おっちょこちょいのかよちゃん
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45 東京から来た少女
前書き
《前回》
三河口は従姉・ありに会うために彼女の住む札幌へ向かう。そして大野と杉山はクラスメイトの藤木茂が教会でピアノの音を聴いて不審に思ったという事を耳にして、まる子やたまえと連れてその正体を探ろうとする。そのピアノの音の正体は・・・!?
かよ子は御穂津姫と話しを続けていた。その時、母が入ってきた。
「かよ子、お昼よ。あ・・・」
「まき子さん、ご無沙汰しております」
「御穂津姫・・・」
かよ子の母は、かつて杖を貰った相手の一人と再会したのだった。
「一体、どうしたの?」
「実は、まき子さんに授けた杖、奈美子さんに授けた護符と同じ『象徴』となる道具、杯を持つ者がこの地に訪れている事をかよ子さんに伝えたかったのです」
「そうなの?」
「お母さん、御穂津姫、私、午後、その人に会ってくるよ!」
「分かったわ、気をつけてね」
「私が幽霊?」
ピアノの音の正体は伴奏の練習をしている一人の少女だった。
「ほらっ、ちゃんと足もあるでしょっ?」
「幽霊だなんて、とんだ勘違いだったなあ」
大野も落ち着いた。
「ホント、藤木が幽霊を見た、なんて言うから」
「・・・僕は別に幽霊だなんて・・・」
まる子は少女に話しかける。
「幽霊だなんてとんでもないよね」
「そうだね、天から舞い降りた天使って感じだね♡」
藤木はその少女にメロメロになっていた。一方の少女は自分が幽霊だの天使だのに例えられて苦笑した。
「私、一応、安藤りえって名前があるんだけどな」
「りえちゃんか。私はさくらももこ。みんなから『まる子』とか『まるちゃん』って呼ばれているんだ」
「私は穂波たまえ。たまちゃんって呼んでね」
「僕は藤木茂。宜しくう~♡」
皆は自己紹介をする。
「俺は大野けんいちだ」
「俺は杉山さとしな」
「アタシ達皆3年4組のクラスメイトなんだよ」
「本当っ!?私も小学生3年生よっ!」
「ええ!?大人っぽいからもっと年上かと思ったよお~」
まる子達は自分達がりえと同い年である事に驚いた。
「私は東京の小学校に通ってるの。おばあちゃんちに遊びに来ているのよ」
「東京かあ~。凄いねえ~。杉山君なんて幽霊と握手するなんて張り切ってるのにねえ~」
「ああ、折角のチャンスだったのにがっかりだよ・・・」
杉山は意地悪っぽく言った。
「あら、結構驚いてたじゃない。杉山君って案外臆病なのね」
りえは杉山をからかった。
「それはお前が紛らわしい事してたからだろお!」
杉山は反発する。
「あら、私はピアノを弾いてただけじゃない」
「大体、なんで教会のピアノを弾いてんだよ!」
「だって、おばあちゃんちにはピアノないもん」
「でもだからって教会のピアノを勝手に使っていいのか!?」
「残念でした。私のお父さんがここのシスターと知り合いでね、許可は貰ってあるわよ」
「だったら最初からそう言えよ!」
「杉山君、そう言う言い方はよくないよ」
「そうだよ、りえちゃんが折角練習してるのに失礼じゃないか!」
まる子と藤木は杉山に注意した。それを大野が止める。
「まあ、まあ。そうだ、りえもここにいる間、俺達と遊ばねえか?」
「そうだね、折角会えたんだし!」
「ありがとう、そうさせてもらうわっ!」
りえは清水で友達ができて嬉しかった。
三河口は札幌に住む従姉・ありが今住む家にいた。ありの夫・悠一とも対面していた。
「そういえば七夕の夜の大雨は酷かったってねー」
「ああ、ありのお父さんとお母さんもいたんだよな?」
「はい」
「その後、一日で干上がったってね」
「はい、さりちゃんが浸水した町を見て叔母さんが持っていた不思議な護符の力で干上がらせたのです」
「その護符ってのは?」
「叔母さんが戦後の食糧難に苦しんでいた時に、異世界からの人間から貰ったそうです。それで戦後の混乱を乗り越えたとか」
「そうだったの・・・」
「まあ、四月の地震みたいな現象以来、変な事が起きてるからな。異世界の人間とか訳の分からん奴が攻めたり」
「札幌にも来ているんですか?」
三河口は従姉の婿に聞く。
「ああ、それでこの前、異世界からの人間ってのが出てきたんだ。そいつは平和の為に動いてんだとさ」
(異世界の人間・・・!!)
「どうもお母さんがその人の事を知ってるみたいなの。今、日本を守る為に各地で呼び掛けているんですって」
「平和の為に動く・・・」
三河口は七夕豪雨の時に出会った森の石松や、濃藤の妹達が出会ったイマヌエル、そして彼女らとかよ子達が秘密基地の事で揉めた時に出会っていたフローレンスの事が頭に浮かんだ。
「その人の名前は何とおっしゃいました?」
「ああ、イマヌエルと言ったな」
かよ子は昼食後、教会へと向かった。例の杖を持って。御穂津姫も同行していた。御穂津姫は方角を示す。
「あちらの教会になります」
「ありがとう」
「それでは、私はこれで失礼します」
「え、行っちゃうの?」
「教会というのは私にとっては異教の場所で神社を司る者である私にはあまり相応しくない場でありますから。それでは」
御穂津姫はそう言って消えてしまった。
「神社に教会かあ〜、確かに場違いかもね・・・」
かよ子はこの先は一人で教会に進む。教会に入った。
「あら、貴女、どうしたの?」
かよ子はどきっとして振り向いた。幽霊かと思ったが教会のシスターだった。
「あ、あの、私・・・」
かよ子は心を落ち着かそうと深呼吸した。
「こ、ここでピアノを弾いている子がいるって聞いて会いに来たんです」
「ピアノを弾いている子・・・。りえちゃんの事ね。今お昼ごはん食べに行ってていないけど、午後も来るって言ってたからここで待ってたら会えるわよ」
「は、はい、ありがとうございます」
かよ子はピアノのある礼拝堂の長椅子に座って待つ事にした。15分ほど待った。かよ子杯の所有者がどんな子か気になって緊張でドキドキした。ただ一つ言えるのは名前が「りえ」という事から女の子であるという事だ。そして礼拝堂のドアが開く。かよ子はどきりとした。
「あ・・・!」
教会のシスターが入った。
「貴女、りえちゃんが来たわよ」
「え・・・!」
シスターと共に一人の少女が入ってきた。茶色の髪に白いワンピースを来た少女だった。かなりの美少女だ。
「は、はじめまして・・・!」
「こんにちは」
緊張するかよ子に対して相手の少女は普通に挨拶した。
「この子がりえちゃんに会いたがっていたのよ」
「や、山田かよ子です。宜しくお願いします!」
「私は安藤りえ。宜しくね」
「それじゃ、仲良くね」
シスターは礼拝堂を出た。
「あ、あの・・・」
「どうしたの?」
かよ子は思い切って言った。
「あ、貴女、もしかして、異世界の『杯』を持ってるの?」
「え、どうしてそんな事・・・?」
りえは質問で返す。
「それは、私も異世界の人から貰った物を持ってるから・・・。これが、その杖だよ・・・!!」
かよ子はりえにその杖を見せた。
「これが・・・!!そうよ、私も、その杯ってのを持ってるわよ」
りえも手提げから杯を取り出した。
「この杯に物質を入れるとそれに対応した精霊が出てくるの。土とか入れると大地の精霊とか、水を入れると水の精霊とかね」
「そうなんだ、私の杖も色んな物質に杖を向けるとその物質を操る能力がつかえるんだ。火に向ければ火が使えるし、石に向ければ石を作り出したりできるよ。それでこの清水を襲う敵を撃退した事があるんだ」
「そうなのね、私の住む東京にも出てきたわよ。その時もこの杯の能力で精霊を出して戦ったわ」
「そうだったんだ・・・。そうだ、今日本は日本赤軍とかその赤軍から呼び出された異世界の敵とかに襲われているんだ。もし何かあったら連絡とろうよ!」
「え?そうね」
二人はお互いの住所を教え合った。
パレスチナの本部。日高はある命令を房子から受けていた。
「日高、アドルフと共に杯を持つ者からその杯を手にするのです」
「了解」
そして房子はある事を思いながら窓を見る。
(護符を持つ者も、杖を持つ者がかなりの強敵・・・。でも杖の所持者はただの小学生で、おっちょこちょい・・・、か・・・)
房子は思う。なぜ所持者が小学生だというのにこんなに苦労するのか。そして、その少女には何が宿しているといるのか・・・。
後書き
次回は・・・
「ピアノへの情熱」
異世界の杯の所持者・安藤りえとの接触に成功したかよ子はりえと遊ぶ約束をする。そして杉山達もりえと会っていた事に驚く。一方、その杉山は自分と喧嘩したりえが気になっているようで・・・。
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