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戦国異伝供書

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第八十話 鬼若子その九

 元親は浦戸城からさらにだった、兵を進め本山家を破ったがそれでもだった。彼は今は本山家を深くは攻めず。
 そしてだ、主力を岡豊城に退けてそのうえでだった。
 政を執り行うことにした、彼は田畑を整え橋や堤を築かせて街もよくした。そして兵達には。
 武具を用意させた、その銭はかなりのものだったがそこはあえて兵達にそうさせた。そうして何かある時に備えさせたが。
 それを見てだ、元親は親貞そして香宗我部家を継いだ親泰に言った。
「我等は土佐の真ん中におるな」
「はい、この岡豊城はです」
「そしてその領地もです」
「土佐の中央にあります」
「まさにその真ん中に」
「それがじゃ」
 元親は弟達に話した。
「我等のよいところでありじゃ」
「弱点ですな」
「それになりますな」
「真ん中にあるから何処にも攻められる」
 土佐の中ならというのだ。
「しかしじゃ」
「その逆にですな」
「何処からも攻められる」
「そうもありますな」
「そうじゃ、それがじゃ」
 まさにというのだ。
「我等の弱みでもある」
「その弱みをですな」
 親貞は兄に述べた。
「どうすべきか」
「左様、我等は土佐の統一を考えておるが」
「それはですな」
「そうじゃ、ここで無闇に周りを攻めるとな」
 自分達の周りの国人達をというのだ。
「それは破滅への道じゃ」
「攻める相手を考えるべきですな」
「左様、それでまずはじゃ」
「本山家をですな」
「攻めて降す」 
 元親は親貞に述べた。
「そうするぞ」
「わかり申した」
「つまり土佐の東をですか」
 親泰も兄彼から見て長兄である元親に尋ねた。
「まずは手に入れますか」
「そうする、そしてな」
「その後で、ですか」
「西となるが」
「西ですか」
「確かにわしは土佐の統一を考えておるが」
 それでもとだ、元康は次弟に話した。
「しかしじゃ」
「土佐の一条家は」
「うむ、あの家は当家の大恩ある家じゃ」
「左様ですか」
「祖父殿を助けて頂いた」
「はい、祖父殿がこの岡豊城を追われた時に」
「僅かな家臣達と共に落ち延びられたが」
 この時まだ幼い彼等の父である国親も共にいた。
「しかしじゃ」
「それでもですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「そうした家だからな」
「それで、ですな」
「うむ、あの家はな」
 まさにというのだ。
「手出しをすることはな」
「どうしてもですな」
「気が引ける」
「左様ですな」
「一条家に弓引くことは天道に背く」
 元親はあえてこのことを言葉に出した。
「やはりな」
「左様ですな」
「うむ、それはな」
「だからですな」
「実は土佐の東は攻められるが」
 それでもというのだ。 
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