界に散る“界律”との契約数だ。管理局に入って2年目くらいしてから様々な“界律”からの契約要請が来た。

(やはり組織に入ってしまったのがまずかったな・・・)

ここ最近までは休日などを利用して、シャルと2人で分担して何とか捌いていたのだが、管理局の仕事の傍らではもう限界なまでの数になってしまっていた。これ以上は管理局員として支障が出ると判断した俺は、独り管理局を辞めるために辞表を書いていた。
シャルは、俺とは違ってこれまでの契約の中に平穏なものはなかった。だからこそなのは達との出会いは彼女を変えた。もちろん良い方向に。笑うようになったし、本当に女の子のような可愛らしさも、憎たらしさも覚えた。俺としては、シャルには残ってもらい、いつ消えるかもしれないその日まで楽しんでもらいたい。だが、辞表をシャルに発見されてしまい・・・

――私に相談もなしでそんな事を勝手に決めて! お姉ちゃんはとっても悲しいのです!――

――ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!――

それはもう凄まじいプロレス技のコンボで撃沈されたのだ。剣士というかもうゴリ――プロレスラーだ。剣が無くても普通に強い。それから2人して相談・・・と言うよりは言い合いだな。

――辞めるのは俺だけで良いと言っているだろう!――

――馬鹿言わないで! これまでずっと一緒にやって来て、いきなり自分だけで良いなんて納得いかない!――

――いかなくていいんだよ! 君は、なのは達と同じ時間を過ごせ! こんな契約、2度とないかもしれない。君はもう少し我がまま・・・だったが、もう少し欲張っても良いと思う!――

――確かになのは達と一緒に居たいけど、あなたにばかり辛い事を押しつけてまで、あの子たちと一緒に居られないもん!――

――分からず屋!――

――どっちが!――

結局はシャルも辞めると言い出し、またも暴力で俺はねじ伏せられ、こうして2人で辞職することを決めた。決めてから今日まで1ヵ月。関わっていた事件・事故の案件を片づけ、終わりの見えそうになかった案件に関しては引き継ぎなどを行い、それらの作業も終わらせた。たとえ今日で私とシャルが辞めようとも何も問題はない。そうなるように計画を立てて、実行したからな。

「私だけ残って楽しんじゃいられないよ。それに、ルシルだって本当はこのまま残りたいんでしょ?」

「どうだろうな? 確かになかなか楽しめたと思うが・・・」

そうだな。残りたいという思いは小さいが、フェイト達と離れるのは少し辛いかもな。さすがの俺もここまであの子たちと付き合えば名残惜しく思う。 

「ふ~ん。顔にはまだ居たいって書いてあるけどね」

シャルが上目遣いで俺を見て笑っている。そこまでハッキリと顔に出るのも俺としては問題だな。

「あぁ、認めるよ。俺はまだあの子たちと一緒にいたい。だがもう限界だ。管理局員と守護神、両立することはもう出来ない」

「・・・うん」

だからこそもう管理局にはいられない。残念だが、あの子たちとはしばらくお別れだ。ようやく総務部へと着き、リンディさんの姿を探す。しかし見当たらないため、近くに居た局員にリンディさんの居場所を尋ねることにした。

「すみません。ハラオウン統括官はどちらに?」

「あぁこれはセインテスト一尉、フライハイト一尉、お疲れ様です。ハラオウン統括官でしたら、休憩所の方でお休みになっていると思います」

私とシャルは「ありがとう」と局員に礼を述べて総務部を後にして、近くの休憩所へと向かう。休憩所に着いてすぐ「ルシル。あそこに居るよ」シャルが指差すところに目を向けると、リンディさんがお茶を幸せそうに飲んでいた。俺たちは休憩中のリンディさんの元へ向かう。

「ハラオウン統括官、今お時間よろしいですか?」

「休憩中に申し訳ないですけど」

シャルと2人して敬礼をし、時間の余裕があるかを確認する。休憩中だからこその確認だ。まぁリンディさんの様子からして必要ないとも思うが。

「あらルシリオン君、シャルロッテさん。ええ、大丈夫よ。どうぞ座って座って♪ それより私相手にそんな堅苦しい挨拶は抜きでいいのよ? 私たちの仲じゃない♪」

リンディさんに促されるままに椅子へと座ると「お茶はいかが?」と誘われたが、それはもう丁重にお断りした。リンディさん。絶対に糖尿病になりますよ。クロノとエイミィが結婚すれば、子供が生まれます。孫ですよ、孫。それなのに健康でいられないのは不幸というものです。

「それで今日はどうかしたのかしら?・・・あ! もしかして、フェイトとのお付き合いの許可でも貰いに来たのかしら♪ いいわよいいわよ♪ 自慢の娘だから、絶対に幸せな家庭を築けるわ❤」

嬉しそうに喋るリンディさんだが、俺たちの話はそれじゃない。というか、それならわざわざシャルを連れて来たりしない。シェフィと恋人となることを、彼女のご両親に報告する時も1人で行ったぞ。

「いえ。お渡ししたい物がありましたので」

「私に渡したいもの? 何かしら? 誕生日でもないし・・・」

シャルと同時に辞表の入った封筒をリンディさんとの間にあるテーブルの上に置く。それを手にして、リンディさんの表情が見惚れてしまう程の笑顔から一気に驚愕の色へと変わった。

「辞表!? ちょ、これはどういうことなのルシリオン君、シャルロッテさん!?」

「そのままの意味です」

「本日を以って、時空管理局を辞めさせていただきたく来ました」

「え? うそ、よね? だってこんな、え? 急すぎるわ!」

リンディさんは完全に混乱していた。しかし俺とシャルの言葉を聞き、一切の迷いのない目を見たリンディさんは椅子へと座り直して溜息を吐いた。それからお茶を飲んだことで少しは落ち着いたようだ。

「お話を、理由を聞かせてもらってもいいかしら?」

少し声が震えているようだが、そこは気に留めない方がいいのだろう。

「それが私たちにとって必要なことだからです。すいません。今までお世話になっておきながらこのようなこと・・・」

シャルも少し声が震えている。ほら、見ろ。今にも泣きそうじゃないか。やはりシャルだけでも残させるべきだろう。

「シャ――」

「ルシル。これはもうあなただけの問題じゃないから」

「だがな、シャル」

「同じことは言わせないで。私とあなたは一蓮托生よ」

「・・・判った」

そう言われたらもう何も言うことは出来ない。シャルの決意もきっちりと受け取っておこう。

「考え直せないのかしら? あなた達は、局内でもかなり重要な立場に居る子たちなのよ。あなた達の力を必要としている部署は本当に多いのよ。今後ももっと重要な案件に関わったり、解決してもらうことにもなると思うの」

リンディさんは必至に私たちを説得しようとしている。戦力として数えてくれないのは優しさだろうか。シャルは陸戦SSランクで文句なしの実力者だが、今の俺はせいぜいBランク。なのはを庇って負ったダメージを治すために使った上級術式・コードエイルを使った代償だ。

(最高の治癒術式なのに、自身に使えないなんてとんだ欠陥術式だよ)

未だに“界律”から使用許可が下りていない上級術式、さらに自身には使えない術式を無理やり自身に使ったその代償はまぁまぁ大きかった。魔力限界値が大幅に減り、魔力ランクがCまで落ち込んだのだ。徐々に回復してくれているおかげで、今はBランク相当の魔力だが。それまで使えていた中級術式すら使えなくなった俺は、正真正銘のポンコツと化している。いつかは戻るだろうが、それまでは戦力として無能だ。

「申し訳ありません。そのことについては十分に解かっているつもりです。ですが、管理局を辞さなければならない理由がどうしてもあるのです。詳しくは話せないのですが、それが俺とシャルにどうしても必要なんです」

「リンディさん、本当にごめんなさい。どうか管理局を辞めることを許してください。お願いします」

椅子から立ち上がって2人して頭を下げる。今の休憩所の空気はかなり重く、入ってきた局員はすぐさまここを後にしていく。少し悪い気もするがそこは許してもらおう。しばらく沈黙が続き、ようやくリンディさんが口を開いた。

「・・・解かりました。それがあなた達に必要なことだと言うのなら認めます。正直止めたいのだけれど、もう取りやめることは絶対にないのでしょ?」

黙って頷くことしか出来なかった。

「・・・総務統括官として、あなた達の辞表を正式に受理します。本当によろしいのね? ルシリオン君、シャルロッテさん」

「「はい」」

返事をしてもう1度リンディさんに頭を下げる。リンディさんは立ち上って俺とシャルの元へと来て、俺たちの頭を胸に抱き寄せ、「これまでありがとう」優しく撫でてくれた。

「「お世話になりました!」」

この日、俺とシャルは8年間勤めた時空管理局を辞めた。

†††Sideルシリオン⇒シャルロッテ†††

リンディさんと別れたあと、しばらく本局内を歩いた。ここへはあまり来たことがないけど、知り合いが居るために挨拶回りをしているのだ。本局の挨拶回りが終わったら今度はミッド地上へと赴き、また挨拶回りとなる。でも私とルシルは、なのは達の居る部署にだけは行けなかった。

「はぁ、リインフォースに偉そうに言っておきながら、自分のことになるとダメね」

かつての冬の日、リインフォースに言ったことを思い出して反省。

――ねぇリインフォース。あなたは別れを告げるとはやてが悲しむと思ったから、こうして黙って逝こうとしたんでしょ? でも目を覚まして、そこにあなたがもういないと知ったら、はやてが余計に悲しむって解からなかった? それとも考えなかった?――

「別れをしないと逆に悲しみが大きくなる、か・・・」

「別に永遠の別れとはならないから必要ないんじゃないか? そういう別れの挨拶は、俺たちの本契約が決定してからでもいいはずだ」

「そうなんだけどねぇー」

それはそれで何か嫌だな~。そういうのはあまり考えたくないよ。憂鬱になりながらも次の知人の居る部署を目指して歩いているところに・・・


「ルシル! シャル!」


こんな人の居るところで私とルシルの名前を大声で叫ぶのはどこのどいつかな。そう思って、声のした方へと視線を移すと、そこにはユーノがこちらに向かって走っている姿があった。そして私たちのところまで全力疾走してきたユーノは、私たちの前で息を切らせて咽てしまっている。

「はぁはぁはぁ・・・どういうことだよ!! クロノから聞いたぞ! 2人が管理局を辞めるって!!」

リンディさん、まさかみんなに教えてしまっているんじゃ・・・。送別会は必要ないですから、なのは達には連絡しないでくださいって言ったのに・・・。これでなのは達とも挨拶しないといけなくなった。あー、これ怒られちゃうな。勝手に辞めるなんて許さないって。

「まずは落ち着け、ユーノ。こんな人の居るところでそんな大きい声を出すな」

「これが落ち着いていられるか! なんで黙って・・・相談してくれなかったんだよ! 僕たちは友達だろ!」

「ユーノ、まずは場所を移そう? さすがにここだと迷惑になるよ」

「はぁはぁはぁ・・・はぁ、判った」

近くにあった飲食店へと入り、私たちが辞める経緯を話した。もちろん“界律の守護神テスタメント”なんて単語と、本当のことは話せなかったけど。

「本当に辞めるんだな。でも2人の決意はもう解かったら僕は止めない。だけど、一言くらいは欲しかったよ・・・ルシル、シャル」

「「ごめん」」

店を出て、ユーノが去って行くのを私たちは黙って見送った。やばい。大声で泣いてしまいそう。もしここでなのは達と会えば、私は泣く自信がある。ううん、確信だ。

「会い・・たい。やっぱり会いたいよぉ・・・」

胸が苦しい。永遠のお別れじゃない。だけど、なのは達と離れることがこんなに辛い。苦しい。

†††Sideシャルロッテ⇒なのは†††

「なんで・・・なんでシャルちゃん! ルシル君!」

私は今、シャルちゃんやルシル君の携帯端末へと何度も通信を掛けながら本局内を走っている。事の発端はエイミィさんからのメール。内容は、“シャルちゃんとルシル君が管理局を辞めた”、というものだった。もちろん最初は信じなかった。でもリンディさんに確認すると、シャルちゃん達から受け取った辞表をすでに受理したとのことだった。

「うわっと? 高町教導官・・・?」

「ごめんなさい!」

廊下の角で他の局員とぶつかりそうになった。私は謝罪しながらも止まらずに走り続ける。

「なんで、なんで繋がらないの!? シャルちゃん、ルシル君・・・どうして!?」

「なのは!」

「なのはちゃん!」

1度止まって端末を操作しているところに、フェイトちゃんとはやてちゃんが姿を見せた。2人とも私と同じように端末を手に、肩で息をしながら私の元へと走ってきた。どうやらフェイトちゃん達もシャルちゃん達を探しているみたいだ。

「なのは、エイミィからのメール見た!?」

「うん! リンディさんはもう、シャルちゃん達の辞表を受理したって!」

「なんで・・・シャルちゃんとルシル君はこんな大事なことを黙って決めるん!?」

私たちの大声に局員の人たちが驚いて私たちを見る。さすがに恥ずかしかったから場所を移した。

「本局内に居るのは間違いないみたい」

フェイトちゃんが少し震えた声で教えてくれた。

「今、本局に居るシャマルとザフィーラにも捜してもらえるよう頼んだから」

はやてちゃんが端末を畳んで、両手で包み込むながら溜息を吐いた。私はさっきからシャルちゃんとルシル君の端末に交互に掛けているんだけど繋がらない。

「ダメ、繋がらない。何でシャルちゃんとルシル君、黙ってこんなこと?」

「酷いよ。何も相談してくれないなんて。ルシルとシャルのバカ」

「私の作る部隊に協力してくれるって言うてくれとったのに」

シャルちゃんとルシル君のことを考える。今思えば、最近のシャルちゃんとルシル君の行動は少し不自然だったと思う。休日が重なれば絶対に逢っていたのに、ここ最近は全く逢っていない。それによく2人でどこかへと出掛けていたのも判っている。
でもそれは遊びとかじゃなくて、何か重要なことだということも何となく気付いていた。もしかしたらそれに何か関係しているんじゃないかって思うけど、何も聞いていない。思考の最中、突如鳴り出した携帯端末に驚きながらもコールを受ける。

「ユーノ君からだ。もしも・・・え!? うん! そこなら近いからすぐだよ!・・・うん・・・うん! ありがとうユーノ君!」

「まさか・・・!」

「うん! シャルちゃんとルシル君の居場所が判った!」

「なら急がなアカンな!!」

シャルちゃんとルシル君が居るという区画へと私たちは全力で走った。

†††Sideなのは⇒フェイト†††

ユーノから教えてもらった区画へと来た私たちはルシル達を捜す。はやてもシャマル達に連絡をとって、この区画に呼び寄せたとのことだ。

「・・・居た!」

なのはが指を差して声を上げる。私とはやてもそちらへと視線を向けると、そこは局員の憩いの場としてある公園だった。そしてその公園に、確かにルシルとシャルの2人の姿があった。私たちは急いで2人の元へと走った。それに気付いたシャルも私たちの元に走ってきた。

「なのは! フェイト! はやて!」

「「「うわぁっ?」」」

全力疾走で飛び込んで来たシャルを私たちは受け止めるけど・・・勢い強すぎだよ。シャルを受け止めた私となのはとはやてはその場に倒れ込んだ。それを見ていた他の局員たちがクスクス笑っている。ルシルが「おいおいシャル。今のは危なすぎだろ」ゆっくりと歩み寄ってきた。

「・・・ルシル」

私はすぐさま立ち上がって、ルシルの真ん前に立ちはだかる。歩みを止めたルシルは私から目を逸らすことなく見つめ返してくれる。

「どうして何も相談しないで辞めたの?」

いま私の中にあるのは怒りに近い悲しみだ。確かに最近の私たちは離れ離れが続いてきたけど、この仕打ちはいくらなんでもあんまりだ。だから私は半ば睨むようにルシルを問い詰める。

「すまなかった。だが初めから辞めると決めていたから、相談とかは必要ないと思った」

「でも! それでも話して欲しかったよ!」

「そうや! 私らがどれだけ心配したか!」

なのはとはやても私のようにルシルを睨む。みんな身長の高いルシルを見上げるような格好だ。

「待って! ルシルだけの責任じゃないよ! 私も同罪だから!」

シャルが私たちの背後で叫ぶ。それを聞いた私たちは冷静になって、ルシルだけを責めていたことに気付く。

「「「ごめんなさい」」」

「責められるようなことをした俺が悪い。だから謝る必要はないよ」

3人でルシルへと謝ると、ルシルは私たちの頭を撫でて微笑んだ。やっぱりいくつになってもルシルに頭を撫でられるのが一番気持ちいい。

「ごめんね。なのは、フェイト、はやて。黙って辞めたことには本当に悪いと思ってる。それは本当だよ。でもこれは、どうしても必要なことなんだよ」

シャルは俯いたまま囁くようにしてそう口にした。辞めることがシャル達にとって必要なことなんて意味が解からない。

「何で辞める必要があるの? それは管理局に居たら出来ないことなの?」

「そうや、民間人にならなアカン理由でもあるん・・・?」

「・・・そうだな。管理局のような組織に入っていると行動が制限されてしまう。今の俺とシャルにとっては、それがどうしても枷になってしまうんだ」

なのはとはやての疑問にルシルが答えてくれた。そうまでしないと出来ないことが気になったから、今度は私が聞いてみた。

「ルシルとシャルは一体何をしようとしているの? それって休日にいつも出掛けていたことと関係があるの?」

「うん・・・そうだよ。私とルシルが別の世界へと行っていたことと関係があるの。私とルシルには、どうしてもやらないといけない事があるんだ。でも休日だけの時間じゃ圧倒的に足りなくなってきたんだ。だから・・・」

「管理局を辞めて、そのやらないといけない事のための時間を作ろうとした」

「うん」

私の質問に答えたシャルがそう話す。具体的なことはどうしても話せないみたいだけど、犯罪行為じゃないことだけは確かだ。この2人がそんなことをするわけがないのだから。

「シャルちゃん、ルシル君、もう逢えないの?」

なのはの言葉に私は嫌な想像をした。2度とルシル達に逢えない、そんな嫌な想像を。

「そんなわけないだろ。いつかきっとまた逢える。そう何度もここへは帰っては来れないだろうが、それでもこれで最後じゃないのは確かだよ」

「そうだよなのは! 私たちはまた逢えるって! だから少しの間だけお別れ。帰ってきたら、お帰り、って出迎えてよね!」

「「「うん!」」」

このあと、ルシルとシャルの送別会が開かれた。急いで任務先から帰ってきたシグナムがシャルに模擬戦を挑んで、丸めた雑誌で叩き合ったり、ルシルはシャマルと最後まで仕事の話をして、ヴィータのツッコミを受けて吹っ飛んだり、そんな楽しく騒がしい送別会だった。

そして翌日。ルシルとシャルは静かに私たちの元から去っていった。必ずまた逢えるって約束を交わして。だから私は、私たちは待ち続けるよ。ルシルとシャルがまた逢いに来てくれるその日が来るのを。 
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